バカな女

みづき

文字の大きさ
上 下
2 / 4

バカな男

しおりを挟む
車の座席の高さ、シートの間隔、運転席との距離
帰り際に付けるハザード
体がその全てを覚えていた
その全てが好きだったと訴えてきた


女は寂しさを埋めるために他の男に会うことにした
電話で話して楽しい人だった
会ってみてもそんなに悪い人じゃなかった
ただ、いちいちあの男のことを思い出して
しゃべっていないと泣きそうになった

ドライブ
好きだったはずなのに
全てをあの男と重ねてしまう
あの人の方がよかった
口が裂けても言えないこの気持ちに蓋をするのに必死だった

忘れたい、忘れたいと強く思うほど思い出す


女は想像した
男と元カノがうまく行ってないことを
男が元カノを車に乗せると思い出す
私がパンダのぬいぐるみで遊んでいたこと
シートヒーターで悪戯をしてたこと
アイコスを吸うときに渡していたこと
ドライブに連れて行ってもらうときは飲み物を買って行くこと
しりとりで馬鹿笑いしたことを
そして私のことが忘れられなくなればいい
元カノの嫌なところを見るたび、私を思い出して後悔すればいい

あぁ、もっと忘れられない女になっておけばよかった
そうだな例えば
香水
少し珍しいけど珍しすぎず
どこかでその香りがしたら私を思い出すように
アクセサリー
少し特徴のある形でエピソード性を込めて
何かあるたび私を思い出すようにしとけばよかった



そんなことを後悔しながら女は思い出した

運転が上手なこと
長距離でもどこでも連れて行ってくれること
車にこだわりがあってセンスがいいこと
休みの日まで人の車の整備をしていること
そして男のことが忘れられなくなっていた


男がバカで最低で、元カノとまた別れて私に連絡してくればいい
泣きながら後悔して私に謝ればいい
女はもっとバカで最低だから
今あるもの捨ててもそのバカな男と一緒にいたいと思っていた
2度と私を泣かせないと約束させて




しおりを挟む

処理中です...