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3rd round after
第69話「三周目〜復路〜」
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復路も往路とほぼ変わらないルートで行けそうで、今日中に地元に着けそうだった。来た時より電車の客は少なかったし、新幹線も普通に座ることができて、斗哉はホッとした。
昨日眠れなかったことも手伝って、心身共に疲れがきている。地元の神社に黒猫を送り届けて、それで問題が本当に解決するのかと言う不安もあった。
でも信じるしかない。
斗哉は行きとは違い、大人しい心乃香を見遣った。こいつもやっぱり疲れたよなと、少し心配になった。なぜなら行きにあれだけ大量に駅弁やら、アイスやら、シェイクやら食べたり飲んだりしていたいのに、復路はまったくそんな素振りがないのだ。
しかも一切何も喋らず、車窓の外をずっと眺めている。斗哉は何か話し掛けようかと思ったが、何を話していいか分からなかった。
きっと神殿で白から聞いた話に、思うところがあるんだろうなと斗哉は思った。
ふっと心乃香がこちらを見た。目があって斗哉はドキッとした。心乃香が静かに口を開く。
「……なに?」
「いや、別に。その、何考えてるのかなって」
何でこんな気持ちになるんだろうと、斗哉は急に照れ臭くなった。
「ずっと、人が『消えた』順番が気になってたんだよ、私」
「えっ」
「まさか、大切に思ってる順に消えるなんて。『親』より先に消えるとか、あんたにとって五十嵐と菊池って、本当に大切な友達なのね」
斗哉は思いがけないことを言われて、目を瞬かせた。
「いや、特段そんな風に考えたことなかったけど」
「中学生男子にとっては、親は鬱陶しい存在って言うことか。思春期拗らせてるなー」
ハハハと、心乃香は痛いものを見るかの如く笑った。
「そんなんじゃねーよっ。ただ今思うと、オレ、足怪我して部活辞めた時、スゲー腐ってて、アイツらが居てくれて助かったっていうか……」
「今も結構腐ってると思うけど。というか、あの二人のせいで腐り方、悪化したんじゃない?」
斗哉は心乃香のその指摘に、身をつまされる思いだった。
「いい男ってのは、あんな風に陰で女子の悪口、言ったりしないのよ」
「……それは、本当ごめん」
本当にそれは悪かった。全面的に謝る。それに今はもう、彼女のうだつが上がらないなんてまったく思ってない。心の中でそう呟きながら斗哉は押し黙った。
「でもあんたがそんなに大切に思ってる友達なら、根はそんなに悪い奴らじゃ、ないのかもね……」
そう消えいるように呟くと、心乃香は静かに目を閉じた。
「如月?」
心乃香はその呼び掛けには反応せず、スースーと寝息を立て始めた。
寝ちゃったのか。膝に眠った黒猫を乗せ、眠る少女。ちょっと絵になるなと斗哉は思った。
(あっ)
さっきの『自分が大切だと思ってる順に消える』という法則が、急に斗哉の頭をよぎる。
大切だと思っている順に消える?
