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第一章 変貌
第二十七話
しおりを挟む「ごめんなさい、店長……俺どうしたらいいんだろう」
行き先を見失った周防は消えそうな声で道標を求める。やれやれと困ったように笑うと、店長は「おまえの気持ち次第だろう。彼を許すのか」と問う。
「分かりません。旅行から戻ってきて一度も逢ってなくて……、誘いはすべて断ってるし。どんな顔してあいつに逢えばいいかも分かんねえし、けど嫌いになることもできなくて」
かすれた声が徐々にふるえだすと、最後のほうはつぶやくように思いを吐きだす。前回の恋愛でも店長は親身に相談に乗ってくれ、もう泣き顔は見せるなと釘を刺されていたにもかかわらず……。
すべての男がそうではないだろうが、どうして立てつづけに浮気男と出逢ってしまうのか。もはや屑男を選ぶのは性分かと、自分の存在すら恨みそうだ。
過去に何度も恋人に裏切られた周防は、浮気に対して強い嫌悪感をもつ。つき合っている相手がいるのに、他に目を向けるという神経が理解できない。
よく聞くフレーズは”魔が差した”だの”ただの遊び”だの”好きなのはおまえだけ”などテンプレ通りな言い訳で、最後の締めには土下座というパフォーマンスも含まれる。
元彼がそのテンプレ男で、土下座は彼の趣味なのではないかと呆れたほどだ。だが精神が麻痺していたせいか、当時は改心し泣きつく恋人を許し受け入れてきた。
それも今は遠いむかし。同じように西園寺を許せるだろうか。いくら脳裡でシミュレーションをたてようと、以前のように笑顔を向ける自分を想像できない。
迷わず愛せる自信がない、けれど嫌いにもなれない。逢いたくないのに離れて過ごす時間が辛い、他の女を抱く腕で触れられたくないのに彼の胸に飛び込みたい。
失恋の痛手から救ってくれた西園寺によって、癒えた心をふたたび傷つけられてしまった。死んだ心では涙すら出なかったが、うつむく頭に店長の温かな手が乗った瞬間に決壊した。
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