15 / 74
誘拐された子供たち
しおりを挟む
道案内役に山賊の頭領を引き連れて洞窟の中を進む。洞窟の規模はかなりのもので、特に天井は見上げるほどの高さがある。
湿気に不快度数を上げながらしばらく進むと、居住区として使っていたらしい広場に到着した。
「ふ~ん……」
かなり荒稼ぎしていたらしく、広場の中にはそれなりの財宝が置いてあった。貴族が使うような宝飾品に、金貨、魔導具っぽいものに、なにやら儀式用っぽい剣まで放置されている。今回の主目的じゃないから一つ一つ鑑定はしないけど。
そんな中。
誘拐されたらしい子供を二人見つけた。首輪を嵌められて逃げられないようにされている。
子供。
男の子と、女の子。
それ自体は珍しいものではない。もしも貴族や商人の子供なら身代金を期待できるし、そうでないなら奴隷として売り払えるからだ。大人の奴隷は即戦力としての需要があるけれど、子供は子供で『教育しやすい』という理由で人気があるのだ。
だから、誘拐されていたのが子供なのは珍しい光景ではない。
めずらしいのは――その子供が『獣人』だったことだ。
頭部から生えた犬のような耳と、お尻には長い尻尾。よく見ると爪も鋭いのでまず間違いなく獣人の子供でしょう。
この国には獣人の自治区が存在するけれど、その自治区は北部の王領地に存在しているので目にすることは滅多にない。
ということは……この人たち、王領地の中にある自治区に忍び込んで獣人を誘拐したのかしら? なんて命知らずな……。
いや、この人たちの実力では誘拐するどころか自治区に忍び込むこともできないだろうし、となると外国から来たか、自治区から自分で出てきた子を誘拐したのかしらね?
その辺を尋ねるために私は子供たちに近づき、首輪を魔法で外し、両膝を突いた。
「大丈夫? ケガはない?」
「――――」
怯えながらも何かを口にする子供。でも、その意味を理解できなかった。言葉が拙いというよりは、言語自体が異なる感覚……。
あー、獣人は使用する言語が異なるのか。かつて私も王太子妃候補だったから複数の外国語を習得させられたけど、さすがに獣人の言葉は分からないわねぇ。
「え~っと、」
もしかしたら通じるかもしれないので、エラン語、ラスペル語、リーシュタルト語と思いつく言語で話しかけるけど、芳しい反応はなし。あとは――
『――こんにちは。ケガはない?』
『……はい。ケガ。ない』
お、片言ながら意思疎通できた。なるほど今ではあまり使われない大陸共通語ね。権威主義の神聖リーンハルト帝国くらいしか使用していないやつ。
『助けに来たのだけど、お家は分かる?』
『……分からない。です』
『そっか……』
たぶん自治区から来たのだろうけど、外国から連れてこられた可能性もゼロじゃないのよね。う~ん、最終的には王都まで連れて行って騎士団にお任せするとして……。その前にご飯にしましょうか。
盗賊のアジトだけあって食材も見つけたので、簡単なシチューでも作りましょうか。もちろん前世知識でのシチューだ。こっちの世界にも似た料理はあるけれど、公爵令嬢が料理をするなんて許されないので作り方は知らない。
もちろん、この世界にはルーなんて便利なものなんてない。でも、小麦粉があったから何とかなるでしょうきっと。
洞窟の中で火をおこす訳にはいかないので一旦出ましょうかと私が立ち上がると――
「――くそがっ!」
と、なんとも小汚い声が響き渡った。
湿気に不快度数を上げながらしばらく進むと、居住区として使っていたらしい広場に到着した。
「ふ~ん……」
かなり荒稼ぎしていたらしく、広場の中にはそれなりの財宝が置いてあった。貴族が使うような宝飾品に、金貨、魔導具っぽいものに、なにやら儀式用っぽい剣まで放置されている。今回の主目的じゃないから一つ一つ鑑定はしないけど。
そんな中。
誘拐されたらしい子供を二人見つけた。首輪を嵌められて逃げられないようにされている。
子供。
男の子と、女の子。
それ自体は珍しいものではない。もしも貴族や商人の子供なら身代金を期待できるし、そうでないなら奴隷として売り払えるからだ。大人の奴隷は即戦力としての需要があるけれど、子供は子供で『教育しやすい』という理由で人気があるのだ。
だから、誘拐されていたのが子供なのは珍しい光景ではない。
めずらしいのは――その子供が『獣人』だったことだ。
頭部から生えた犬のような耳と、お尻には長い尻尾。よく見ると爪も鋭いのでまず間違いなく獣人の子供でしょう。
この国には獣人の自治区が存在するけれど、その自治区は北部の王領地に存在しているので目にすることは滅多にない。
ということは……この人たち、王領地の中にある自治区に忍び込んで獣人を誘拐したのかしら? なんて命知らずな……。
いや、この人たちの実力では誘拐するどころか自治区に忍び込むこともできないだろうし、となると外国から来たか、自治区から自分で出てきた子を誘拐したのかしらね?
その辺を尋ねるために私は子供たちに近づき、首輪を魔法で外し、両膝を突いた。
「大丈夫? ケガはない?」
「――――」
怯えながらも何かを口にする子供。でも、その意味を理解できなかった。言葉が拙いというよりは、言語自体が異なる感覚……。
あー、獣人は使用する言語が異なるのか。かつて私も王太子妃候補だったから複数の外国語を習得させられたけど、さすがに獣人の言葉は分からないわねぇ。
「え~っと、」
もしかしたら通じるかもしれないので、エラン語、ラスペル語、リーシュタルト語と思いつく言語で話しかけるけど、芳しい反応はなし。あとは――
『――こんにちは。ケガはない?』
『……はい。ケガ。ない』
お、片言ながら意思疎通できた。なるほど今ではあまり使われない大陸共通語ね。権威主義の神聖リーンハルト帝国くらいしか使用していないやつ。
『助けに来たのだけど、お家は分かる?』
『……分からない。です』
『そっか……』
たぶん自治区から来たのだろうけど、外国から連れてこられた可能性もゼロじゃないのよね。う~ん、最終的には王都まで連れて行って騎士団にお任せするとして……。その前にご飯にしましょうか。
盗賊のアジトだけあって食材も見つけたので、簡単なシチューでも作りましょうか。もちろん前世知識でのシチューだ。こっちの世界にも似た料理はあるけれど、公爵令嬢が料理をするなんて許されないので作り方は知らない。
もちろん、この世界にはルーなんて便利なものなんてない。でも、小麦粉があったから何とかなるでしょうきっと。
洞窟の中で火をおこす訳にはいかないので一旦出ましょうかと私が立ち上がると――
「――くそがっ!」
と、なんとも小汚い声が響き渡った。
53
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる