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第一章
第2話「悪魔の囁き」
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華はスマホを握りしめて、暫く考えていた。
小さな頃、仲が良かったと言っても、今はほぼ交流の無くなってしまった幼馴染――浅川 翔太。
以前学校行事の為に、たまたま流れで連絡先を交換した事があったが、一度も連絡した事はなかったし、連絡が来る事もなかった。
ほぼ喧嘩別れの様になってしまった、小学生時代を思い出した。
華はあの頃の事を思い出すと、悔しい様な悲しい様な気持ちになるので、なるべく浅川翔太の事は、考えない様に生きて来た。
普段のまともな状態なら、浅川翔太に連絡しようなどと思わなかった。別の誰かに連絡するか、そもそも連絡などしないで、ゲームのパッケージ版が届くまで待てただろう。
ただ、華はこの時まともではなかった。「魔が差した」というやつである。華の奥底に眠っていた、過去の沸々とした痛みが、無意識に後押ししたのだ。
(もう、寝てるかもしれないし、気が付かないかもしれない。そもそも私からの着信には、出ないかもしれない……)
(……一度だけ、一度だけかけてみよう)
華は、一大決心でメッセージアプリのボタンを押して、祈りながらスマホの前に正座した。
***
(……あー! 終わった~!)
浅川翔太は課題を終わらせて、椅子に座りながら背中を伸ばした。
その時、充電中だったスマホの画面が光った。
こんな時間に誰だよと、面倒くさそうに画面を覗き込んだ。
ロック画面に『仁科 華』の名前――
意外すぎて、呼吸が止まりそうになった。
(……仁科 華? なんで?)
小さな頃は仲が良かったが、最近はほぼ、交流なんてなかった。
それに、彼女の事を思い出すと、胃の辺りがキリキリして来るのだ。
正直、もう関わりたくなかった。
翔太は暫くロック画面を見つめていたが、ふっと画面が暗くなった。
画面をタッチして、省エネモードを解除する。ロック画面の華のメッセージは「まだ起きてる?」という短いものだった。
(……何で? 今頃? どういうつもりだ、これ)
この文章だけでは、翔太の疑問は解けなかった。翔太は暫く思案していたが、嫌な考えが頭にフッと浮かんだ。
(短い文章……なんか、折半詰まった感じがする。もしかして、家で何かあったのか?)
翔太の血の気が、スーと引いた。
さっき、地響きの様な振動があった。
もしかしたら、華やその家族に、何かあったのかもしれない――
いくら関わりたくないと言っても、知り合いやその家族に、何かあったのかもしれないのに、無視するほど鬼じゃない。
翔太は急いで、ロック画面を解除した。
***
華は10分経っても返信がなかったら、ファミレスに向かおうと、上着を着かけた時――
スマホの画面に、メッセージの着信があった。
差出人は『浅川翔太』
(……うっそ‼︎)
華は慌てて、ロック画面を解除した。
メッセージは短く「起きてるけど、何?」と言うものだった。それで十分だった。
***
メッセージを送った直後、すぐ華から返信が来たので、翔太は驚いた。
(早すぎない? これ、本当に何かあったのかも……)
心配になってすぐにメッセージを確認した。
『浅川君の家のネット回線って生きてる?』
(……え? どういう事?)
翔太は意味が分からず混乱した。仁科家で今、何が起こっているんだろう?
正直何が何だか分からなかったが、翔太は一拍思考を巡らせると、
『生きてるけど』
と短く返信した。
スマホ画面に注目していると、秒で返信が返って来る。
『ネット回線、貸して欲しいんだけど』
(……は⁉︎)
どういう事だ? と考えている間に、次のメッセージが来た。
『一生のお願い!』
その切迫詰まった勢いに負けて、翔太は華に返信した。
『いいけど』
何なんだよ、一体……と翔太はスマホの画面を閉じようとしたが、更に華から返信があった。
『今から行く』
(……え?)
翔太は、一瞬意味が分からず、その場で固まった。
え? ……今から行くってどういう事?
