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二十九話
しおりを挟むジュリオに迷いはなかった。たとえ元いた世界で暮らせなくとも、バルバトスとともに生き、幸せになりたいと思った。
「ではしばし目をつむれ。人間界と魔界をつなぐ門をくぐるとき、人間が目をひらいたままだと網膜が焼けてしまうのだ。俺がいいと言うまで絶対に目を開けるな」
現世から彼世に旅立つ死者の目に銀貨を乗せる行為。いわゆる葬送銀貨は死者の目を封印するためにある。その風習は門をくぐる際、煉獄の炎から網膜を守る行為だったのだとジュリオは理解した。
「ひっ──絶対に開けません」
「よし」
バルバトスの説明に飛び上がるジュリオ。しかとまぶたを閉じると大きな胸にしがみつき、振り落とされないよう体勢をととのえる。ふわりと浮遊感を覚えると強靭な翼の羽ばたく音が聴こえ、つぎに声がかかるとそこは暁の世界だった。
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