転移したのは終末を迎えた世界で

最強願望者

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絶望の幕引き

0ー2『何も無いなら』

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こちらに転移してから3年が経った。
俺は延々と文明やら人を探して居たが、あるのは死体だけだった。
もはや文明の欠片も残っておらず、見つけたのは『魔道新書』という何とも謎な本と、S字の鎌だけだった。
この鎌と魔道新書は拾い物で、俺は何となく運命を感じて持ち歩いている。

「・・・ふーん、あれラピㅇタじゃなくて『破壊の城』って正式名称あるんだな。もしかして、この世界核戦争で滅んだんじゃね?」

そうなると俺が生きていることに疑問が産まれるのだが、そんな細かい事は気にしない。
ここは異世界、それでいいのだ。

「お、この本俺にも魔法が出来るって書いてある」

浮遊魔法に重力魔法、風や炎に闇や光。
めちゃくちゃ多いページを見れば確かに色々書いてそうだと思えてくる。

「・・・うんじゃまぁ、頑張りますか」

★★──☆☆

更に4年が経った。
今更だが、俺は歳を食わないらしく、老ける様子が一向に無い。
転移直後と違うのは髪や思考ぐらい。
ずっと歩いていたから体付きも良くなったが、その程度だ。
腰まで伸びた髪は最近カッコイイと思えている。

「よし、この本の奴は大体マスターしたか」

約10万ページの魔法を完全コピー、そして使いこなせる様になった。
もはやスペルすら要らないほど使い込み、体に覚え込ませた。

S字の鎌を浮かせて高速回転させる。
重力魔法と空間魔法で摩擦を完全に消し去り、無限加速の元、風すら起きない速さで回っている。

はっきり言って、かなり強そう。
しかし、如何せんこの世界は終わっている為に戦う相手も敵もいない。

何故か食料すら要らない体になっているし、睡眠も飲料も要らないという謎の最強身体。
一度間違えて崖から落ちたが、怪我すら無かった。
あの時は流石に戦慄したぜぃ。

「さて、行くか」

破壊の城、あれは俺が行くところ全ての場所から見える不思議な島だ。
今までは行き方が分からなかったが、俺は飛べるようになったし、なにか起きても大丈夫だろう。

言い忘れていたが、魔道新書はいつの間にか『叡智の書』に題名が変わっており、鎖が俺に巻きついて離れなくなっている。
特に喋ったりとかもなく、単純に呪いの類だと思って放っといている。

「よっと」

ジャンプして空中に浮く。
相変わらず荒野と森と山しかない世界だ。
雨も降らないくせに草花が枯れることはなく、むしろ荒野の方に広がっている。

「・・・・・・俺はもう、人間じゃねぇのかもな」

何度も元の世界に戻れるかと思ったが、戻る理由もないから探していない。
両親だって死んでたし、兄弟も居なかったからな。

「ま、なんなら自分で封印して新しい人間が産まれるまで寝ててもいいな」

どうせ死なないなら、死ぬまで待つのも悪くない。
永遠を生きるとしても、時間感覚は人間のそれなんだから。

☆☆──★★

「・・・すっげー・・・」

破壊の城は浮島全てが丸ごと機械だった。
前の俺では分からなかったかも知れないが、今なら分かる。

「動力源が全部魔力だ・・・宇宙から無限に吸い上げているのか・・・?」

プロペラが見当たらない事に疑問は感じていたが、異世界だしと変に納得していた。
考えてみれば当たり前で、こんな質量を電力だけで補えるほど物理法則は優しくない。

中心へ向かって歩く。
予想通り、生命の気配も死体も無い。
機械生命体も無いし、本当に静かな城のイメージだ。

城門の様な場所から中に入り、更に嘆息する。
あまり機械系の事に興味はなかったが、これは興奮する。
音もなく、静かに動かない歯車や圧力器。

「・・・はー・・・前世にあったら世紀の大発見所じゃないな・・・」

科学者や研究者が大興奮だ。
そもそも人間が死滅した世界で尚稼働することなく浮いていること自体興奮ものなのに、それに加えて電力の必要が無い機械その物が貴重過ぎる。

★★──★★

「──はは・・・気絶もんだな・・・」

ドラ〇もんもびっくりな異次元の構造だ。
城の中央、そこには地下へ続く階段があり、俺は迷うこと無く進んだ。

そして、制御室らしき場所を見つけたのだ。
言わばそれは『無限ループ』を幾億個も繋ぎ、重ね、利用した構造の物。
もはや科学では無く別の物だった。

そこだけは酷く静かに稼働し、確かに島を浮かせていた。
天井には宇宙と思われる真っ黒な闇、床には青白く光る魔力の管。
壁どころか空間一杯に敷き詰められた無限構造。

見ていて飽きない所じゃない。
見ていて感動するほどに素晴らしいと思える空間だった。

俺は外へ出て、当初から考えていた事を実行する。
島全体を丁寧に結界で包み、城門前に寝床を作る。

「うーし、アラームは50億年後っと。夢は見たくないから熟睡っと。OK」

結晶の中で寝転がって浮く。
これで、体はバキバキになるけど血は巡る。
いつどうやってどんな風に死ぬのかは分からないからな。
なるべく安全に寝たいのだ。

「・・・はは、考えられないな・・・異世界で人間誕生まで寝るなんて・・・」

本当に、笑ってしまう程おかしな話だ。
もし神様が居るのなら、今の俺はどんな風に見えているのだろうか。
もしかして、神にスカウトされたり?

そんな馬鹿な事を考えて、俺は自分にコールドスリープ的な奴を掛ける。
何らかの不具合で俺が死んだら、この島は見えなくなり、永遠に浮き続ける。

思考は・・・意識は・・・闇の・・・中、へ・・・
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