短編小説集「春を待たずに」

片山行茂

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短編小説集「春を待たずに」片山行茂

【春を待たずに】

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~物語のはじめに~

我々は、死んだらどうなるんだろう?
逝ってしまった祖母や母の事を時折思います。
何か困った時、決断や勝負の時に
「お母ちゃん、お婆ちゃん、頼む!頑張るから見守っててよ!」
って、実は心の中でお願いしている僕です。
そして、本当に見守ってくれている気持ちにもなります。

そんな願望とも言える、お話を書いてみました。

あ、怪談では無いので、くれぐれも。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『春を待たずに、ワタシは逝ってしまった。』



長く深い沈黙が続き、暫くして誰かが、ワタシの手を握った事に気が付く。
ゆっくり目を開けると目の前には、優しく微笑む見覚えのある人がいた。

「あれ、ミツエお婆ちゃん?」
「おはよう、ユミちゃん。」
「え?何・・・ここは、どこ?」
「怖がらないで。ほら、あれをごらんなさい。」
「ん・・・お葬式?・・・あ、ワタシの写真。」
「そう・・・。」
「そうか。ワタシ、とうとう死んじゃったんだね・・・。」
「痛かったろう?・・・怖かったね?」
「ん~、何となく・・・辛かったような・・・。」
「そうだね。亡くなると、痛みも、苦しみも、悲しみも、全部を忘れられるからね。」
「そうなの?うん、確かに・・・へ~、死ぬって、こんな感じなんだ!?」
「有難いことに、ユリちゃんは、天国に導かれているからだよ。」
「え!天国??ワタシ天国に行けるの??」
「そう。だから、安心なさい。」
「そうかぁ、へー天国か、ふ~ん。・・・えっ!?だったら地獄もあるってこと??」
「そうよー!逆に地獄はね、痛みと苦しみと悲しみしかないらしいのよ、もう辛いコトばっかり!!その上、舌を抜かれたり、火で炙られたり、串刺しにされたり、それから、」
「いや!怖い!怖い!怖いから、地獄の話は、もうやめて💦」
「あら、ごめんなさい。」
「わー、ワタシ、天国で良かったー。」
「うふふ、本当によかったわね。」
「・・・そうかぁ、お葬式かぁ。あぁ、お母さん、ずっと泣いてるね。真っ赤な目をして・・・。」
「あの子も、ユミちゃんがこんなに早く逝ってしまうなんて、さぞ、辛いだろうねぇ。」
「うん・・・病気が発覚してたったの4ヶ月、ワタシまだ高2だもん。」
「あぁ、病気だと知った時は、お婆ちゃんも本当に辛かったのよ。」
「え?お婆ちゃん。それ、どぉいうこと?ワタシが病気だって分かった頃は、もう死んじゃってたでしょ?」
「そう。時々、ユミちゃんに逢いに来てたんだよ。」
「え?時々?」
「あぁ、アンタたちがお婆ちゃんを思い出してくれる度、その度に、逢う事が出来るんだよ。」
「え・・・あ!だから、今日も迎えに来てくれたの?」
「そう、ユミちゃんやお母さんが、お婆ちゃんを呼んでくれたの。」
「え、お母さんも?」
「そう、ユミをどうかお願いしますって。」
「そうかぁ・・・お婆ちゃんは、いつもワタシ達を、見守ってくれてたんだね・・・お?それって、お化けってコト?!ちょっと、怖いかも!」
「姿は、見えなかったんだから、怖くなかったでしょ?」
「うん、まぁ・・・確かに。あ!でも、タマが急に誰も居ないところに向かって・・・」
「そうそう、あのコたちは目が合うとねぇ」
「わ~・・・ちょっとホラーだ。」
「やめなさいよ、誰がホラーよ。あ、ただ、これには、少し条件があってね、」
「条件?」
「そう、お互いの心に、お互いが、咲き続ける事。」
「え?咲き続ける?・・・何か、難しいそう。」
「そうでも無いわよ。生きている時以上に、人は、亡くした人を、愛おしむものだから。」
「そっかぁ・・・母さんたちの心に、ワタシも咲き続けれるかなぁ?」
「あぁ、それは、絶対に大丈夫だよ。」
「うん・・・だと、良いんだけど・・・お父さんとは、なんかあんまだったしなぁ・・・」
「あら?そう?」
「あ!チィちゃんにヒロミ!吉岡先生やクラスの皆んなまで・・・来てくれたんだぁ!」
「暫くぶりだものねぇ。」
「うん、入院して最後の方は面会も出来なかったから・・・。」
「皆んな、凄く泣いてくれてるわね。」
「うん・・・ねぇ、少し、皆んなのそばに行っても良い。」
「はい、良いわよ。行きましょう。」
「皆んなに逢えるなんて、嬉しいなぁ。」
「・・・おや、誰か走って来たねぇ?!」
「えっ?!あ、アキラくん?!」
「あら、ユミちゃん、どぉしたの?そんな、隠れなくても!」
「やだ!アキラくんは、ちょっと、恥ずかしい!」
「ふふふ、真っ赤になって、ユミちゃんの初恋の男の子でしょ。」
「え?!そんな事まで知ってるの?」
「今年のバレンタインに、お母さんと一緒にフォンダンショコラを作ってたじゃない。」
「え~!!まさか!あの時も見てたの?!」
「ふふふ、あれは、お婆ちゃんからの直伝だったのよ。」
「あー!そうかそうか!お母さん、そんな事言ってた。」
「なかなか、上手く出来てたじゃない。」
「うん、お陰様です~・・・でも、あの時が、初めてだったなぁ、ちゃんと男の子にバレンタイン渡したの。」
「そう、素敵な思い出ねぇ。」
「うん・・・でも、あれからすぐに病気が分かって、入院しちゃったからなぁ・・・」