黒猫は代償に「如月心乃香」が持っていかれたのではと言っていた。
どうしてなんだろう。大切だなんて微塵も思っていなかった。むしろ目の上のたんこぶだ。彼女にされた仕打ちを肉肉しく思っていたはずなのに。
確かに自分の中で「もの凄く嫌な奴」として大きな存在ではあったかもしれないが。
そう考えながら、斗哉は隣でスースーと寝息をたてる心乃香の姿をじっと見つめた。
確かに彼女が消えてせいせいするどころか、必死になって彼女を取り戻そうとしていた。自分にとってあの感情は、大切な自分の一部だったのは間違いない。
そして『二回目』も彼女が消えていた。
斗哉は再び横で眠る少女を見た。目頭が熱くなって涙が溢れそうになる。
(オレの一番、大切な……)
もうすぐこの旅も終わる――
始めは、心乃香が着いてきてどうなることやらと思ったけど、彼女が着いてきてくれて、一緒に居てくれて、本当に良かったと思いながら、斗哉も電車の心地よい振動の中、微睡んでいった。
つづく
昨日眠れなかったことも手伝って、心身共に疲れがきている。地元の神社に黒猫を送り届けて、それで問題が本当に解決するのかと言う不安もあった。
でも信じるしかない。
斗哉は行きとは違い、大人しい心乃香を見遣った。こいつもやっぱり疲れたよなと、少し心配になった。なぜなら行きにあれだけ大量に駅弁やら、アイスやら、シェイクやら食べたり飲んだりしていたいのに、復路はまったくそんな素振りがないのだ。
しかも一切何も喋らず、車窓の外をずっと眺めている。斗哉は何か話し掛けようかと思ったが、何を話していいか分からなかった。
きっと神殿で白から聞いた話に、思うところがあるんだろうなと斗哉は思った。
ふっと心乃香がこちらを見た。目があって斗哉はドキッとした。心乃香が静かに口を開く。
「……なに?」
「いや、別に。その、何考えてるのかなって」
何でこんな気持ちになるんだろうと、斗哉は急に照れ臭くなった。
「ずっと、人が『消えた』順番が気になってたんだよ、私」
「えっ」
「まさか、大切に思ってる順に消えるなんて。『親』より先に消えるとか、あんたにとって五十嵐と菊池って、本当に大切な友達なのね」
斗哉は思いがけないことを言われて、目を瞬かせた。
「いや、特段そんな風に考えたことなかったけど」
「中学生男子にとっては、親は鬱陶しい存在って言うことか。思春期拗らせてるなー」
ハハハと、心乃香は痛いものを見るかの如く笑った。
「そんなんじゃねーよっ。ただ今思うと、オレ、足怪我して部活辞めた時、スゲー腐ってて、アイツらが居てくれて助かったっていうか……」
「今も結構腐ってると思うけど。というか、あの二人のせいで腐り方、悪化したんじゃない?」
斗哉は心乃香のその指摘に、身をつまされる思いだった。
「いい男ってのは、あんな風に陰で女子の悪口、言ったりしないのよ」
「……それは、本当ごめん」
本当にそれは悪かった。全面的に謝る。それに今はもう、彼女のうだつが上がらないなんてまったく思ってない。心の中でそう呟きながら斗哉は押し黙った。
「でもあんたがそんなに大切に思ってる友達なら、根はそんなに悪い奴らじゃ、ないのかもね……」
そう消えいるように呟くと、心乃香は静かに目を閉じた。
「如月?」
心乃香はその呼び掛けには反応せず、スースーと寝息を立て始めた。
寝ちゃったのか。膝に眠った黒猫を乗せ、眠る少女。ちょっと絵になるなと斗哉は思った。
(あっ)
さっきの『自分が大切だと思ってる順に消える』という法則が、急に斗哉の頭をよぎる。
大切だと思っている順に消える?
黒猫は代償に「如月心乃香」が持っていかれたのではと言っていた。
どうしてなんだろう。大切だなんて微塵も思っていなかった。むしろ目の上のたんこぶだ。彼女にされた仕打ちを肉肉しく思っていたはずなのに。
確かに自分の中で「もの凄く嫌な奴」として大きな存在ではあったかもしれないが。
そう考えながら、斗哉は隣でスースーと寝息をたてる心乃香の姿をじっと見つめた。
確かに彼女が消えてせいせいするどころか、必死になって彼女を取り戻そうとしていた。自分にとってあの感情は、大切な自分の一部だったのは間違いない。
そして『二回目』も彼女が消えていた。
斗哉は再び横で眠る少女を見た。目頭が熱くなって涙が溢れそうになる。
(オレの一番、大切な……)
もうすぐこの旅も終わる――
始めは、心乃香が着いてきてどうなることやらと思ったけど、彼女が着いてきてくれて、一緒に居てくれて、本当に良かったと思いながら、斗哉も電車の心地よい振動の中、微睡んでいった。
つづく
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