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第一章 変貌
第五十四話
しおりを挟む「じゃあ藤隆、俺そろそろ帰るわ。水緒さん、お茶ご馳走さま」
ソファに根が生えたように固まる夫婦を横目に周防はひとり玄関に向かう。
あれだけ言ってもまだ助けてくれるとでも思うのか、西園寺はすがるような目を周防に向けている。憐れな男、うっすらと涙ぐむ始末。
出逢った頃は誠実で優しい大人の男というイメージだったが、今はもう自分勝手な情けない男としか思えない。すでに愛想も尽きた、そんな男にすがられても心など動かされなかった。
突き放すように態度で示し無視をしたまま邸を後にした。
住宅街を離れタクシーに乗り込む。
今頃は妻と夫、修羅場にでもなっていることだろう。いい気味だと顔がニヤケるが、満足に浸っている暇など周防にはない。まだやらねばならないことがあるからだ。
スマホで不倫による慰謝料についてを検索する。同性間であれ妻が心的ダメージを受けたと主張すればそれは離婚理由になり、よって周防にも慰謝料の請求がくる可能性もある。
但し男女間の性交渉と違い、同性愛の場合は立証するのが難しい。まず現場を押さえられたらアウトだが、もう西園寺とやり直すことはないので興信所を雇われても構わない。
あとは自白も有効だとあるが、それもしらを切り通せばいいだけのことだ。罪悪感に苛まれ西園寺が吐露するならそれもよし、周防には慰謝料を払う覚悟はできている。
ただ彼が最後まで足掻くつもりでいるなら、周防も自分から口にすることはない。周防と西園寺の連絡手段は主にlineだ、内容はすべて削除してしまう。
よっぽどの馬鹿でもないかぎり、西園寺もやり取りは削除しているはず。
同性愛は不貞行為に非ず、不法行為にあたるようだ。ならば離婚材料をまとめた妻が弁護士を立て、職場に内容証明を送付することを予測してあらかじめ店長に訳を話しておけばいい。
タクシーの行き先を店舗に定めると、相談があると店長に連絡を入れた。
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