【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン

カムナ リオ

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1st round

第16話「告白ドッキリ 如月心乃香sideーその10」

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七月十三日 日曜日

 祭りの当日は見事に晴れて、待ち合わせの駅前は沢山の人々で賑わっていた。皆浮かれている。いや本来祭りというものは、そういうものなのかもしれない。

 私は慣れない下駄で歩きながら八神の姿を探した。来ていないかもしれない。ふっとそう思った。こんなめかし込んだ自分をどこかから見て笑っているかもしれない。それでも告白ドッキリは彼らからしたら成功と言える。

 ここにきて私は少し弱気になっていた。そんな時、明るい髪の色が私の視界に入った。私服姿だが間違いなく八神だ。普段と違うその八神の姿に、私は少し動揺してしまった。いや大丈夫だ。気合いの入り方なら絶対自分の方が上だ。

「八神君、お待たせ」

 八神はその声に反応して、おもむろに振りかえってきた。次には唖然とした様子で、私の姿を見て立ち尽くす。いつもと違う自分の姿に驚いているのか、引いているのか分からない。

 しばらくして八神が「じゃ、行こうか」と促してきた。自分の浴衣姿に対するコメントはなかった。

 ガッカリと言うか、告白ドッキリを仕掛けるなら、ここは嘘でも誉めておくところではないか。私はやはり現実とは厳しいものだと、折角自分を着飾って送り出してくれた、母親と姉に申し訳なく思った。

 少し着飾ったくらいで調子に乗っていた。自分のような弱者が、世界を変えられるわけがないのだ。

***

 お祭りなんか久しぶりだった。正直自分は人がゴミゴミと密集するところが嫌いだ。こんなことがなければ絶対来なかっただろう。

 祭りが好き、という人たちの気がしれなかった。ただそれを悟られないように私は「凄い人だね」とわざとおどけて見せた。
 
 慣れない下駄のせいで私はふらついてしまった。斗哉が腕を掴んで支えてきた。体に触れられて、ドキッとした。私は動揺を悟られないように「ごめん、歩き慣れなくって」と、ハハハと愛想笑いで何とか返した。八神はそのまま私の手を握ってくる。

「あ、いや、危ないからさ」

 流れるように手を握られて私は言葉も出なかった。まるで優しい紳士気取りで、この後こいつは私を突き放し、笑者にするのだと思うと、怒りでどうにかなりそうだった。

 悔しい、絶対負けたくないっ。

 私は、負けじと八神の手を握り返した。

つづく
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