2 / 6
絶望の幕引き
0ー2『何も無いなら』
しおりを挟む
こちらに転移してから3年が経った。
俺は延々と文明やら人を探して居たが、あるのは死体だけだった。
もはや文明の欠片も残っておらず、見つけたのは『魔道新書』という何とも謎な本と、S字の鎌だけだった。
この鎌と魔道新書は拾い物で、俺は何となく運命を感じて持ち歩いている。
「・・・ふーん、あれラピㅇタじゃなくて『破壊の城』って正式名称あるんだな。もしかして、この世界核戦争で滅んだんじゃね?」
そうなると俺が生きていることに疑問が産まれるのだが、そんな細かい事は気にしない。
ここは異世界、それでいいのだ。
「お、この本俺にも魔法が出来るって書いてある」
浮遊魔法に重力魔法、風や炎に闇や光。
めちゃくちゃ多いページを見れば確かに色々書いてそうだと思えてくる。
「・・・うんじゃまぁ、頑張りますか」
★★──☆☆
更に4年が経った。
今更だが、俺は歳を食わないらしく、老ける様子が一向に無い。
転移直後と違うのは髪や思考ぐらい。
ずっと歩いていたから体付きも良くなったが、その程度だ。
腰まで伸びた髪は最近カッコイイと思えている。
「よし、この本の奴は大体マスターしたか」
約10万ページの魔法を完全コピー、そして使いこなせる様になった。
もはやスペルすら要らないほど使い込み、体に覚え込ませた。
S字の鎌を浮かせて高速回転させる。
重力魔法と空間魔法で摩擦を完全に消し去り、無限加速の元、風すら起きない速さで回っている。
はっきり言って、かなり強そう。
しかし、如何せんこの世界は終わっている為に戦う相手も敵もいない。
何故か食料すら要らない体になっているし、睡眠も飲料も要らないという謎の最強身体。
一度間違えて崖から落ちたが、怪我すら無かった。
あの時は流石に戦慄したぜぃ。
「さて、行くか」
破壊の城、あれは俺が行くところ全ての場所から見える不思議な島だ。
今までは行き方が分からなかったが、俺は飛べるようになったし、なにか起きても大丈夫だろう。
言い忘れていたが、魔道新書はいつの間にか『叡智の書』に題名が変わっており、鎖が俺に巻きついて離れなくなっている。
特に喋ったりとかもなく、単純に呪いの類だと思って放っといている。
「よっと」
ジャンプして空中に浮く。
相変わらず荒野と森と山しかない世界だ。
雨も降らないくせに草花が枯れることはなく、むしろ荒野の方に広がっている。
「・・・・・・俺はもう、人間じゃねぇのかもな」
何度も元の世界に戻れるかと思ったが、戻る理由もないから探していない。
両親だって死んでたし、兄弟も居なかったからな。
「ま、なんなら自分で封印して新しい人間が産まれるまで寝ててもいいな」
どうせ死なないなら、死ぬまで待つのも悪くない。
永遠を生きるとしても、時間感覚は人間のそれなんだから。
☆☆──★★
「・・・すっげー・・・」
破壊の城は浮島全てが丸ごと機械だった。
前の俺では分からなかったかも知れないが、今なら分かる。
「動力源が全部魔力だ・・・宇宙から無限に吸い上げているのか・・・?」
プロペラが見当たらない事に疑問は感じていたが、異世界だしと変に納得していた。
考えてみれば当たり前で、こんな質量を電力だけで補えるほど物理法則は優しくない。
中心へ向かって歩く。
予想通り、生命の気配も死体も無い。
機械生命体も無いし、本当に静かな城のイメージだ。
城門の様な場所から中に入り、更に嘆息する。
あまり機械系の事に興味はなかったが、これは興奮する。
音もなく、静かに動かない歯車や圧力器。
「・・・はー・・・前世にあったら世紀の大発見所じゃないな・・・」
科学者や研究者が大興奮だ。
そもそも人間が死滅した世界で尚稼働することなく浮いていること自体興奮ものなのに、それに加えて電力の必要が無い機械その物が貴重過ぎる。
★★──★★
「──はは・・・気絶もんだな・・・」
ドラ〇もんもびっくりな異次元の構造だ。
城の中央、そこには地下へ続く階段があり、俺は迷うこと無く進んだ。
そして、制御室らしき場所を見つけたのだ。
言わばそれは『無限ループ』を幾億個も繋ぎ、重ね、利用した構造の物。
もはや科学では無く別の物だった。
そこだけは酷く静かに稼働し、確かに島を浮かせていた。
天井には宇宙と思われる真っ黒な闇、床には青白く光る魔力の管。
壁どころか空間一杯に敷き詰められた無限構造。
見ていて飽きない所じゃない。
見ていて感動するほどに素晴らしいと思える空間だった。
俺は外へ出て、当初から考えていた事を実行する。
島全体を丁寧に結界で包み、城門前に寝床を作る。
「うーし、アラームは50億年後っと。夢は見たくないから熟睡っと。OK」
結晶の中で寝転がって浮く。
これで、体はバキバキになるけど血は巡る。
いつどうやってどんな風に死ぬのかは分からないからな。
なるべく安全に寝たいのだ。
「・・・はは、考えられないな・・・異世界で人間誕生まで寝るなんて・・・」
本当に、笑ってしまう程おかしな話だ。
もし神様が居るのなら、今の俺はどんな風に見えているのだろうか。
もしかして、神にスカウトされたり?
