妹が寝たきりになったり、幼馴染が勇者になったり大変なので旅に出ます

ゆーごろー

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旅の始まり〜冒険者入門編〜

王都散策-2

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「スキルの効果を打ち消したり出来る方法とかスキル、知らない?」
「はぁ?んー…何か、事情があるのね?」

俺の真剣な顔を見て冷やかしでも冗談でもなんでもない事を察したのか、少し悩む。

「…ごめんなさい、知らないわ。事情を聞いても良いかしら?」

俺は、妹が魔剣により仮死?状態にある事を話した。

「なるほど…わかったわ。そう言うことなら探しといてあげる。もしかしたら神級スキルにそう言うのがあるかもしれないしね。」
「わかった。ありがとう。…っと、そうだ、せっかくだしもうちょっと見て回ってもいいか?」
「いいけど…あなた、冒険者なの?」
「最初に言っただろ?魔力を辿ってきたって。」
「あ、そっか。」

「蚊帳の外…」
「あ、すまんすまん。見て回ってもいいか?」
「もちろん!」

そう言って、ユイと共に見回る。


買い物をすませ、エミアの店を出ようとすると、後ろから声がかかった。

「またきてちょうだいね。あなた、見たところ潜在能力が高そうだわ。」
「わかった。まだ気になる物もあったしな。金が溜まったら来るよ。」

そうして、俺達はエミアの店を去った。







「次どこ行く?」

ユイが可愛らしく聞いてくる。しかし、どこに行きたいとかは無い。強いて言うなら鍛冶屋に行きたいぐらいだな。

「なら、鍛冶屋行こっか。」
「いいのか?多分つまらんだろうし…」
「それでケイが少しでも安全になるならいいよ!」

「…ありがとな」

優しさが心に染み渡る。

ほんと、3年間頑張れたのはもちろんアオイを治したいと言う気持ちが原動力だが、ユイにも沢山助けられた。辛かった時、そして立ち直れなかった時はユイが励ましてくれたから頑張れたんだ。

「なら、有難く鍛冶屋に行くかな。多分、この辺にあると思うんだが…」

冒険者道路にあった方が鍛冶屋的には儲かるだろうし。

「お、ここ鍛冶屋だな。」
「エミウ鍛冶…?なんか、既視感のある…」
「…と、とりあえず入ってみるか」

中に入ると、たくさんの剣や盾、その他にも様々な武器が並んであった。

「いらっしゃい。今日はなんの用で?」
「えーと…新しい剣が欲しくて…」
「おう、坊主は剣士か?それとも冒険者?」
「冒険者です。」
「ならこの辺かね…ほれ、これなんてどうだ?」

渡されたのはロングソードよりは短めの振りやすそうな剣だ。

俺はそれを受け取り、軽くふってみる。
なかなかふりやすいな。手によく馴染むし、悪くない。

「これ、気力と魔力には耐えますか?」
「おう。バッチリよ。なんなら二重装も耐えれる。」

二重装…って確か魔力と気を同時に流す技術だったか?俺もさすがに習ってない。師匠なら使えるだろうけどな。

「いいですね、これ。」
「おう!だろ?俺が鍛えた剣だ、悪いはずがねぇよ!見る目があんなぁ、坊主!」
「あ、そうだ。彼女用にも何か一つ…」
「え!?わ、私はいいよ…」
「必要になってくるだろ?買っといて損はねぇよ。俺からのプレゼントってことでさ。」
「んむぅ…なら、お願いします!」
「おうよ。姉がみたら嫉妬で狂っちまうような熱々ぶりをありがとよ。」

じゃあこれなんてどうだ?と渡されたのは軽めのダガーナイフの様な物だ。

「お嬢ちゃんは、見たところ剣なんて握ったことは無さそうだからな。訓練してから武器を選ぶ方がやりやすいと思うぞ。だから、あくまでサブとしてこういうのを買った方がいい。」
「ほわぁ…持ちやすい…」
「グリップにとある魔物の皮を鞣したものを貼ってるから、手によく馴染むはずだぞ。」
「はい、とても馴染みます…」
「重さはどうだ?ふれそうか?」
「はい、これぐらいなら!」

「じゃあ、それにするか?」
「うん!」
「じゃあ、それで。後、1ついいか?」
「おうよ。何をお求めで?」
「皮のグローブが欲しい。丈夫でスキルを付与しても大丈夫なの」
「ふむ…」

少し、難しい相談だっただろうか。

「スキルを付与しても大丈夫ってこたぁ、魔力に馴染むものがいいよな…なら、…いや、こいつより…んー」

ブツブツ何か言って迷ってる。どうしよう、困らせちまってるか?

「すまん坊主。あと1週間待ってくれねぇか?ちと時間が欲しい。」
「あ、全然大丈夫ですよ。てか、むしろすみません。」
「いやいや。こういう悩んでる時が1番楽しいってもんよ!他に何か欲しいものはあるか?」
「じゃあ、皮のグローブに関することでいいですかね?」
「おう。どんどん言ってくれ。」
「皮のグローブ、と言いましたが殴る時に金属部分が当たるようにして欲しいんです。」
「ほう…」
「殴った時やっぱり痛いんで…」
「わかった。なら、代金は…受け取りの時でいいか。なら1週間後また来てくれ。名前は?」
「ケイです。」
「わかった。最高の物を作って見せるさ。じゃあ、今日の代金は金貨4枚な。」
「分かりました!ありがとうございました!」







「次どうする?」

俺がそうユイに問うと、悩むような仕草を見せた後にすることも無いのでギルドを見に行こうとの事になった。

「変なやつ居ないといいけどなぁ…」
「変なやつって?」
「んー…この前、絡まれたんだがさ?急に魔力の波長を感じたから乱魔を展開したんだけど、変な光線を打たれたんだよね。なんでか聞いたら『俺の後ろに立ったからだ…俺の後ろにいちゃ、火傷するぜ?』って言われて…」
「あー…そりゃ災難だったね…」

全く、変なやつもいたもんだ。怒ってやろうかとも思ったが、パーティーメンバーと思わしき人物に殴られ、またかって感じで罵られてたので怒る気も失せた。

「てか、なんでまたギルド?」
「えと、冒険者登録しとこうと思って…」

マジか…なんで急にそんな事考えたんだろ。
いや…急にじゃないのかもな。元々考えてたのかも…

「ほーん…まぁ、いんじゃね?」
「じゃ、案内よろしくー!」







「ついたぞー」
「ほえー…案外おっきいね!」

案外て…

「とりあえず、入るぞ」
「うん!」

中に入ると、少しの視線を感じる。
この視線は俺もよく知るあの、感情だ。
それは…

「おいおい、ケイが女連れてきやがったぞ」
「なんて珍しい…てか、まだ来て1週間なのに女作ってんのか」
「あれ、夢かな?」
「ふっ、奴のお眼鏡にかかる女を見つけたか…ここはひとつ、我が祝いの言葉を…」
「あんた、また迷惑かける気?やめなさい。」

好奇に晒される。最悪だよ、ほんと…ここの人らガラ悪いんだよ。

「うるせぇよ。こいつは…あの、あれだ。おさな…」
「彼女です!!!」

ぁぁぁあ!待てって!マジで!やめ、やめて!俺が明日から大変なことになっちゃうから!
こいつら、俺が師匠に師事してもらってたことを聞いた瞬間勝負吹っ掛けて来るようなやばいやつだぞ!?

おまけにそれが広がってめっちゃサシで戦ったんだからな!?昨日やっと打ち切りになったのに…
何回か負けたし!心折れるわ、ボケ!
 
…まぁ、対人戦は勉強になるし勝っても負けても依頼を受けれなかったぶんお金は貰えたし満更でもなかったんだが…うん。やっぱりダメだ、こいつら。ルーキーの心折ってどうすんだよ。

「ん?ケイじゃねぇか。久しぶりだな。」
「あ、ダイル先輩!お久しぶりです!依頼は終わったんです?」

例の気が利く先輩だ。ちなみに、彼とも戦ったが負けた。俺の動きを先読みしたような動きで攻撃の筋を全部止められ、勝ち筋が見当たらなかった。

「あぁ。そっちのは…幼なじみってとこか?」
「むぅ…なんでわかったんですか?」
「ん?まぁ…勘、だな。」

本人は勘が鋭いと言っていたが、多分何かスキルの力じゃ無いかと予想している。
まぁ、別に疑う気は無いけどな。

「ギルドを見回ってるなら売店なんていいんじゃねぇか?珍しいもんも置いてる。」
「確かに…ありがとうございます!」
「おう。楽しんでけよ」

そう言ってダイル先輩はその場を後にする。
やっぱり気が利くなぁ…

「んじゃ、売店行くか。」
「うん。」

と、俺たちに立ちはだかる者が1人。

「おい、貴様。ケイと言ったか?」
「ん?あぁ、そうだけど。」
「ならば話は早い。私はリョウガと言う。私のパーティーに入れ。今、私のパーティーには魔法使い、タンク、盗賊がいる。自由に動けるアタッカーが欲しい。私たちはAランクパーティーだ。大昇格だぞ?」

なんだコイツ、身勝手な奴だな。

「断る。」
「…何故だ。貴様にデメリットは…」

正直に言った方がいいよな?こういうのは。

「居心地が悪そうだから。それに、そんな態度でパーティーに入れと言われてもな。パーティーに入って欲しかったらパーティーメンバー全員雁首揃えて適正な話し合いの場を設けろ。」
「そうよ!それに、ケイは私とパーティーを組むんだから!」

そうだったんですか、ユイさんや。聞いとらんぞ…

「ほう…私より、そんな女を選ぶのか。面白い…」
「…ん?リョウガ、何してんの?」

と、睨み合いを続ける俺達を横目にリョウガに話しかける身軽な格好をした女性。
盗賊っぽいな。

「こいつをスカウトしていた。前話していただろう?」
「あんたって奴は…また勝手なことして!スカウトは私がするからって言ったでしょ!?ごめんね、こいつ失礼な事言ってない?」

めちゃくちゃ失礼だったな。

「…やっぱりしてるのね…全く、あんたって奴は…!」

なんか…母親みたいだな…

「本っ当にごめん!今日は具合悪いだろうからまた今度話をしに来るね!じゃ!」
「あ、はぁい…」

嵐のような人達だったな…

「じゃ、じゃあ行こうか」
「そうだね!」

売店に向かって歩いていく。
流石にもう止められる事は無く、俺達は売店を見て回りながら時間を過ごしていくのであった。
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