36 / 65
第三章『地下ダンジョンと禁忌の実験』
九話『出会ってしまった運命』
しおりを挟む
走り、走り、走る。
駆けて、駆けて、駆けた。
追手、及び大半の研究員は殺したが、それでも上層の人間が居たとは思えない。
私とキュー二が追われている可能性はほぼ100%だろう。
私達二人は唯一の『完成品』なのだ。
奴らがみすみす逃がす訳が無い。
『はぁ・・・はぁ・・・』
魔力のこもった息を切らしながら、駆ける。
腕の中には、力の使いすぎで疲れ、眠ったキュー二の姿がある。
この子だけは、守らねばならない。
この子は、私にとっての希望なのだから。
そのために、まずは遠くへ。
そして、誰も知らない場所へ。
加速、加速、加速。
実験で無理やり適応させられた『雷属性』の魔力を体に纏い、私は駆ける。
そして、草原を走り抜けようと森を抜けた瞬間に──
「君、速いね。僕と同じ匂いがする」
隣には、少年がいた。
§
るーちゃんの所にレヴィとつくもを置いて、僕は散歩(疾走)していた。
なんだかんだでみんな仲良くなれてよかった。
個人的には僕もやりたかったけど、つくもが仲良くなるためだもんね。
仕方ない。
・・・あれ?僕ってつくもより弱いよね?
そんな時に、普通の雷を纏っている僕と同じくらいの速さの面白いものを見た。
小さい女の子?を抱えて走ってる。
見た目は筋肉剥き出しの、皮膚のない竜人みたいだけど、その魔力は人間のものだ。
ただ、少し歪だな。
無理やり付け足したかのような・・・
話しかけてみよう。
「君、速いね。僕と同じ匂いがする」
それは明らかに驚いたかのように肩を跳ねさせ、僕がいる方向と逆方向に大きく跳んだ。
・・・縦長の頭には鏡面の石がはめ込まれ、目があるようには見えない。
筋肉が剥き出しで少し怖い。
フールが居たら『ステーキかな・・・』とか言ってそうな見た目だ。
僕の食生活大丈夫かな・・・(今更)
「ねぇ、君は何?その子は?焦ってるよね。何かから逃げてるの?」
『──落雷』
空から赤い雷が僕に降ってくる。
・・・マジで?雷魔法・・・?
落雷の威力にしては高い。
僕ほどではなくても、これは・・・
無詠唱の僕より少し弱い程度の威力だ。
それに、色。
赤い色だ。
まるで、血のような・・・
歪な・・・魔法・・・か。
・・・なるほどね。
「綺麗な雷だ。・・・君、あれかな。作られたのかな?」
ピクリと反応するトカゲ人間(筋肉丸見え)。
十中八九あの裏ギルドだろう。
・・・本当に、色々な事をしてるんだな。
僕も赤い雷使えるようになりたい。
まぁいいや。
「ねぇ、匿ってあげようか?一生隠れられるような場所だよ?」
『・・・『落雷』『紅雷』『真雷』』
基礎的な雷魔法から中級の魔法まで。
僕には一切どころか回復するくらいのものだけど、本当なら喰らっただけで相当なダメージの筈だ。
多分ね。
「効かないよ。僕には」
僕には圧倒的な魔術耐性がある。
というのも、雷はまぁ、属性だから当たり前として、生まれつき魔力のこもったモノに対してとても高い耐性があるのだ。
これのおかげで無茶もできる。
まぁ、つくもがいないとかなり危ないけど。
前まではある程度セーブしてたけど、つくもっていう安心感があると、なんとも無茶しがちなんだよね。
「『みーちゃん・・・?誰とお話してるの・・・?声だけしか聞こえない・・・』」
「ごめんよ。起こしてしまったね」
白い布に巻かれ、黒い魔力を帯びた革ベルトに縛られた少女。
瞳は緑で、髪の毛はオレンジだ。
その幼い顔も相まって活発な印象を受ける。
しかし、その目は、僕を映していない。
・・・見えてない?僕だけ?
