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ヒロインってぶっ飛んだ思考してるくらいが可愛いと思いません?

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 エリスという名を与えられた姫。魔族の中でも眩いほどの輝きを持つ美貌。ありとあらゆる教養を、魔王という血筋から生まれた魔術のポテンシャル。国中の男が寄ってたかってハエのように寄ってくる毎日。しかし婚約関係を決して魔王は許しはしなかった。



 それは彼女の中にある特異な能力のせいだった。



 制限された条件であるならば、無限の魔力を生み出せるというのは世界を獲れるといっていい力だった。無限の戦力、無限の生産力、無限のエネルギー、もしもこの情報を漏れていたなら確実に戦争は起きていただろう。頂点に立つ魔王勢に蹂躙されるという結果で。

 

 故に彼女は秘匿されていた。結婚は全て取り潰し、可能な限り人目につかないように徹底された警備。そんな窮屈な日々を送っていた。

 

 そんな時だった。

 

 魔王の弟ランドによるクーデター。彼女にとっては初めての経験ばかりだった。子供の頃から祖父のように接してくれた父の右腕であるゾルディス。彼は私を逃がすために外に連れ出していた。それが最後の父の命令だったと話しながら。



 泣いた。追っ手から逃げながらも父の死を悲しまない時間はなかった。顔を合わすことはなかったが親からの愛情に気付いていた。戦争に利用できる自分を人目から隠して、周りの危険から遠ざけていたのだ。

 そんな父を誇りに思いながらもただ逃げることしか出来ない自分を憎く思ったこともあった。



 一月ほど追っ手から逃げ続けて、ゾルディスが道中で話していた鬼族の集落に向かうことになった。国境沿いにも近く、逃げるまでに匿ってくれるかもしれない、信頼できる男であると話すゾルディスを信じた。



 そして出逢った鬼族の長老は、体からにじみ出る覇気は恐ろしいものの、どこか優しげな視線を感じる。ほぼ全ての事情を話しゾルディスは嘆願する、助かる命にゾルディスは含まれていないのだ。それは嫌だと、そう思った瞬間。







 彼は来た。







「魔王としての責務も仕事も全て私が処理しますので、カイザー様は後ろ盾として我が国の魔王として君臨していただきたく思います。」

「つまりは今の生活のままでもいいってこと?護衛みたいな感じ?」

「はい、その通りです。ランド意外にも強力な魔王が私を求めて来るのでそれを追い返していただきたいのです。」



 それは提案だった。

 自分の身と引き換えに、更には国全てを譲るので守って欲しいという願い、という建前。エリスの中は違う。







(飼われたい!)







 ここで説明しよう。エリス姫の魔力無限生成が可能になる制限とは、発情していることである。そして魔王の血筋である彼女、本能的に強き雄を求めてしまう野性的な何かが目の前の12歳の少年に発情していた。





 そう、彼女は12歳の子供に一目惚れしたのだ。





 圧倒的なまでの肉体。周りを威圧する魔力。自身を濡れ濡れにした強者の視線。正直エリスは歓喜した。初めて尽くしの連続で、最も衝撃的だったのはカイザーだろう。

 魔王を拳一つでねじ伏せる少年など世界探しても彼だけだろう。そうエリスはチョロインレベルに恋に落ちた。体も堕ちた。これからも成長していけば更に私を啼かして…ゴホンッ。

 とにもかくにもそんな経緯からエリスとして最も大事なのは自身の隷属。彼の傍に仕えるということ、故についでに自分の国も天秤に乗せたまで。



「どうでしょうか?」

「うーん、玉座に座ってるだけでいいの?」

「はい、一日中何もしなくてもかまいません。」



 悩むカイザー。ここでエリスは一つのミスをしていた。カイザーは転生者、故にこのおいしい話を真実とそのまま受け入れるはずがなかった。

 

 むしろとてつもなく好条件である今の誘いに彼は警戒していた。何かある、と。

 こんなに美人でエロい体型をしている人が一般のオーガ(規格外)である自分を勧誘している、しかもこれ以上無いほど素敵な条件で。普通なら絶対に怪しむ。自分がいいように使われるような未来しか予想できなかった。



「その意見待った。」



 しかし、扉の外で聞き耳をたてている、もう一人の雌がいた。皆さん、覚えているだろうか?

 最初にカイザーに縛られて連れてこられた女性、魔王軍新四天王(笑)兄妹の妹の方である。初登場こそミステリアスな雰囲気が出た美少女であったはずだが、すでにその影の形もない。

 突然のキャラ変であった。扉を蹴り飛ばし入ってきた兄妹。ジャガーは慌てる。



「私なら主様のために、すべてを差し出せる。」



 甘い、と甘すぎるというほどにエリスを嘲る。お前の愛はそんなものかとあざ笑うように告げた。少し青筋が浮かぶエリス。



「主が本当に欲しいのは、ペット。」







(((((は?)))))







 言った本人以外、全員の心の声が被った。



 そして嬉々としながら、自分の顔を隠すマスクとフードを取り払うように告げた。



「馬鹿ッ!!おまっ…、あっ。」

「私みたいなペットが欲しくないですか?」



 フードの中から現れたのは、これまた美しい少女だった。もともと服の上からでもわかる見事なプロポーションだったが、そのベールをはがせば、よりその魅力があらわになるようにはじける。

 輝くような銀色の髪に、中性的だがその焼き付くような甘い視線が彼女をメスであることを証明している。いや、そんなことよりも、



 少し鋭い牙があった。

 尻尾があった。

 耳があった。







 獣耳娘でしたか。カイザーは心の中でグッドポーズをした。

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