ミュージカル「DREAMER」原作ノベライズ

片山行茂

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Prologue -悪い夢-

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遥遠くへと続く水平線、夜空には満天の星が瞬いていた。
白い満月は夜を照らし、水鏡にも揺ら揺らと浮かんでいる。

この大海原を優雅に進む、豪華客船のデッキに佇む男と女。
2人は、どこかよそよそしく会話もままならない。
スピーカーからはディキシーランドジャズが鳴り響き、あちこちで乗船客達の笑い声や話し声が聴こえる。

男は、ただずっと1人の女に見惚れていた。
潮風に揺れる髪、白いドレス、微笑む口元からこぼれる白い歯。
目の前にいるのは水彩画のように美しい女性だった。
そうしながらも男は「綺麗な人だな。でも、どこの誰だっけな?」と思いを巡らせている。
その美しい女がこちらに向き直り男に何かを言おうとした瞬間、すぐ背後で大きな爆発音が鳴り響いた。

驚いて振り返るとレストランの窓から大きな炎と黒煙が舞い上がっている。
レストランだけではない、船の至る所から炎が吹き出している。
警笛の響く船は次第に大きく傾き、先程まで優雅に過ごしていた乗船客たちもパニックを起こしだした。
悲鳴と怒声があちこちから聞こえてくる。
歪み閉ざされてしまった扉を叩く音、中からも叫び声が聞こえて来る。

男は女に向き直って叫んだ。
「大変だ!とにかく逃げましょう!早く救命ボートのほうへ!」
「いえ!・・・私は!子供たちを!」
男は女の手を引こうとするが、爆発音と共にまた大きく船は傾き、2人はそのまま海へと投げ出された。
「しまった!!」男は心の中でそう叫んだ。
海中でもがきながら何とか水面へ「ぶはっ!」と息を吸い込むと同時に

男は目を覚ました。

そこは、カビ臭く薄汚れた小さな部屋、時計は夜の9時を指している。
男の身体は寝汗のせいで、ぐしょぐしょに濡れていた。
枕元には、昨夜の飲みのミネラルウォーターが倒れ、その一帯も水浸しになっている。
うなされ踠いたはずみに、きっと倒したのだろう。

「・・・夢か?!良かった・・・」

ドンっ!ドンっ!ドンっ!
状況を確認する間も無く、アパートの扉を激しく叩く音がする。
「おい!!いるんだろ?!わかってんだぞ!!早く鍵開けろ!!」
男は、もう一度息を飲んだ。
「おい!こらっ!!よしざわっ!!居留守使ってると扉蹴破るぞ!!!」
扉の外には、チンピラ風の若めの男と白いスーツに身を纏った如何にもといった感じの男がいた。
付けっぱなしのラジオの音は廊下にも漏れている筈、今更消す訳にも行かない。
「やばい・・・今度は本気で死ぬかも??」
布団に包まり息を殺す男の名前は、吉澤令音(よしざわれのん)。
29歳のミュージシャン志望。
俗に言うフリーターのロクデナシだ。

ヤクザ風の男が今度は口を開く。
男の名前は、梁須丈二(はりすじょうじ)
コテコテの関西弁だった。
「吉澤はん、梁須金融です。アンタにお貸しした300万。今月分の返済期限もとっくに過ぎてますねん。分かってまんなぁ?ワシら、わざわざ引き取りに来ましたんやけど??」
それは6ヶ月前、令音が滞納を重ねたアパートの家賃や日々の生活費に膨れ上った借金を、一旦返済する為に闇金から借りた50万。
この半年余りで利息が莫大に跳ね上がり、今では300万まで膨れ上がってしまったらしい。

「おい、こらあっ!!吉澤!!」
ドーンっとまた大きな音がしてアパートの扉がしなるほどに振動している。
・・・やばい!殺される!!
叫び声と激しく扉を蹴破る音。
男たちは、遂に6畳一間の部屋に突入したが、そこに令音の姿は無かった。

アパートの窓が空いていてハンガーに掛けられたタオルが風で揺れている。
「おい!ミノルっ!!」
梁須丈二が叫ぶと、弟分のミノルは「へい!」と引き返し階段を駆け降りて、令音の足どりを追った。

散らかった部屋には沢山の音楽CDやDVDが散乱している。
壁際にはフォークギターが2本立て掛けられ、散らばったノートや紙切れには、「C」だの「G」だの「F」だの、いくつものアルファベットや記号が並び、得体の知れない言葉がたくさん書き殴られている。
丈二はひとつのノートを拾いあげ、声に出してそれを読んだ。

"どうしようもない日々に、やり切れない悔しさを・・・"

「はん?!しょうもない!やり切れへんのはこっちじゃ!」
そういってノートを床に放り投げ、2階の窓から辺りを見渡す。
「おい!ミノル!」
「社長、すんません!あの野郎もう何処にもいません!」
令音の逃げ足は、予想以上に早かったようだ。
「舐め腐りやがって、あのボケっ!!」
そう言いながら丈二は、1本のギターを手に取った。
夜空には満月が浮かび、月明かりが部屋を照らしていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【DREAMER】メインテーマ

Everyone has a dream.
If you believe, it will come true.
Everyone has a hope.
If you believe, it will be shining.

運命という名の海で ただ1人もがき続けて
いつ何処に流れ着くのか 今は分からないけど

寂しさに震えた時も 口ずさむこのメロディで
興奮が呼び戻されて 今を塗り替えていく

壊れかけた羅針盤(コンパス)に吹き抜ける風

夢を見ました 汚れのない子供ように
遥か遠く目指して今心に拡がる Story
夢を見ました この心が弾けるように
奇跡起こる気がして思い通り煌くFantasy

Everyone has a dream.
If you believe, it will come true.
Everyone has a hope.
If you believe, it will be shining.

潮騒に言葉消されて 届かない心の叫び
頬伝う涙の跡も いつか笑えるように

水平線の彼方まで 飛び越えて行け

夢を見ました 蒼く光る大きな空に
未来の地図描いて期待に胸膨らむSailing
夢を見ました 胸に抱いた永遠のお守り
あの日願いを込めてそっと秘めた消えないMemories

Everyone has a dream.
If you believe, it will come true.
Everyone has a hope.
If you believe, it will be shining.

確かに 
夢を見ました 汚れのない子供ように
遥か遠く目指して今心に拡がる Story
夢を見ました この心が弾けるように
奇跡起こる気がして思い通り煌くFantasy

夢を見ました 蒼く光る大きな空に
未来の地図描いて期待に胸膨らむSailing
夢を見ました 胸に抱いた永遠のお守り
あの日願いを込めてそっと秘めた消えないMemories

Everyone has a dream.(夢を見ました)
If you believe, it will come true.
Everyone has a hope.(夢を見ました)
If you believe, it will be shining.

・・・・・Everyone has a dream!
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