【完結】遠くて近きは幼なじみ

カムナ リオ

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第一章

第3話「嵐の夜」

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『今から行く』のパワーワードが衝撃すぎて、翔太は混乱していた。

 まさかそんな事と思いつつ、自分のよく知る昔の華なら、やりかねないと思った。翔太は慌てて自室から飛び出して、一階の玄関に向かった。

 玄関のドアを開けた瞬間、もの凄い風と雨が吹き込んで来た。空に稲光が走ってる。
 翔太は慌てて、着けていたへッドホンを外した。外がこんなになってるなんて、気が付かなかった。

(……ちょっと、待て! あいつ、この雨の中来る気なの⁉︎)

 そうだと、翔太はハッと気が付いた。
 華に『今外に出るな』とメッセージを打とうと思った時――

 目の前の道から、人影が傘もささずに、もの凄い勢いで走って来た。

 普段学校で見かける制服姿とは、かけ離れているが、間違いなく仁科 華だった。

 華は浅川家の軒先に飛び込むと、息を切らせながら眼鏡を外し、着ていたパーカーの裾で、レンズの雨粒を拭いた。

(……あ、眼鏡)

 華は学校では、眼鏡なんて掛けていなかった。
 小さな頃も、掛けていた記憶がない。
 こいつ目が悪くなったんだなーと、ぼんやり思っていた翔太に、華は眼鏡を掛け直すと、冷静だが、早めの口調で切り出した。

「ここでいいから、翔……浅川君の家のwifiのIDとパス教えて」

 華は軒先の下でしゃがみ込みながら、懐から出した携帯ゲーム機の、ネット設定をしようとしていた。

(……こいつ、何やってんだ?)

 翔太は訳が分からなすぎて、暫くボーと華を眺めていたが、もの凄い雷の轟音が辺りに響くと、突風と雨が二人に吹き付けて来た。

「ちょっ、とにかく家入れ!」

 翔太は華の腕を掴むと、急いで家の中に駆け込んだ。

 
***

 ゲームのダウンロードを、祈りながら見守っているずぶ濡れの華の頭に、バスタオルを掛けて、翔太は呆れた様に華を嗜めた。

「ゲームのダウンロードって……お前、馬鹿じゃないの⁉︎」
「……だって、家のwifi壊れちゃったんだもん」
「だって、じゃねえよ!」
「でも、翔……浅川君の家のネット回線、借りられて助かったよ。ダメだったら、二駅先のファミレス行こうと思ってたし」

 そこまで聞いて、翔太は更に呆れと怒りが湧き上がって来た。

「……この雷と雨の中⁉︎  どうかしてるだろ⁉︎  ……てか、あのファミレス2時で閉まるだろ。ダウンロード終わんないよ」
「え?」
「これ、レジハンのデータだろ? 俺落とすのに1時間くらい掛かったし……」

 それを聞いた華が、食い気味に翔太に迫った。
 翔太は、あまりの華の勢いに後ずさった。

「浅川君もレジハンやるの⁉︎」
「やるけど……今日は落としただけ」
「一緒にやろうよ‼︎」

 キラキラと顔を寄せて迫って来る華は、翔太に拒否権を与えなかった。


つづく
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