【完結】遠くて近きは幼なじみ

カムナ リオ

文字の大きさ
22 / 23
第六章

第22話「華の後悔」

しおりを挟む
(あああああああ……)

 華は、机につっぷして項垂れた。
 やってしまった……定期テストの結果は散々で、母親に烈火の如く怒られた。
 当分ゲームは禁止だろう。

(……でも、いいか……何もする気、起きないし……)

 テストの結果が、散々だった理由は分かっていた。信じられないくらいに、勉強に集中出来なかった。こんな事は初めてだった。
 自分から、集中力を取ったら何もないのに。

 全ては因果応報だと華は思った。
 もし、あの日をやり直せるならと頭をよぎったが、そんな事は現実では無理な事は分かりきってる。ここはゲームの世界じゃない。リセットなんか出来ない。

 ずっと、あの日の翔太の事が忘れられない。
 忘れたい……知らなかった頃に戻りたいと、華は何度も何度も願った。

 ふと窓の外を見遣ると、外は陽が暮れ始めていた。
 その時、コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「華、起きてるか?」

 父親の声だ。ずっと部屋に篭りきりなので、心配してるのだろう。

「今日、近所の神社でお祭りがあるみたいだぞ。気晴らしに友達でも誘って行って来たらどうだ?……りんご飴でも買って来たら、母さん、機嫌直すかもしれないぞ」

 そんなに簡単なものではないと思うけれど、その父の気遣いがなんだか、嬉しくて、居たたまれなくて、華はうん、分かったよと今込められる精一杯力で返事をした。


***

 華は、久々に外の空気を吸った気がした。
 神社の方へ向かう程、人は増えていった。屋台が沢山出ており、皆んな浮き足立っている。

 本来なら、自分もお祭りごとは好きな方だ。でも、今は周りの様にはしゃぐ事が出来ない。

(こんな風に、思う事なかったのに……)

 華は、自分がすっかり変わってしまった様に感じた。
 賑わう人々の中にいると、華はより一層孤独を感じた。華は群衆を避ける様に、いつの間にかあの公園に来ていた。

 神社から離れているせいか、公園はひっそりと鎮まりかえっていた。まるで貸切だと、華は昔を懐かしく思い、年甲斐もなくジャングルジムに登ってみた。

(昔は、もっと高いと思ってたのに……)

 幼児用にあつらえられたその園具は、高校生になった自分には、とても小さく感じた。

 気がついたら自分もすっかり大人になってしまっている事に、華は寂しくなった。
 もしあの頃のままでいられたら、こんな風に今悩んだりしてないのかもしれない。

 戻りたい……戻りたいのに、もう……

「華?」

 その時、聞き覚えのある声がした。
 華は、ギョッとその声がする方に振り返る。
 今この世界で、一番会いたくない人がそこに居た。


つづく
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...