「少しお話をしてたんだ。君たちを助けるって」
ピクリと反応する少女。
しかし、今回は表情がハッキリわかった。
絶望と、失望の色。
「『あの人たちも・・・言ってた・・・助けるって・・・!あなたも!私達に酷いことするんだ!!』」
「しないよ!僕はただ本当に──」
僕がこの2人を助けようと・・・匿おうとしている理由。
それは、単純に面白いから。
あの竜人の魔力は僕が目指してる黒い魔力と混ぜ合わせた雷魔法にとても近い。
そしてその竜人はあの少女が居ないと着いてこないだろう。
「『うそつき!!しんじゃえ!!!!』」
言葉に魔力が乗っていた。
だけど、それとは無関係に、僕の体の魔力が暴走を始める。
・・・?
なんだろう?
いくら可愛いらしい少女だからって、死んじゃえって言われたから本当に自殺するほどのダメージは受けてないと思うんだけど。
魔力暴走というのは、それだけで死に至るようなものだ。
意図的に起こすことも出来るが、そんなことはほぼしない。
「しょうがないなぁ」
僕はるーちゃんに貰っていた指輪の一つを外し、逆さにして指へまた嵌める。
指輪の魔具はこうすることで効果を無くす事が出来る。
これは、乞食の指輪。
常に魔力が一定以下になり、一定以上の魔力はこの指輪に蓄積される。
そういう仕組みの指輪だ。
前使っていた首輪の代わりで、つくもが居ない時用の物でもある。
これの利点は3つある。
一つは溢れるような魔力が一定以下になるから制御も簡単になる。
二つ目は単純に貯めた魔力は特に何もしなくても、外せば全部返ってくること。
この効果のおかげで僕は限界突破の限界以上の魔力を保有していることになる。
まぁ、長時間維持してると死ぬけど。
三つ目は、ちょうど今のような時に起こる。
「お、ぉ、おおおお」
莫大な、強大で絶大な魔力が僕の体に流れ込む。
荒れ狂っていた魔力はこの量に比べれば極わずかだ。
それにこれだけの量の魔力を混ぜれば。
自然と、正常になる。
まぁ、水と同じだと思ってくれればいい。
いくら少量の水が勝手に暴れてても、大きな動かない水が入れば動かなくなる。
そういうものだ。
「『え・・・!?うぅー!!!!とんでけ!!』」
一瞬驚いたように目を見開き、少女は見えていないらしい僕にさらに意識を向ける。
・・・魔力の流れがない。
スキルでも少しは魔力が使われる。
だから連発できない・・・のだが。
魔力を使わない力なんて・・・
超能力位しか知らない。
「ぬ・・・ん・・・!」
変な声が出る。
体の全方向から圧力が掛かり、さらに内部から外部へと圧力がかかっている。
正直、そんなにキツくない。
内蔵が潰れるような感覚、修行の時よりも緩いが、つくもの重力魔法を全身に受けているようだ。
・・・そういえば、まだリベンジしてなかったなぁ。
今度頼んでみよう。
「『──!?これでもダメなの!?』」
相当驚いている。
少しだけ浮遊感があったから全力で抵抗してみた。
具体的に説明するのがすごく難しいが、簡単に言うと、飛ばされないぞ!!と全力で思っただけだ。
うん。意味わかんないな。
「ね、とりあえず話だけ聞いてよ。君らが捕まってた組織のこと、聞きたいんだ」
これは別に嘘ではない。
もしかしたらこれからも僕の邪魔をしてくるかもしれないから。
僕はこの世で1番、邪魔されるのが嫌いなんだ。
邪魔するなら、全力で。
殺す。
「お願いだからさ──」
体に圧力が掛かったまま、僕はその有り余る魔力を体に纏い、今までで最速であろう加速の神雷速を発動させた。
「──勝てないことは、しない方がいいんじゃない?」
背後に回り、2人の頭に微弱な雷を流した。
