数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第四章『過去と試練』

エピローグ『ご褒美?』

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先程の悪態が嘘のように、そこには白竜が悠然と佇んでいる。
凄いプレッシャーだ。
内包する魔力も、桁違い。 

『よもや、あんな策に弄されるとはな』

『油断大敵ですよ、バハムート様』

『うむ・・・そのようだな』

バハムートとラファエル。
2人が並び、こちらを見ていた。

『貴様らには試練の報酬として、一つだけ何かを叶えてやろう。アダム、フール、命、イヴ』

『アダム様は第一の試練での結果に応じて、報酬を2つに致します』

「じゃあ一つ目。この試練で死んだ人達全員生き返らせて、元の場所に送ってあげて」

『即決ですか・・・如何致しますか?』

『うむ。叶えよう』

僕は考えていた願いを伝え、他の3人を見た。
・・・はは、悩んでる悩んでる。
イヴも相当、悩んでる。
フールはもっと悩んでるかな。
そこで、命が口を開いた。

「では、私は私の・・・『産まれの刀』が、欲しいです」

『ほほぅ、そうかそうか。貴様の刀は確か、神刀だったな。よかろう。ほれ』

「こ、これが・・・?」

『間違いない。それが貴様が産まれた時、同時に打たれた刀だ』

真っ黒な鞘に、真っ黒な刀身。
真っ赤な刃文がてかてかとてかっている。

「かっこいい刀だね」

「は、はい!アダム様に頂いた刀と共に、扱いたいと思います!」

「二刀流かぁ。フールに教えて貰いなね」

「はい!」

次に口を開いたのは、イヴだった。

「イヴが産まれた機械の街に、誰も入れないようにして下さい。お兄ちゃんが守ろうとした場所を・・・もう、誰も』

『分かった。貴様とアダム以外は入れないように封印しよう』

「ありがとう、ございます」

正直、予想通りの願いだった。
第一の試練から第三の試練まではイヴは恐らくバハムートであった。
もはや想像の域だったけど、あそこでブラフが成功したのは僥倖だった。
本当に、運が良かった。

「じゃあ、私は、お願いごと、アダムにあげる」

「え?」

「だって、別に望みとかないもん。私はあなたと居れれば、それでいい」

「・・・フール」

『いいぞ。アダム。あと二つ、貴様が決めるといい』

『なんて愛されてるんでしょうねぇ・・・』

これで、僕の願いは2つになる。
・・・そうだな、じゃあ。
これで、いいかな。

「これからもずっと、僕らが一緒に居られるように、して欲しい」

『分かった。約束しよう』

『大丈夫ですよ。バハムート様の加護は絶対ですから』

ラファエルがそう、笑いかける。
僕はそれに頷き、そして。
最後の願いを、口に出した。

「僕の、仲間にならないか?」

§

その場から消え、元の草原へと戻った男を思い、世界竜は苦笑いをする。
傲慢だ不遜だと思っていたが、これほどとは。
まさか、我を仲間に、とはな。
これまでここまで到達した者に、そのような人間が居たか?
否、居ない。

『ククッ!クハハは!!』

『もうっ!何笑っているんですか!貴方様が居なくなったら、私たちはどうすれば・・・』

『何、直ぐに戻る』

『そう言って!前なんか2000年戻らなかったじゃないですか!』

『ははは!細かいことは気にするな!』

前は『勇者』とやらに封印されたが、今回は奴は居ない。
大丈夫、少しだけ、奴に着いていくだけ。
我の創造主と同じ名を持つ奴に、従うだけ。

「ふふ、何億年ぶりだ?この姿は」

『はぁ・・・行ってらっしゃいませ、バハムート様』

「あぁ、行ってくる」

そして、世界に。
『最強』が、放たれた。

§

──目が覚めると、そこはあの戦場だった。
僕らは直立して、向かい合わせで立っていた。
・・・戻ってきた。

「なにを突っ立っている。アダムよ、貴様我を退屈させるなよ?」

「・・・・・・あ、バハムート?」

「うむ」

「長いからむーちゃんって呼ぶね」

「・・・・・・うむ」

むーちゃんの見た目は・・・うーん。
幼女だ。
降ろした黒髪は腰まで伸びていて、その目はドラゴンの時と同じ、爬虫類のような縦に割れた眼。
そして、金色。
服装は、真っ白なドレス。
・・・うん、どこからどう見ても幼女だ。

「なんか、可愛くなったね」

フールが頭を撫でながら言う。
むーちゃんはそれを嫌がらず、むしろ喜んでいるように見える。

「これが我の本来の姿だ。我はまだ産まれて数千億だからな。幼体なのだ」

「あ、あれで幼体なのですね・・・」

「理解不能・・・だけど確かに、可愛いですね』

これ、誰に見せても『幼女だ』って言う見た目だけど、一応世界最強の世界竜様だからね。
なんか、全く見えないけど。
秘めてる魔力も、ドラゴンの時と同じだし。
多分、むーちゃんに勝てるのって存在しないんじゃないかな。
・・・あれ、僕らが逃げる時に出した悔しそうな声の正体、わかったなぁ。
精神年齢もしかして低い?
この『僕の仲間にならないか?』って言うのも、実は『一緒に遊ぼう!』程度にしか考えられてない?
・・・それはないか。

「さて、これからどうしようか」

「そうですね・・・戦も終わっている様ですし・・・1度大和国へ戻るべきでしょうか?」

「そうだねぇ・・・報酬貰いに行こうか?」

そこは僕らが転移された時そのままの様子で、薄暗く、しかし敵陣は既になかった。
さて、と。
ひとまず、疲れたな。

「バハちゃんクッキー食べる?」

「む?それは我に言っておるのか?」

「そうだと思うよ。ちゃん付けは仲良くなれた証拠だね」

「ふむ・・・くっきーとはなんだ?美味いのか?」

「もちろん!私が作ったクッキーまずいって言った人居ないし」

和気あいあいと、僕らは戦場のど真ん中を戻って行く。
その様子はやはり、周囲から見れば奇異そのものであった。
突然1箇所に集まり、1人2人増えている。
それなのにあの様子。
そして全員が『刀』を帯刀している。
幼子に見える少女ですら、その身の丈ほどの刀を背負っていた。

「あれが・・・鬼か・・・」

こちらの被害も殆どなく、しかし結果はあちらの消滅。
もはや戦ではなく、蹂躙に等しかった。
これは後世へ語り継がれる戦場。
『夢林の乱』と呼ばれるそれは。
数々の歴史ファンに刺激を与えたとか居ないとか・・・
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