そんな馬鹿な事を考えて、俺は自分にコールドスリープ的な奴を掛ける。
何らかの不具合で俺が死んだら、この島は見えなくなり、永遠に浮き続ける。
思考は・・・意識は・・・闇の・・・中、へ・・・
俺は延々と文明やら人を探して居たが、あるのは死体だけだった。
もはや文明の欠片も残っておらず、見つけたのは『魔道新書』という何とも謎な本と、S字の鎌だけだった。
この鎌と魔道新書は拾い物で、俺は何となく運命を感じて持ち歩いている。
「・・・ふーん、あれラピㅇタじゃなくて『破壊の城』って正式名称あるんだな。もしかして、この世界核戦争で滅んだんじゃね?」
そうなると俺が生きていることに疑問が産まれるのだが、そんな細かい事は気にしない。
ここは異世界、それでいいのだ。
「お、この本俺にも魔法が出来るって書いてある」
浮遊魔法に重力魔法、風や炎に闇や光。
めちゃくちゃ多いページを見れば確かに色々書いてそうだと思えてくる。
「・・・うんじゃまぁ、頑張りますか」
★★──☆☆
更に4年が経った。
今更だが、俺は歳を食わないらしく、老ける様子が一向に無い。
転移直後と違うのは髪や思考ぐらい。
ずっと歩いていたから体付きも良くなったが、その程度だ。
腰まで伸びた髪は最近カッコイイと思えている。
「よし、この本の奴は大体マスターしたか」
約10万ページの魔法を完全コピー、そして使いこなせる様になった。
もはやスペルすら要らないほど使い込み、体に覚え込ませた。
S字の鎌を浮かせて高速回転させる。
重力魔法と空間魔法で摩擦を完全に消し去り、無限加速の元、風すら起きない速さで回っている。
はっきり言って、かなり強そう。
しかし、如何せんこの世界は終わっている為に戦う相手も敵もいない。
何故か食料すら要らない体になっているし、睡眠も飲料も要らないという謎の最強身体。
一度間違えて崖から落ちたが、怪我すら無かった。
あの時は流石に戦慄したぜぃ。
「さて、行くか」
破壊の城、あれは俺が行くところ全ての場所から見える不思議な島だ。
今までは行き方が分からなかったが、俺は飛べるようになったし、なにか起きても大丈夫だろう。
言い忘れていたが、魔道新書はいつの間にか『叡智の書』に題名が変わっており、鎖が俺に巻きついて離れなくなっている。
特に喋ったりとかもなく、単純に呪いの類だと思って放っといている。
「よっと」
ジャンプして空中に浮く。
相変わらず荒野と森と山しかない世界だ。
雨も降らないくせに草花が枯れることはなく、むしろ荒野の方に広がっている。
「・・・・・・俺はもう、人間じゃねぇのかもな」
何度も元の世界に戻れるかと思ったが、戻る理由もないから探していない。
両親だって死んでたし、兄弟も居なかったからな。
「ま、なんなら自分で封印して新しい人間が産まれるまで寝ててもいいな」
どうせ死なないなら、死ぬまで待つのも悪くない。
永遠を生きるとしても、時間感覚は人間のそれなんだから。
☆☆──★★
「・・・すっげー・・・」
破壊の城は浮島全てが丸ごと機械だった。
前の俺では分からなかったかも知れないが、今なら分かる。
「動力源が全部魔力だ・・・宇宙から無限に吸い上げているのか・・・?」
プロペラが見当たらない事に疑問は感じていたが、異世界だしと変に納得していた。
考えてみれば当たり前で、こんな質量を電力だけで補えるほど物理法則は優しくない。
中心へ向かって歩く。
予想通り、生命の気配も死体も無い。
機械生命体も無いし、本当に静かな城のイメージだ。
城門の様な場所から中に入り、更に嘆息する。
あまり機械系の事に興味はなかったが、これは興奮する。
音もなく、静かに動かない歯車や圧力器。
「・・・はー・・・前世にあったら世紀の大発見所じゃないな・・・」
科学者や研究者が大興奮だ。
そもそも人間が死滅した世界で尚稼働することなく浮いていること自体興奮ものなのに、それに加えて電力の必要が無い機械その物が貴重過ぎる。
★★──★★
「──はは・・・気絶もんだな・・・」
ドラ〇もんもびっくりな異次元の構造だ。
城の中央、そこには地下へ続く階段があり、俺は迷うこと無く進んだ。
そして、制御室らしき場所を見つけたのだ。
言わばそれは『無限ループ』を幾億個も繋ぎ、重ね、利用した構造の物。
もはや科学では無く別の物だった。
そこだけは酷く静かに稼働し、確かに島を浮かせていた。
天井には宇宙と思われる真っ黒な闇、床には青白く光る魔力の管。
壁どころか空間一杯に敷き詰められた無限構造。
見ていて飽きない所じゃない。
見ていて感動するほどに素晴らしいと思える空間だった。
俺は外へ出て、当初から考えていた事を実行する。
島全体を丁寧に結界で包み、城門前に寝床を作る。
「うーし、アラームは50億年後っと。夢は見たくないから熟睡っと。OK」
結晶の中で寝転がって浮く。
これで、体はバキバキになるけど血は巡る。
いつどうやってどんな風に死ぬのかは分からないからな。
なるべく安全に寝たいのだ。
「・・・はは、考えられないな・・・異世界で人間誕生まで寝るなんて・・・」
本当に、笑ってしまう程おかしな話だ。
もし神様が居るのなら、今の俺はどんな風に見えているのだろうか。
もしかして、神にスカウトされたり?
そんな馬鹿な事を考えて、俺は自分にコールドスリープ的な奴を掛ける。
何らかの不具合で俺が死んだら、この島は見えなくなり、永遠に浮き続ける。
思考は・・・意識は・・・闇の・・・中、へ・・・
0
あなたにおすすめの小説
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる