数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第四章『過去と試練』

第五話『修行とレベル』

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戦の始まりは四日後と伝令があり、僕らは一旦、昨日の訓練の草原へとやってきた。
今日は、僕の修行だ。
僕の魔力量は相変わらず多いけど、残念ながら聖属性しか使えない。
聖属性に置換しているお陰で、僕は常に自動で回復している。
小さな傷も、大きな傷も、致命傷さえ、死ななければ回復する。
ゾンビ戦法とやらが出来るようになったのだ。
首からだって回復できるらしい。
つまり、魔力さえ切らさなきゃ、理論上無限に戦えるのだ。
けど、やっぱり戦闘に向いている属性じゃあないから、技術を磨くしかない。

「と言うわけで、僕は死なないからどんどん攻撃してね。連携もよし、妨害もよし、だよ」

「了解!」

「かしこまりました』

僕は2人から少し距離を置き、2人も少しだけ距離をとった。
始まりの合図はなく、自由に始まる。
今回は刀は使わない。
この身一つの戦闘だ。

「『拾然』」

「五段階目解放』

おっと、最初から飛ばしてくるな・・・
命の技を、僕はあまり理解してない。
今使おうとしている技がどんなものなのかもわからない。
イヴに至ってはそれ以上に分からないのだ。
竜魔法も使えるし、竜の身体能力を宿すことも出来るらしいけど・・・
さて。
普通に頑張ろうかな。

「行きます!!」
「竜咆!』

イヴが体の前に手で円を作り、その中央から青と赤の魔力の奔流がこちらに迫る。
その後ろから、命が駆け、僕に迫ってきた。
これが竜の魔力かぁ。
そんなことを考えながら、僕はその魔力を拳で破壊し、肉薄する命のバカにならない膂力を蹴り付けた。
しかし、命の剣に押し負け、僕はつんのめる形で体制を崩す。
命は上に弾かれた刀を握り直し、上段から僕へ叩きつけようとした。

「──っぶね!」

僕は地面を殴ると同時に魔力を流し、命の足元を揺らす。
命の刀が僕の頬を掠め、しかし血が流れるより先に治癒が入る。
命が後ろへ跳ぶが、僕はそれを追いかけ、命が着ている着物の襟を掴んで寄せ、なぐりつけようとする。
が、命は体と拳の間に刀をねじ込み、辛うじて防いだ。
吹き飛ぶ命を追いかけようとするが、イヴが僕の真横からドロップキックをしてくる。
それを回転して受け流し、イヴの腹へかかと落としを決めた。
・・・どうやら、防がれたようだが。
しかし叩きつけられる衝撃は押し殺せないだろう。

「いいね。この調子でやろう」

僕は立ち上がった2人に治癒を掛け、イヴへ迫る。
イヴは落ち着いた様子でこちらを見ながら、僕の攻撃を受け流す。
やはり、雷の魔力を使いながらとはスピードが違う。
正直遅い。
ならば、どうするか。
僕は地面を蹴る強さを更に増し、引いた拳を打つ力を更に増し、振り抜いた蹴りをそのままに地面を蹴る。
筋力に任せた加速だ。
少しずつ力を流せなくなっていくイヴ。
しかし、背後から命が迫った。

「陸身!」

身体強化を施した命が、僕の背中を斬りつけようと刀を振るう。
僕はその殴打の中前転の容量で刀を蹴り上げる。
今度は膂力に負けず、刀が打ち上がった。
僕はイヴの動きをかかと落としで止め、右に蹴り飛ばした。
命は高く跳び、既に刀を回収してこちらへ刀を向けていた。
僕は足に魔力を込めて蹴り抜く。
蹴りの衝撃波が命を襲い、しかし命は刀を振る推進力で耐えた。
そのままの勢いで命は上空からこちらへ迫った。
僕はそれを避け、後ろへ跳んだが、そこにイヴの竜砲が迫る。
同時に命が迫っていた。

「流石だね」

本当に、さすがだと思った。
僕はその場に立ち、言葉に魔力を込める。
これは、あの時の。
誰かが教えてくれた魔法。

「『解放』」

瞬間、辺りが静寂に包まれる。
命の走る音も、竜砲の迫る破壊の音も、木々のざわめきも、小動物の鳴き声も。
全てが、止まった。
そして、次の瞬間──

§

「──はっ!」

「マスター、命様が目覚めました』

「お、良かった。気分はどう?」

あの魔力の爆発・・・いや、浸透・・・?
あれを受け、僕は気絶してしまったのか。
凄まじい魔力だった。
限りなく少ない僕の魔力では、どう足掻いても勝てぬであろう、強大すぎる魔力。
何処にあんな魔力が・・・

「申し訳ございません。不覚にも気絶などと・・・」

「いいや?君はとても良くやったよ。思ったより成長している。これからも頑張ってね」

僕は頭を下げ、アダム様の御言葉を噛み締める。
強くならねば。
拾って頂いた恩を返すために。
我が恩主を御守りするために。

「さて、ここらでレベルでも見てみようか」

§

僕がリグレットから受け継いだ『眼』は、僕が元々持っていた瞳とあまり遜色がなかった。
決定的に違うのは2つだけ。
魔力を込めるか、ちょっとした危機が迫ると少し先の未来が見える。
これはものすごく、ものすごく便利だ。
僕にはまだ無縁だが、暗殺や奇襲の回避にも使えるし、未来が見えながらも、その時その時の状況も見えているのだ。
まるで、未来が頭に流れ込んでいるかのような。
そんな感じ。
で、もう一つがレベルという、本来は特別な存在しか見れない物。
昔は全人類が見ることが出来ていたらしいが、何故か突然見れなくなってしまったらしい。

「じゃあ、先にイヴから見てみようか」

研究室にイヴのデータはあったが、そこのデータとの参照で正確性を測れる。
僕はイヴと目を合わせ、魔力をイヴへ向ける。
これが、レベルを見る方法なのだ。
そして、これが──

「・・・これが、『ステータス』か」

★──§§──★
ステータス

名『イヴ・アクトレス』

レベル・・・『2』

攻・・・『5000』
防・・・『5000』
魔・・・『400000』
体力・・・『10000000』

次レベルまで『5700000』EXP

★──§§──★

「彼と君の姓はアクトレスだったんだな」

「・・・そうなのですね』

僕はそのステータスと記憶の中の数値を思い浮かべる。
・・・記憶通りなら、EXP以外は全て2倍になっている。
レベルも1じゃあない・・・
EXPに至っては2倍以上だ。
え、ステータスって倍々に増えるの?
えぇ・・・
いや、イヴだからっていう可能性もある。
そこは今後調べるか。

「とりあえず、イヴは全然成長出来そうだね。彼が君のステータスを設定したって、研究書にも書いてあったから、最初からステータスは高いみたいだね」

「なるほど・・・お兄ちゃんのお陰で、こんなに戦えるのですね』

「そうだね。傷付いて欲しくない・・・そんな想いが見えるよ」

体力なんか馬鹿にならない程量がある。
それに、イヴシリーズは全て僕と同じように魔力の総量に応じた回復機能がある。
いやー。
凄い技術だ。

「さて、次は命の番だよ」
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