数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

文字の大きさ
35 / 65
第三章『地下ダンジョンと禁忌の実験』

八話『静かなる戦い』

しおりを挟む
「単刀直入に言いましょう。生徒会への参加は拒否致します」

唐突にもたらされるその言葉に、私は思わず固まってしまった。
・・・え?どうして・・・?

「ど、どうしてですか?」

私は少しだけ上ずった声を掛け、その顔を見る。
非常に整った顔だ。
黒い髪はサラサラと動き、その瞳は私ではなく、料理を見つめている。
・・・ま、まるで興味が無い・・・?

「え?理由が無くなったからです。元から入ることに前向きだったのは確かですが、別にそれを声高らかに宣言した訳でもない。なら別に宜しいのではないでしょうか」

確かにその通りだ。
フールちゃんからアダム君が生徒会参加を嫌がっていないとは聞いていたから、当然入るものだと思っていた。

「えっと・・・最初に入ろうと思ったのはなぜ・・・ですか?」

少し悩んだような顔をする。
嘘を考えている顔ではない。
言うべきか否かを考えている。
・・・わかりやすいのか分かりにくいのか。
私をもってしても、掴めない男だ。

「・・・フールと一緒に入ろうと思っていたのもありますが、僕の目的は果たされました。ので、入る理由が無くなってしまったんです」

「──」

やはり、フールちゃんの存在は大きい。
目的というものを言うつもりはないみたいだ。
・・・どうだろうか。
私は彼が生徒会に入るから、そのついでに手中に収めておこうとしていただけ。
かといって、フリーの彼を野放しにしていていいものなのか。
・・・否、だ。
武神祭への出場は、私は確定だとしても、彼が出場するにはある程度の志願者との戦闘がある。
私を抜いて4人が選ばれる。
・・・武神祭での優勝はほぼ不可能だが、さらに言えば総当たり戦なのだ。
彼と私が戦うことも考えられる。
その時に私が勝つように仕組まなければ・・・
さすがに、あの蛇を従えるこの男に、勝てる自信は無かった。

「どうしても、なの?副会長が空席の今、君が副会長として学園を導く事が出来るのよ?」

「興味ありません。武神祭へは実力で出場しますし、生徒会への参加に意味は存在しません」

・・・あまりそういう事に興味はない、か。
やっぱり、強者は強者にしか興味が無いという事なのかな。
ならやっぱり、私に惚れさせるしか・・・
フールちゃんに懐いている彼なら、私が嫌いなはずはない。
なぜなら、私は彼女よりも可愛いから。

「ねぇ、アダム君。私、君とこの学園生活を豊かにしたいと思ってるんですよ?一目見た時から、貴方となら、楽しく学校生活が過ごせるなって──」

自然に立ち上がり、料理が乗った机に指を這わせながら、彼に近づく。
彼は食事の手を止め、口元を拭いた。
その所作の一つ一つが、とても無駄がなく、洗練されていると思った。
確かに、最初は彼の力や、脅威をものにする為に近付いていた。
けど、今は。
──コレクションとして。
欲しい。
ただ、それだけだった。

「ねぇ、アダム君。この際、生徒会へ参加はしなくてもいいです。ただ・・・もし、許されるなら・・・私と、仲良くなりませんか・・・?」

アダム君の使っているグラスに手を伸ばし、それを口元へ運ぶ。
少し苦い、香りの強いワインだ。
お酒に自信のある冒険者でも、酔ってしまうような代物。
私はもう、慣れているが。
しかし、彼もまた、酔っているようには見えない。
ますます、欲しい。

「ね?アダム君・・・悪い話ではないと思うんです・・・学園での生活は保証しますから・・・」

後ろから、じっとしているアダム君の肩に触れる。
ピクリと反応するが、それだけだ。
勝ちを確信し、私は魅了のスキルを発動させ、手を前に回す。
体を密着させ、自慢の体をこれでもかと主張する。
・・・ふふ、私の勝ち、ですね。

「・・・お返事、聞かせて頂けますか?」

§

うーん。
なんだろう。
後ろから生徒会長に抱きつかれてるのはわかる。
いや、わかんないけど分かる。
なんだろう・・・フールに似てる似てる思ってたけど、本当に似てるなぁ。
もしかして真似てるのかな?
僕に気があるようには見えないし・・・
ぶっちゃけとても嫌だ。

「・・・お返事、聞かせて頂けますか?」

と、言われましても・・・
えーと、とりあえずあれだよね。
仲良くしたいってことだよね。

「・・・すみません。僕には、心に決めた子がいるんです。その子を裏切るようなことは、出来ません。ぶっちゃけ、失礼を承知で言うと、貴女にはこれっぽっちも興味はありません」

確かにフールに似ているが、フールではない。
フールは、独占欲が凄く強い。
きっと、つくもやレヴィですら、僕と共にいるのが嫌だろう。
けど、分かってくれてるはずだ。
僕が強くなるには、必要なんだと。
僕としては、確かに友達は欲しいけど。
僕の行動を縛るような人間は、欲しくない。
なら、フールだけでいい。
フールは僕を尊重して、着いてきてくれる。
その上で、近付いてくるのを追っ払うのだ。
でも、この人は。
きっと、そばに置いておきたいだけなんだろう。

「え・・・?そんな・・・効いてない・・・」

「まぁ、僕も誰にも言ってませんから」

聞いてない・・・?
まぁ、当然、僕だって誰彼構わず言いふらす訳じゃない。
聞いてなくても当たり前だろう。
何をそんなに驚いているのだろうか。

「嘘・・・どうして・・・?私にこれっぽっちも興味がない・・・?そんな・・・そんなこと、ある、の・・・?」

僕から離れ、その場に崩れ落ちる生徒会長。
なんだかよくわかんない人だなぁ・・・
僕は会長の腕を掴んで引き寄せ、椅子に座らせる。

「床に座るのはどうかと思いますよ、会長」

「──ぁ」

そうして、僕はお金(予想金額だけど)を机に置き、店を出た。
そこには黒い大きな蛇と人型のつくもが居た。
ちゃんと待っててくれたか。

「・・・・・・つくづく化け物だな、貴様は」

「突然なんだよ。ちゃんと言ってきたよ?興味無いって」

「違う。出てくる時間の話だ。家を出てからピッタリ1時間だろう」

「これくらい出来ないと、化け物と戦えないのさ」

とりあえず、るーちゃんの所へ行こう。
レヴィがスルスルと僕の体へ巻き付く。
少し暖かい。
心地がいい。

「じゃ、行こうか」

お腹もいっぱいだし、気分がいいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...