2人は倒れ、僕はそれを支える。
・・・はぁ。
「なんか、悪役みたい・・・」
僕はあくまで、正義の味方なんだけどなぁ・・・
駆けて、駆けて、駆けた。
追手、及び大半の研究員は殺したが、それでも上層の人間が居たとは思えない。
私とキュー二が追われている可能性はほぼ100%だろう。
私達二人は唯一の『完成品』なのだ。
奴らがみすみす逃がす訳が無い。
『はぁ・・・はぁ・・・』
魔力のこもった息を切らしながら、駆ける。
腕の中には、力の使いすぎで疲れ、眠ったキュー二の姿がある。
この子だけは、守らねばならない。
この子は、私にとっての希望なのだから。
そのために、まずは遠くへ。
そして、誰も知らない場所へ。
加速、加速、加速。
実験で無理やり適応させられた『雷属性』の魔力を体に纏い、私は駆ける。
そして、草原を走り抜けようと森を抜けた瞬間に──
「君、速いね。僕と同じ匂いがする」
隣には、少年がいた。
§
るーちゃんの所にレヴィとつくもを置いて、僕は散歩(疾走)していた。
なんだかんだでみんな仲良くなれてよかった。
個人的には僕もやりたかったけど、つくもが仲良くなるためだもんね。
仕方ない。
・・・あれ?僕ってつくもより弱いよね?
そんな時に、普通の雷を纏っている僕と同じくらいの速さの面白いものを見た。
小さい女の子?を抱えて走ってる。
見た目は筋肉剥き出しの、皮膚のない竜人みたいだけど、その魔力は人間のものだ。
ただ、少し歪だな。
無理やり付け足したかのような・・・
話しかけてみよう。
「君、速いね。僕と同じ匂いがする」
それは明らかに驚いたかのように肩を跳ねさせ、僕がいる方向と逆方向に大きく跳んだ。
・・・縦長の頭には鏡面の石がはめ込まれ、目があるようには見えない。
筋肉が剥き出しで少し怖い。
フールが居たら『ステーキかな・・・』とか言ってそうな見た目だ。
僕の食生活大丈夫かな・・・(今更)
「ねぇ、君は何?その子は?焦ってるよね。何かから逃げてるの?」
『──落雷』
空から赤い雷が僕に降ってくる。
・・・マジで?雷魔法・・・?
落雷の威力にしては高い。
僕ほどではなくても、これは・・・
無詠唱の僕より少し弱い程度の威力だ。
それに、色。
赤い色だ。
まるで、血のような・・・
歪な・・・魔法・・・か。
・・・なるほどね。
「綺麗な雷だ。・・・君、あれかな。作られたのかな?」
ピクリと反応するトカゲ人間(筋肉丸見え)。
十中八九あの裏ギルドだろう。
・・・本当に、色々な事をしてるんだな。
僕も赤い雷使えるようになりたい。
まぁいいや。
「ねぇ、匿ってあげようか?一生隠れられるような場所だよ?」
『・・・『落雷』『紅雷』『真雷』』
基礎的な雷魔法から中級の魔法まで。
僕には一切どころか回復するくらいのものだけど、本当なら喰らっただけで相当なダメージの筈だ。
多分ね。
「効かないよ。僕には」
僕には圧倒的な魔術耐性がある。
というのも、雷はまぁ、属性だから当たり前として、生まれつき魔力のこもったモノに対してとても高い耐性があるのだ。
これのおかげで無茶もできる。
まぁ、つくもがいないとかなり危ないけど。
前まではある程度セーブしてたけど、つくもっていう安心感があると、なんとも無茶しがちなんだよね。
「『みーちゃん・・・?誰とお話してるの・・・?声だけしか聞こえない・・・』」
「ごめんよ。起こしてしまったね」
白い布に巻かれ、黒い魔力を帯びた革ベルトに縛られた少女。
瞳は緑で、髪の毛はオレンジだ。
その幼い顔も相まって活発な印象を受ける。
しかし、その目は、僕を映していない。
・・・見えてない?僕だけ?