今から……
翔太はスマホの時計を確認した。もう深夜1時近かった。
(……ちょっと待って、あいつ今から、うちに来るって事⁉︎)
つづく
小さな頃、仲が良かったと言っても、今はほぼ交流の無くなってしまった幼馴染――浅川 翔太。
以前学校行事の為に、たまたま流れで連絡先を交換した事があったが、一度も連絡した事はなかったし、連絡が来る事もなかった。
ほぼ喧嘩別れの様になってしまった、小学生時代を思い出した。
華はあの頃の事を思い出すと、悔しい様な悲しい様な気持ちになるので、なるべく浅川翔太の事は、考えない様に生きて来た。
普段のまともな状態なら、浅川翔太に連絡しようなどと思わなかった。別の誰かに連絡するか、そもそも連絡などしないで、ゲームのパッケージ版が届くまで待てただろう。
ただ、華はこの時まともではなかった。「魔が差した」というやつである。華の奥底に眠っていた、過去の沸々とした痛みが、無意識に後押ししたのだ。
(もう、寝てるかもしれないし、気が付かないかもしれない。そもそも私からの着信には、出ないかもしれない……)
(……一度だけ、一度だけかけてみよう)
華は、一大決心でメッセージアプリのボタンを押して、祈りながらスマホの前に正座した。
***
(……あー! 終わった~!)
浅川翔太は課題を終わらせて、椅子に座りながら背中を伸ばした。
その時、充電中だったスマホの画面が光った。
こんな時間に誰だよと、面倒くさそうに画面を覗き込んだ。
ロック画面に『仁科 華』の名前――
意外すぎて、呼吸が止まりそうになった。
(……仁科 華? なんで?)
小さな頃は仲が良かったが、最近はほぼ、交流なんてなかった。
それに、彼女の事を思い出すと、胃の辺りがキリキリして来るのだ。
正直、もう関わりたくなかった。
翔太は暫くロック画面を見つめていたが、ふっと画面が暗くなった。
画面をタッチして、省エネモードを解除する。ロック画面の華のメッセージは「まだ起きてる?」という短いものだった。
(……何で? 今頃? どういうつもりだ、これ)
この文章だけでは、翔太の疑問は解けなかった。翔太は暫く思案していたが、嫌な考えが頭にフッと浮かんだ。
(短い文章……なんか、折半詰まった感じがする。もしかして、家で何かあったのか?)
翔太の血の気が、スーと引いた。
さっき、地響きの様な振動があった。
もしかしたら、華やその家族に、何かあったのかもしれない――
いくら関わりたくないと言っても、知り合いやその家族に、何かあったのかもしれないのに、無視するほど鬼じゃない。
翔太は急いで、ロック画面を解除した。
***
華は10分経っても返信がなかったら、ファミレスに向かおうと、上着を着かけた時――
スマホの画面に、メッセージの着信があった。
差出人は『浅川翔太』
(……うっそ‼︎)
華は慌てて、ロック画面を解除した。
メッセージは短く「起きてるけど、何?」と言うものだった。それで十分だった。
***
メッセージを送った直後、すぐ華から返信が来たので、翔太は驚いた。
(早すぎない? これ、本当に何かあったのかも……)
心配になってすぐにメッセージを確認した。
『浅川君の家のネット回線って生きてる?』
(……え? どういう事?)
翔太は意味が分からず混乱した。仁科家で今、何が起こっているんだろう?
正直何が何だか分からなかったが、翔太は一拍思考を巡らせると、
『生きてるけど』
と短く返信した。
スマホ画面に注目していると、秒で返信が返って来る。
『ネット回線、貸して欲しいんだけど』
(……は⁉︎)
どういう事だ? と考えている間に、次のメッセージが来た。
『一生のお願い!』
その切迫詰まった勢いに負けて、翔太は華に返信した。
『いいけど』
何なんだよ、一体……と翔太はスマホの画面を閉じようとしたが、更に華から返信があった。
『今から行く』
(……え?)
翔太は、一瞬意味が分からず、その場で固まった。
え? ……今から行くってどういう事?
今から……
翔太はスマホの時計を確認した。もう深夜1時近かった。
(……ちょっと待って、あいつ今から、うちに来るって事⁉︎)
つづく
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