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第五章
第17話「実験-中編」
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委員会の集まりが終わった頃、いつもならまだ明るい時間なのに、雨のせいで外は薄暗かった。
華は、急いで教室に鞄を取りに行った。
教室にはもう誰も居らず、電気も消えていて薄暗かった。教卓の上に日誌が置いてあり、華は中を確認した。翔太の几帳面な字で、もう日誌は書き終わっていた。
翔太の机を確認すると、まだ鞄が掛けてあった。きっとゴミ捨てに行ってくれたのだ。
華はフッと、こんな風に翔太を避けている自分が、改めて情けなくなった。
(……何してるんだろう、私)
***
翔太は空のゴミ箱を持って、教室にて戻って来た。
下駄箱へ向かうついでに日誌を職員室に置いて来ようと、自分の机に掛けてある鞄を取ろうとして、ギョッとした。
誰かいる?
教室はもう薄暗くて、誰がいるのか分からなかった。恐る恐る近づいてみる――
そこには華が、机に突っ伏して眠っていた。
翔太は一瞬声を掛けるか迷ったが、流石にこのままにしておかないと声を掛けた。
「……華?」
全く起きる気配がない。
翔太は、どうしたもんかと首ををかいた。
***
華が目を覚ますと、周りは大分暗くなっており、華は慌てて飛び起きた。
頬が痛い……机に突っ伏して寝ていたせいで、触ると痕が付いていた。
目の前に気配があり、華は心臓が止まりそうになった。
そこにはよく見知った、幼馴染の寝顔があった。
華は何故だか、その寝顔に心が締め付けられた。自然と手が吸い寄せられる様に、彼の頬を撫でようとした。
――その時、うっと翔太が目を開けた。
華は慌てて、手を引っ込めた。
(何? 今の?)
華は自分の行動に困惑した。
違う、そんなんじゃない――
華は誰かに言い訳した。
「やっべ、俺、寝ちゃってた?」
「……そう、みたい」
「……」
「……」
「もう、帰ろうぜ。送って行くよ」
華はその一言に何故だか心が騒ついた。何なの、さっきから私……どうしてこんな気持ちになるんだろう。
翔太の言動に一喜一憂している様で、華はそれが、物凄く居心地の悪いものに感じた。
「……いい」
「……いいって、お前……危ないだろ?」
「大丈夫、危なくない」
華はそう言い捨てて、鞄を掴んで教室を立ち去ろうとしたが、翔太に腕を掴まれた。
「何、怒ってるんだよ」
「怒ってない!」
翔太は、はあっと深く溜息を吐くと呆れた様に、とにかく送って行くからと、華の手を離さなかった。
それが華の心を更に逆撫でた。
「何? 私が女だから、危ないって言ってるの?」
翔太はその一言に目を丸くした。間髪入れずに、だってそうだろと言い放った。
華は翔太との成長の差を感じて、居たたまれなくなった。子供のままの気持ちを持ち続ける事は、そんなにいけない事なのか?
一般的に考えて、翔太が正しいのだろう。素直に送って貰えばいい。
でも、今の華にはそれをどうしても、素直に承諾出来なかった。
もし、翔太のこの優しさが、純粋なものではなくて、僅かでも下心から来るものだったら、どうしよう――
何も信じられなくなる――
華に、光から言われた、あの悪魔の囁きが蘇った。
絶対に違う――
「翔ちゃんって、私の事どう思ってるの?」
突然の問いかけに、翔太はビックリして掴んでいた華の手を離した。
「ど、どうって……」
翔太はその問いかけに、答えられなかった。
よく分からないというか、なるべく考えない様にしてたからだ。その曖昧さを華に見透かされた様な気がした。
「私は、友達以外に感じてない……と思う」
華のその告白に、翔太は頭が真っ白になった。そんな事は昔から、分かっていたのに、はっきりと華の言葉で告げられると――
心が握りつぶされる様な気がした。
「……翔ちゃんも、『好き』とかじゃないんじゃない?」
その華の問いかけに、翔太は新たな衝撃を受けた。そうだよ、そんなんじゃないといいと、心の何処かで思ってた。思ってた筈だ。
「だから、試してみようよ」
「え?」
「キス……してみない?」
そう提案する華の顔は、怖いほど真剣だった。
つづく
華は、急いで教室に鞄を取りに行った。
教室にはもう誰も居らず、電気も消えていて薄暗かった。教卓の上に日誌が置いてあり、華は中を確認した。翔太の几帳面な字で、もう日誌は書き終わっていた。
翔太の机を確認すると、まだ鞄が掛けてあった。きっとゴミ捨てに行ってくれたのだ。
華はフッと、こんな風に翔太を避けている自分が、改めて情けなくなった。
(……何してるんだろう、私)
***
翔太は空のゴミ箱を持って、教室にて戻って来た。
下駄箱へ向かうついでに日誌を職員室に置いて来ようと、自分の机に掛けてある鞄を取ろうとして、ギョッとした。
誰かいる?
