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月夜と王宮のマグノリア
第三十八話
しおりを挟む最後まで黙り話を聞いていたユエは、アンジェラスの提案に少し驚いたものすぐに冷静さを取り戻すと、このうえなく温かな主の真心に感謝をして返事をする。
「ありがとうございます。私ごときに心を砕いていたき感謝します。ですがその提案を受けるわけには参りません」
気持ちだけ受け取るというユエに対し、アンジェラスは「そんな……どうして!?」と驚き問う。それもそのはず、限りある命が永久に変わるのだ、提案を受けないほうがどうかしている。
まさか断られると思ってもみないアンジェラスは狼狽え、ベンチから立ち上がろうとした拍子に足がもつれよろめく。それにはユエが素早く身を動かすと、痩身を腕に抱きとめた。
大きな胸にとじ込められてしまったアンジェラスは、未だ信じられないユエの辞退による動揺と、それに加え今度は頬や肩に伝わるユエの熱にめまいがしそうだ。
一気に加速する鼓動を悟られやしないかと、力づよい腕のなかでアンジェラスは狼狽える。それと同時にアンジェラスは思う、これはチャンスかもしれないと。
これまで胸に秘めていたユエへの想いを打ち明けてしまおうか、だとすれば今は絶好の状況ではないかとアンジェラスは考えた。
一度口にしてしまえば、ふたたび以前の関係には戻れない。これは賭けだとアンジェラスは覚悟を決めると、声が震えないよう息をととのえ唾を飲む。
まずはどうして命の半分を受け入れないのかを問い、それからユエに対する想いを告白しようと順序づける。ゆっくりと手を伸ばすと背にまわし、ユエの体躯に密着するように添う。
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