「おや!アキラくん、イケメンだねぇ。ユミちゃんの想いは、届いたのかしら?」
「やめてよ!もぉ!恥ずかしい!」
「いや!しかし、涙も見せずに、凛としてイイ男だ!」
「・・・うん。チィちゃんも、ヒロミもね、アキラくんが絶対にワタシに気があるって・・・」
「そうだと良いわねぇ。」
「一回だけね、下校の時に声掛けられて、2人で写真も撮ったんだよ、アキラくんの携帯だけど、あれ欲しかったなぁ・・・」
「アキラくんも、ユミちゃんが好きだったんじゃないの?」
「あれ?そう言うのは、分かんないだ?」
「そりゃそうよ。それは、生きてる時と同じ」
「なんだぁ・・・つまんないのぉ。」
「ふふふ。ほら、お父さんの挨拶が始まるよ、後ろで見ましょう。」
「あ、うん。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・お父さん、ボロボロだねぇ。もぉ、泣きすぎ!」
「だけど、ユミちゃんへ心から本当の愛が詰まってる。」
「そうかぁ、心で想っても、言葉にしなきゃ伝わらない。ワタシ本当に愛されていたんだ。」
「そう。想いは、見えないからね。でも、思い遣りは、カタチとして見える。ほら、皆んなを見てごらん。あなたの棺の周りを取り囲む、あの人たちを」
「わぁ、皆んな、お花と一緒に、アルバムとか写真とか、寄せ書きとか、いっぱいいっぱい入れてくれてるね!」
「嬉しいわねぇ。これで、ユミちゃんも、思い出たくさん持って行けるわよ。」
「いやぁ、でもあんまり近くでワタシの顔見ないで欲しいっなぁ、恥ずかしいよぉ。」
「ねぇ、ほら、アキラくんも来たわよ。」
「あ!うそ・・・」
「あら?」
「え、アキラくん、泣いてくれてるの?」
「そうだね。」
「あ!もしかして、あの時の写真!!」
「あ、あれが・・・」
「うん!アキラくんも、あの時の写真を持って来てくれてる。」
「へぇ、素敵。」
「えー、恥ずかしいよぉー」
「まぁ!ユミちゃん!」
「なに?もう終わった?」
「ちょっと、写真に『ずっと大好きでした』って書いてあるわよ!」
「え!!!!えっー!!!!ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!さすがにそれは、恥ずかしいって!」
「どぉしても、最後に伝えたかったのよ。ほら、誰よりも、1番泣いてるじゃない。」
「うん、嬉しい。仲良しになって、いっぱい話して、一緒に色んな景色、見たかったなぁ。」
「お婆ちゃんまで、貰い泣きしそうだわ。」
「うぅ。なんだかとっても、悲しくなって来たよ・・・」
「切ないねぇ。」
「でも、なんでろう?お婆ちゃん、ワタシ涙が出ないよ?!」
「そうだね・・・」
「え!こんなに寂しいのに?」
「ほら、外をごらんなさい。」
「あれ?雨?外は、夕立かな?」
「これは、最期の雨。」
「・・・最期の雨?」
「そう、ユミちゃんの心にある未練をすべて、この雨が洗い流すのよ。」
「未練を全て・・・洗い流す。」
「こうして、晴れて天国に行けるの。」
「そうか、これでいよいよ、皆んなと、お別れなんだね。」
「そう・・・だね。」
「幸せになって欲しいなぁ。お母さんもお父さんも、アキラくんも。」
「あぁ、ずっとそう思ってあげなさい。」
「お婆ちゃん・・・」
「ん?どうしたの?」
「咲き続けるかな?ワタシ、アキラくんやお母さんや皆んなの心の中で。」
「人は大抵の事は忘れてしまう。したことも、された事も。でも、大切な想い出や、大切な人の事は、きっと、ずっと覚えているから。」
「ホントに?」
「うん。アキラくんの涙を見てごらん。きっとユミちゃんの存在は、あの子の心にも咲き続ける、そして同じようにユミちゃんの心にも。」
「うん、ワタシはずっと皆んなを忘れない。」
「そう!だから、ユミちゃんから『さようなら』は、言わなくてもいいよ。」
「・・・そうか。わかった。」
「うん」

お母さん、お父さん、チィちゃん、ヒロミ、吉岡先生にクラスの皆んな、そしてアキラくん。
時々、ワタシを想い出して・・・そして、

『いつかどこかで、また・・・会おうね。』

おしまい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「春を待たずに」イメージソング
作詞作曲:片山行茂

あんなにワタシを苦しめた
悲しく辛い痛みは消えた
まるで昨日までが嘘みたいに
幸せな温もりがワタシを包む

あなたの「有難う」が 心に木霊する
あの日の笑顔が心に咲いている

最期にひとつワガママを言わせて
春を待たずに旅立つワタシを
どうか許してね そして忘れないで
あなたの心に咲き続けますように

さよならは言わないで行くよ
きっと2人が逢えると信じて
2度とその手に触れられなくても
大好きなあなたは幸せでいてね

あなたも時々は ワタシを想い出して
いつでも いつまでも あなたを忘れない

愛する人に「大好き」と言おう
大切な人に「ありがとう」と言おう
言葉にしなきゃ 想い伝わらない
逢えなくなったら手遅れだから

最期にひとつワガママを言わせて
春を待たずに旅立つワタシを
どうか許してね そして忘れないで
あなたの心に咲き続けますように

あなたの心に咲き続けますように
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みんなの感想(1件)

おみそ
2021.12.16 おみそ

電車で読んでたら涙が溢れて耐えきれませんでした😭
とっても良かったです✨

解除

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