ゲーム転生〜ゲームで最強になったら特典で異世界に行けた〜

最強願望者

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世界動乱への一歩

レベル15

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そこには、心臓の部分に四角い穴の空いた様々な種族の氷像があった。
穴の空いていない氷像もあるが、圧倒的に空いている方が多い。

これが、テルーの収集癖だ。

愛骸は決まってレアドロップだ。
しかもそれは、心臓に限られる。
あのゲームにおいて、心臓とは強化合成素材や、進化素材、はたまた売却素材として重宝されていた。
しかし、設定上『使用期限』があり、これまた周回厨が増える原因であった。

「これしか集められませんでしたけど・・・お兄様、いっつも心臓はーとが欲しいって言ってましたもんね!」

「あぁ!最高だよ・・・!ありがとうなぁテルー!」

「へへへ・・・」

その髪を、撫でる。
奥に積み上げられた心臓の数は約50程度だろうか。
凍っているから使用期限も問題ない。
・・・しかし、この世界ではあまり必要ない。
代償系の魔法以外で、使い道はないのだ。
だが、だかしかし。
彼女の好意を、善意を、お節介を、努力を、心の支えを。
否定したくない。
否定出来ない。

と、突然城が揺れ始めた。

「・・・ん?なんだ?」

「あぁ、またですか」

大陸が揺れているような・・・そんな感覚。
しかし、それにさほど驚いた様子でもなく、テルーは説明してくれた。

「たまに居るのです。ここヒリュアスティを落とそうとする輩が」

「へぇ、だがここは不倒とも称されているだろう?落ちることなんか有り得るのか?」

「ここはわたくしの魔力で浮かせているだけなのです。なので、私が死ぬか魔力を切ると自動的に落ち始めます」

なるほど、世界の大きな謎の1つが解けてしまったな。
元々はどこか適当な場所の大陸をちょっとずつ拝借してこの大陸を作ったらしい。
凍らせ、浮かせ、くっつけ、動かす。
最初の暇つぶしはそれで、最近になってようやく心臓集めを始めたらしい。
テルーはたった40個と言うが、ゲームでもこれは新規キャラをGODまでランクアップ出来る程度はある。
つまり、相当な数だ。

「・・・テルー、一応聞こうか」

「はい!なんでしょうか?」

「お前は、俺と共に来るか?」

かつてのように。
俺にとっては数時間程度だが、テルーや、エルドラド、サテラ、カルマ達にとって、果てしなく長い時間の心の支えであっただろう、何ものにも変え難い最高の思い出。
だからこそ、俺を探したのだろう。
だからこそ、寂しかったのだろう。

「──当たり前です!!」

一言、大きく叫んで、テルーは再三俺の胸へ飛び込む。
カルマより少し大きい程度の背丈だ。
頭が非常に撫でやすい。
だから、目一杯、撫でてやるのだ。
俺の為だけに、生きている少女を。
俺の為だけに、生きてきた少女を。

「ずっと、ずーっと一緒です♪」

そうして、歌を歌い始める。
それは、俺が教えた、感情の歌。
産まれたばかりの彼女が、感情を伝える為の手段だったもの。
今は・・・そう、今は。

持て余した感情を、伝える為の歌だ。

☆☆☆

揺れは依然続くが、魔力氷や浮力の魔力のおかげで傾く気配も落ちる気配もない。
しかし、共に旅をする中でこの大陸は非常に邪魔だ。
だから、テルーがくれた心臓ごと、たいらげるとしよう。

「スキル『完全捕食』、無効化無効、『無限消化』発動。追加オーダー『魔力吸収』」

よし、無駄なく、無駄なく、だ。
万物には魔力が宿るらしい。
ならば、このスキルで全ての魔力が奪えるはず。
例に漏れずこの大陸も地球と同程度の面積があり、体積はその限りではない。
さらに凍った生き物や氷を含め、この数を吸収すれば相当な魔力のストックが作れる。
まぁ今でも、相当なストックがあるんだけど。

「本当にいいのかテルー?」

「はい!お兄様のお力になるのでしたら!」

本当に嬉しそうに言うものだ。
1000と数百数年かけて作った物なのに。
ほんとに、我ながら愛されてるな。
ならば、残さず食いつくそう。

因みに、心臓は一応アイテムボックスへ入れて置いた。
もしかしたら、使えるかもしれない。
それに、心臓を欲しがる妹に、心当たりがある。
まぁそいつは今も
そういうやつだ。

「じゃあ遠慮なく──」

エルドラド達とも再会を喜びあい、特に仲のいいカルマと手をつなぎながら、こちらを見守っている。
アイツらには俺の護衛を任せている。
テルーに会う前に見た奴。
アレはきっと、現れる。

「捕食開始──!」

そう言って、思い切り空気を吸い込む。
途端に、周囲の酸素やら二酸化炭素やらの空気が全て消える。
魔力で俺の元へ少しだけ寄っていた大陸は、この肺活量によって完全に俺へと進み、そして。

「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!」

喰らい尽くそうとしたその瞬間に、その声は響いた。
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