教室はもう薄暗くて、誰がいるのか分からなかった。恐る恐る近づいてみる――
そこには華が、机に突っ伏して眠っていた。
翔太は一瞬声を掛けるか迷ったが、流石にこのままにしておかないと声を掛けた。
「……華?」
全く起きる気配がない。
翔太は、どうしたもんかと首ををかいた。
***
華が目を覚ますと、周りは大分暗くなっており、華は慌てて飛び起きた。
頬が痛い……机に突っ伏して寝ていたせいで、触ると痕が付いていた。
目の前に気配があり、華は心臓が止まりそうになった。
そこにはよく見知った、幼馴染の寝顔があった。
華は何故だか、その寝顔に心が締め付けられた。自然と手が吸い寄せられる様に、彼の頬を撫でようとした。
――その時、うっと翔太が目を開けた。
華は慌てて、手を引っ込めた。
(何? 今の?)
華は自分の行動に困惑した。
違う、そんなんじゃない――
華は誰かに言い訳した。
「やっべ、俺、寝ちゃってた?」
「……そう、みたい」
「……」
「……」
「もう、帰ろうぜ。送って行くよ」
華はその一言に何故だか心が騒ついた。何なの、さっきから私……どうしてこんな気持ちになるんだろう。
翔太の言動に一喜一憂している様で、華はそれが、物凄く居心地の悪いものに感じた。
「……いい」
「……いいって、お前……危ないだろ?」
「大丈夫、危なくない」
華はそう言い捨てて、鞄を掴んで教室を立ち去ろうとしたが、翔太に腕を掴まれた。
「何、怒ってるんだよ」
「怒ってない!」
翔太は、はあっと深く溜息を吐くと呆れた様に、とにかく送って行くからと、華の手を離さなかった。
それが華の心を更に逆撫でた。
「何? 私が女だから、危ないって言ってるの?」
翔太はその一言に目を丸くした。間髪入れずに、だってそうだろと言い放った。
華は翔太との成長の差を感じて、居たたまれなくなった。子供のままの気持ちを持ち続ける事は、そんなにいけない事なのか?
一般的に考えて、翔太が正しいのだろう。素直に送って貰えばいい。
でも、今の華にはそれをどうしても、素直に承諾出来なかった。
もし、翔太のこの優しさが、純粋なものではなくて、僅かでも下心から来るものだったら、どうしよう――
何も信じられなくなる――
華に、光から言われた、あの悪魔の囁きが蘇った。
絶対に違う――
「翔ちゃんって、私の事どう思ってるの?」
突然の問いかけに、翔太はビックリして掴んでいた華の手を離した。
「ど、どうって……」
翔太はその問いかけに、答えられなかった。
よく分からないというか、なるべく考えない様にしてたからだ。その曖昧さを華に見透かされた様な気がした。
「私は、友達以外に感じてない……と思う」
華のその告白に、翔太は頭が真っ白になった。そんな事は昔から、分かっていたのに、はっきりと華の言葉で告げられると――
心が握りつぶされる様な気がした。
「……翔ちゃんも、『好き』とかじゃないんじゃない?」
その華の問いかけに、翔太は新たな衝撃を受けた。そうだよ、そんなんじゃないといいと、心の何処かで思ってた。思ってた筈だ。
「だから、試してみようよ」
「え?」
「キス……してみない?」
そう提案する華の顔は、怖いほど真剣だった。
つづく
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