「少しお話をしてたんだ。君たちを助けるって」
ピクリと反応する少女。
しかし、今回は表情がハッキリわかった。
絶望と、失望の色。
「『あの人たちも・・・言ってた・・・助けるって・・・!あなたも!私達に酷いことするんだ!!』」
「しないよ!僕はただ本当に──」
僕がこの2人を助けようと・・・匿おうとしている理由。
それは、単純に面白いから。
あの竜人の魔力は僕が目指してる黒い魔力と混ぜ合わせた雷魔法にとても近い。
そしてその竜人はあの少女が居ないと着いてこないだろう。
「『うそつき!!しんじゃえ!!!!』」
言葉に魔力が乗っていた。
だけど、それとは無関係に、僕の体の魔力が暴走を始める。
・・・?
なんだろう?
いくら可愛いらしい少女だからって、死んじゃえって言われたから本当に自殺するほどのダメージは受けてないと思うんだけど。
魔力暴走というのは、それだけで死に至るようなものだ。
意図的に起こすことも出来るが、そんなことはほぼしない。
「しょうがないなぁ」
僕はるーちゃんに貰っていた指輪の一つを外し、逆さにして指へまた嵌める。
指輪の魔具はこうすることで効果を無くす事が出来る。
これは、乞食の指輪。
常に魔力が一定以下になり、一定以上の魔力はこの指輪に蓄積される。
そういう仕組みの指輪だ。
前使っていた首輪の代わりで、つくもが居ない時用の物でもある。
これの利点は3つある。
一つは溢れるような魔力が一定以下になるから制御も簡単になる。
二つ目は単純に貯めた魔力は特に何もしなくても、外せば全部返ってくること。
この効果のおかげで僕は限界突破の限界以上の魔力を保有していることになる。
まぁ、長時間維持してると死ぬけど。
三つ目は、ちょうど今のような時に起こる。
「お、ぉ、おおおお」
莫大な、強大で絶大な魔力が僕の体に流れ込む。
荒れ狂っていた魔力はこの量に比べれば極わずかだ。
それにこれだけの量の魔力を混ぜれば。
自然と、正常になる。
まぁ、水と同じだと思ってくれればいい。
いくら少量の水が勝手に暴れてても、大きな動かない水が入れば動かなくなる。
そういうものだ。
「『え・・・!?うぅー!!!!とんでけ!!』」
一瞬驚いたように目を見開き、少女は見えていないらしい僕にさらに意識を向ける。
・・・魔力の流れがない。
スキルでも少しは魔力が使われる。
だから連発できない・・・のだが。
魔力を使わない力なんて・・・
超能力位しか知らない。
「ぬ・・・ん・・・!」
変な声が出る。
体の全方向から圧力が掛かり、さらに内部から外部へと圧力がかかっている。
正直、そんなにキツくない。
内蔵が潰れるような感覚、修行の時よりも緩いが、つくもの重力魔法を全身に受けているようだ。
・・・そういえば、まだリベンジしてなかったなぁ。
今度頼んでみよう。
「『──!?これでもダメなの!?』」
相当驚いている。
少しだけ浮遊感があったから全力で抵抗してみた。
具体的に説明するのがすごく難しいが、簡単に言うと、飛ばされないぞ!!と全力で思っただけだ。
うん。意味わかんないな。
「ね、とりあえず話だけ聞いてよ。君らが捕まってた組織のこと、聞きたいんだ」
これは別に嘘ではない。
もしかしたらこれからも僕の邪魔をしてくるかもしれないから。
僕はこの世で1番、邪魔されるのが嫌いなんだ。
邪魔するなら、全力で。
殺す。
「お願いだからさ──」
体に圧力が掛かったまま、僕はその有り余る魔力を体に纏い、今までで最速であろう加速の神雷速を発動させた。
「──勝てないことは、しない方がいいんじゃない?」
背後に回り、2人の頭に微弱な雷を流した。
2人は倒れ、僕はそれを支える。
・・・はぁ。
「なんか、悪役みたい・・・」
僕はあくまで、正義の味方なんだけどなぁ・・・
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる