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エレベーターに閉じ込められたその後で。
お風呂の中で何をしますか?(陸くんの場合)※
しおりを挟む家の中が割と片付いていて良かった。
旅行に行くからってお母さんが整理していってくれたから、成瀬を招いても大丈夫だった。
初めて恋人を呼ぶ時はもっと自分の部屋を綺麗にしておきたかったんだけど、今回は事故みたいなものだし(いや本当に事故だけど)仕方がないので諦める。
成瀬の部屋がそこそこ片付いてなかったので、俺の部屋の方がややマシだと思う。
成瀬がお風呂に入ってる間にシーツくらい替えようと思いながら、お風呂の支度をして部屋に戻ると、成瀬は俺の昔の写真とかを眺めてる。
そんなのだって、成瀬が来るとわかってたら整理して隠したかったのに!うまくいかない。
成瀬は確実に俺とお風呂に入りたがっていた。
それはわかってたけど、一緒にお風呂なんて入ったら俺がどうなるか想像出来ない。
「お客さん用のバスタオル置いてあるから使って?」
「陸、やっぱ一緒に……」
「絶対、いやだ」
少ししょんぼりしている成瀬をバスルームに押し込んで、俺は部屋に帰って急いでシーツを取り替える。
そして引き出しの中からローションとゴムを出してベッドサイドの上に置いた。
う、なんか使ってくださいって置いてあるラブホみたいでやる気満々が恥ずかしくて結局、ベットの下に隠す事にする。
「陸」
「ひっ、何?成瀬もう上がったの!?は、早過ぎない!?」
「あー、ごめん。俺風呂早いってよく言われる」
成瀬がバスタオルで頭を拭きながら部屋に入って来て、濡れた髪と少し赤くなった頰がものすごく色っぽくて、俺はその姿をまともに見れない。
家から持ってきたらしい紺のTシャツと白いスウェットの下を履いてて、俺はバスルームから慌ててハイパワーのドライヤーを持って来る。
「ちゃんと乾かさないと風邪引くから。ここのコンセント使って…うん、少し待ってて」
「俺、ドライヤー使わねーんだけど…」
「えっダメじゃん、ちゃんと乾かさないと。あと、絶対にお風呂入って来ないでよ!」
「………んー、わかった」
口を尖らせて成瀬は不服そうに返事をした。
多分釘を刺さなかったら入って来ようとしてたんじゃないか?って思った。
俺は急いでお風呂に入って、シャワーを出しながら1人で準備をした。
「……くっ、はぁっ、ん」
漏れる声は苦しそうで、こんな姿もこんな声も成瀬には見せられないし聞かせられない。
弄ってる事がわかるほどは弄ってないはずだけど、成瀬の事を考えながらここに指を挿れる事がある事は絶対知られたくなかった。
こんな事になるなら弄ったりしなければ良かったと少し後悔もしていた。
経験があると思われたらどうしよう。
経験はないけど知識だけはそこそこある。
性の対象が男な事ももう気づいていたし、するなら受け入れる側だと確信していたから。
頭の中では何回も成瀬に抱かれてる。
その妄想で吐き出す事も何度もしてきた。
「成瀬、引くかな…」
少し心細くなって小さく呟いたけど、シャワーの音にかき消されてお湯と一緒に流れていった。
少しあったまろうと湯船につかった途端。
照明が、消えてしまった。
「………え?なんで!?」
実はバスルームには防水の簡易照明が付いていて、暗くなるとセンサーでほのかな明かりがつく。
停電になってパニックになった事があって、1人で風呂に怖がって入れなくて泣く俺を見かねて、兄ちゃんがつけてくれたんだった。
「嘘、また停電?いや、違うよな…」
そしてはっとする。
成瀬に渡したハイパワーのドライヤー。
あれ使う時、家の電気全部つけっぱなしだとブレーカー簡単に落ちるんだった!!
どうしよう、やばい。
絶対絶対、成瀬が来る!!
「おい、陸?大丈夫かー?」
バスルームの前に明かりがついて、成瀬が照明を持ってる姿が透けて見えた。
「成瀬!?バスルーム、真っ暗にならないようになってるから大丈夫!だから入って来な…ちょ、なんで開けるんだよ!?」
成瀬は俺の話を聞かずにバスルームのドアを開けて覗いた。
「あ、本当だ。停電対策してんだなぁ。なんか、他の部屋真っ暗になっちゃったんだよな。ほら、ランタンいる?」
「い、いらないって。少し明るければ俺大丈夫なの!それにブレーカー落ちただけだから、風呂から上がったらすぐ直せるから」
「…そっか。まぁ、せっかく持ってきたからさ」
成瀬の髪はまだ濡れたままで、ランタンを取手に引っ掛けると素早く服を脱ぎ捨ててバスルームに入ってくる。
「な、成瀬…!!前、隠せって。そして出てけってば!!」
成瀬の成瀬を直視してしまって、俺は耳まで赤くなってのぼせそうになる。
「せっかくだから一緒に…あ、まだ頭洗ってないんだな?うん、俺が洗ってやるから」
成瀬が全然言う事を聞かない!!
バスルームのドアを閉めて成瀬は素早く湯船に入って来た。
「ひ、人とお風呂なんて家族以外入った事ない、無理」
「じゃあ、初めて入ったのが俺なの?」
なんでそんなに嬉しそうなんだよ!!?
逃げるにも狭いバスルームに逃げ場なんてないし、俺はまだ髪の毛は洗ってないから先に出る事も出来ない。
「成瀬、やだってば。俺…」
成瀬と湯船の端と端で睨み合う。
まるでエレベーターの中で端と端に座ってた時みたいに。
「陸」
成瀬が笑いながら俺の手を取ると、引き寄せるわけでもなくただ優しく握った。
「抱きしめていい?」
なんでも聞けばいいってもんじゃないのに。
それなのにそう聞かれると、大好きな成瀬だから断れない。
少しの沈黙の後に仕方なくそっぽを向いたまま頷くと、軽く引っ張られて成瀬の膝の上に跨る形になる。
「…あっ、ふ」
裸だからお互いの張り詰めたモノが当たって変な声が出てしまう。
「…陸が可愛い声出すから、色々我慢出来ないんだけど」
俺の目を見つめて軽く唇を合わせる。
のぼせそうで首に縋って成瀬の頭を抱きしめると、首筋を舐められてまた変な声が出た。
「嫌なら抱きしめるだけで何にもしないよ。嫌、か?」
だから前に言ったじゃん?
成瀬は結構ずるいと思う。
嫌なわけじゃなく、恥ずかしいんだってわかってる癖に。
「…嫌がらなかったら合意って言った…」
成瀬は嬉しそうに笑って俺の頭の後ろに手を差し込んで引き寄せる。
「じゃあ、遠慮なく」
下から激しめに唇を塞がれて、それからしばらく記憶が飛ぶくらい濃厚なキスをされる事になった。
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