異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆

文字の大きさ
31 / 101

31.眠気には勝てませんので

 騎士団本部に戻る途中で、どうやら私はまたも寝入ってしまったらしい。
 目が覚めると本部ではなく、見慣れたヴィクターの部屋の中にいた。ちなみに家主の姿は見えず、一人きり。

 窓辺に置かれたメルヘン巣箱からよろよろと脱出する。この巣箱、移動ベッドと思えば何気に便利だよねー。ありがとう、ロッテンマイヤーさん!

 にしても、我ながら寝すぎだな、とは思う。もしかしたらシーナちゃんって、コアラ並に睡眠時間が必要な生き物なのかも?

 ふああ、と大あくびしてへたり込む。ちらりと窓を見上げるが、カーテンに覆われて今が昼か夜かもわからなかった。

「……起きたか」

「ぴえっ?」

 突然部屋のドアが開き、ヴィクターが不機嫌そうに入ってくる。その手にはお盆を持っていて、湯気の立つ深皿が載せられていた。おお、朝ごはん? はたまた夜ごはんかな?

「ぽえ、ぽえぇ~!」

 しっぽをぱたぱた振る私を無視して、ヴィクターは深皿を机に置いた。むんずと私をつかみ、お皿の側に移動させてくれる。

(どれどれ……。おおっ!)

 ほろほろに煮込まれた鶏肉に、じゃがいも、人参、玉ねぎとお野菜たっぷり。具だくさんで食べごたえがありそうなスープだ。

 椅子に掛けたヴィクターが、面倒くさそうにスプーンを差し出してくる。

「夜食だ。もう夜も遅いから、食える分だけで構わん」

「ぱぇ、ぱぇぱぁ!」

(ありがと、ヴィクター!)

 いそいそとスプーンを受け取って、早速スープを……スープを……。

「ぷ……、ぷぷぅ……っ!」

 す く え な い。

 さすがにこの体で汁物は難しい。カチャカチャと無作法に音が鳴るだけで、スプーンには何も載せられなかった。てか長い、長すぎるのよスプーンが……!

 しばし私の奮闘ぶりを無言で見下ろし、ややあってヴィクターはため息をつく。

「……貸せ」

 スプーンを奪い取り、一匙すくって口元まで持ってきてくれた。驚く私に、「食べろ」と目顔でうながす。

 恐る恐る、スプーンに顔を寄せる。やわらかな鶏肉が、あっという間に口の中でとろけて消えた。

「ぱえっ」

(おいしいっ)

 ぱたぱた、ぱたぱた。

 しっぽを上下させてお礼を伝えれば、ヴィクターはまたもスプーンを動かしておかわりを私の口に突っ込んだ。
 そうして私が完食するまで黙々と、不平も漏らさず世話を焼いてくれる。おかしい、おかしいぞ。あのヴィクターが優しいだと……!?

 てれてれと耳を垂らす私を放って、ヴィクターはお盆を部屋の外に出した。すぐに戻ってきて、私の口をナプキンでぐいぐいぬぐってくれる。あ、コレお母さんだわ。

 私は目をきらきらさせて、彼の手をそっと握った。

「ぱぇ、ぽぇあぁ」

(ありがと、おかーさん)

 ビシッとデコピンされた。なぜわかる!

 痛むおでこをさすっていると、ヴィクターがむっつりと口を開く。

「……まだ雨が降っている。キースが言うには、おそらく数日はこの天気が続くだろう、と」

 そっかー。
 じゃあもう少しだけ、人間に戻るのはお預けだね。

 がっかりして座り込む私を、ヴィクターがちょんとつついた。バランスを崩して後ろに倒れ込んだ。おい怪力男。

 どうやらヴィクターにも想定外だったようで、バツが悪そうに視線を泳がせる。
 ちゃんと助けてよ、と仰向けのまま短い手を伸ばせば、ヴィクターがひょいと私を起こしてくれた。そのまま抱き上げ歩き出し、巣箱の中に落とされた。だからさぁ、荒いのよ! 扱いがさぁ!!

「ぱうぅ~! ぱぇぱぁっ!!」

「…………」

 巣箱の中からぎゃんぎゃん文句を言ってやる。

 ヴィクターは眉根を寄せると、深々とため息をついた。いや、ため息をつきたいのはこっちなんですけど!?

 鼻息荒く怒る私を、ヴィクターはもう一度抱き上げる。やり直すのかな、と思いきや、今度は私を自分のベッドの上に置いた。んん?

 ぱちくり瞬きする私を置いて、ヴィクターは部屋の明かりを消す。そうして、自身もベッドに潜り込んだ。

(ええ?)

「……ふん」

 じろりと私を睨みつけ、寝返りを打って背中を向けてしまう。疲れていたのか、そのまますぐに寝息を立て始めた。

(え? なんで、なんで?)

 頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだったが、睡魔には勝てない。恐る恐るヴィクターの枕に近づき、寄り添うようにして丸くなった。
 ふあ、とあくびが出る。部屋の暗さとヴィクターの寝息につられ、すぐに意識が遠のいていく。

(……お休み、ヴィクター)

 また明日。
感想 13

あなたにおすすめの小説

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました

七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。  「お前は俺のものだろ?」  次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー! ※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。 ※全60話程度で完結の予定です。 ※いいね&お気に入り登録励みになります!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました

六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。 「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」 彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。 アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。 時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。 すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。 そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。 その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。 誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。 「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」 「…………え?」 予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。 なぜ、落ちぶれた私を? そもそも、お会いしたこともないはずでは……? 戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。 冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。 彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。 美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。 そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。 しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……? これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

婚約破棄されたので田舎の一軒家でカフェを開くことにしました。楽しく自由にしていたら居心地が良いとS級冒険者達が毎日通い詰めるようになりました

緋月らむね
ファンタジー
私はオルレアン侯爵令嬢のエルティア。十四歳の頃、家の階段を踏み外して頭を打った衝撃で前世を思い出した。    前世での名前は坂島碧衣(さかしまあおい)。祖父母の引退後、祖父母の経営していた大好きなカフェを継ぐつもりでいたのに就職先がブラック企業で過労の挙句、継ぐ前に死んでしまった。そして、自分が息抜きでやっていた乙女ゲーム「星屑のカンパニー」の悪役令嬢、オルレアン侯爵令嬢エルティアに転生してることに気がついた。  エルティアは18歳の舞踏会で婚約破棄を言い渡される。それだけならまだしも、婚約者から悪役令嬢として断罪され、婚約破棄され、父親から家を追い出され、よからぬ輩に襲われて殺される。  前世だってやりたかったことができずに死んでしまったのに、転生してもそんな悲惨な人生を送るなんて、たまったもんじゃない!!それなら私は前世継ごうと思っていた祖父母のやっていたようなカフェを開いて楽しく自由な人生を送りたい。  そして私は王都と実家を飛び出して森が開けた自然豊かな場所で念願のカフェを侍女のシサとともに開くことができた。  森が開けた自然豊かな場所で楽しく自由にカフェをやっていたら、個性豊かなS級冒険者たちが常連として私のカフェにやってくるようになりました!