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月夜と王宮のマグノリア
第二十五話
しおりを挟む朝の目覚めとともに、侍女が運んできた紅茶をいただくアーリーモーニングティーに始まり、朝食の席では濃い目に淹れた紅茶にミルクで割るブレックファストティーを。
小腹の空く午前十一時頃に設けるイレブンジズ、昼食時にはランチティーとなる。十六時頃になるとルーの至福であるおやつの時間、ミッディー・ティーブレイクを楽しむ。
家族がそろう休日には、甘いお菓子だけでなく塩味のパイやサンドウィッチ、クロテッドクリームを添えたスコーンなど、バラエティに富むメニューがテーブルにならぶ。
夕食後にはショコラとともにアフターディナーティーを楽しみ、就寝まえには身体を温めるためにナイトキャップティーを楽しみ眠りにつく。
獣王一家に加え、神官や侍女に侍者も挙って茶を愛好するからには、使用される茶葉は相当な量を要する。
殊に茶の木を栽培し茶葉として生産する国はひとつだけ。レジーナ王国だ。
ルーお気に入りの場所であるティールーム。
テーブルには甘いお菓子が所狭しと並び、カップへと注がれた紅茶が馥郁とした湯気を立てている。
茜色した紅茶に視線を落としながら、小さくため息をつきルーが問う。
「ねえアンジェ。レジーナ女王のこと、ブランさまに話ちてくれた?」
「うん、帰るまえにね」
「そっか、アンジェはいい子。それで──ブランさまは何か言ってた?」
「何かって?」
「う……それは」
質問に質問で返されてしまったルー。
レジーナ女王は、ほんとうにティグリスに恋慕を抱き誘惑しようと考えているのか、真実を知りたい、けれども知るのが怖い。
ブランに得策はあるのかそれも気になる。僅かでも情報があるならばすべてを知りたい。なりふり構わずに訊きたいけれど、そこまで我が子にすがりつくのは恥ずかしいルーだった。
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