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坂元の推理

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 坂元は、柿を美味しそうに頬張る老紳士に近付いた。

「御主人様、初めまして。今日からメイドとして働かせて頂きます、坂元和子です」

 挨拶した坂元を一瞬だけチラリと見た老紳士。

「謎解きは、どうなっておる?」

 自己紹介はスルーされたのを感じた坂元。

「皆さん、頑張って謎解きしているようです」

「坂元さんだったかね、なぜ、ここに残っているんじゃ?」

 坂元が謎解きをしていない事が不可解そうな老紳士だったが、彼女はまだ初回ゆえに、解雇になる心配が無いのだと分かった。

「『あの人が冷たい』だけでは、新人の私には到底分かりかねますので」

 坂元が言うと、老紳士がワッハッハ笑いをした。

「正直なメイドじゃのう。新人というハンデが有るから、特別に教えてあげねばな。わしの『あの人』は、色白でのう、とても有能なんじゃが......」

 もっとヒントを聞き出せるかと思ったが、そこで老紳士は止めた。

「色白で有能な人なんですね!」

「うむ、それだけ教えたら、答えが分かったも同然じゃろ」

 坂元は、お手洗いに行く素振りをして、その情報をグルーブラインで使用人達に送った。
 使用人達は、そのヒントを提示しても、まだ悩み続けている様子をラインのメッセージで確認出来た。

 制限時間まではまだ1時間半は有るが、このヒントが有っても、使用人達には全く思い当たる節が無さそうだった。
 このままでは、制限時間になり、坂元以外の使用人達は全員解雇となるのだろうか?
 そうなると新人でありながら、新人ではなくなってしまうという微妙な立場になるのが困る坂元。
 
 ヒントを得ても、何の解決にもならず、途方に暮れていた時、取り敢えず、お手洗いまで来たついでに、用を足そうと思った坂元。

「これは......!!」

 猛暑が続いていたが、今朝は少し肌寒い朝だった。
 冷え性の坂元だから、気付けたのかも知れない。

「御主人様、私にも、『あの人は冷たかった』です!!だから、説き伏せて来ました」
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