【完結】正統王家の管財人 ~王家の宝、管理します~

九條葉月

文字の大きさ
36 / 74

求婚(二度目)

しおりを挟む

 しばらく魔法の練習をしなければ。

 ずぶ濡れとなった髪やら服やらを風魔法で乾かしながら、そんなことを考える私であった。

 ちなみに風魔法を使ったドライヤーは私の得意技だった。そして、魔力の総量が増えた結果、今までは冷風だけだったのに温風が使えるようになっていた。この点だけはアズに感謝してもいいかもしれない。

 いやこれまでの減点が酷すぎて、感謝なんて一瞬で塗りつぶされてしまうのだけれどね。

 ともかく。
 私とミアは濡れた髪やら服やらを乾かし終わり……改めて、襲いかかってきた獣人さんに向き直った。

 ちなみにこの獣人さん。私たちが乾かし終わるまで正座で待機していた。獣人にも正座という文化はあるかい、とか。まるで『待て』をしている犬のようね、とか。そんなことを考えてしまう私であった。

「ガルンド族の族長、ガース・ガルンドだ。……いや、ガルンドです」

 なんかメッチャ畏まられている。まるで借りてきた猫ならぬ犬のよう。

 獣人族は血筋よりも強さこそを重視すると聞くし、その理屈だとガルドさんを倒した私は兄貴分――いや、姉貴分みたいな感じになるのかしらね?

 さすがに獣人の生態や文化に関する知識はそんなにないのよね。他国との交渉なら王妃が出張ることもあるけれど、獣人族との交渉は専門の外交官というか領事に任せる形だし。

「えーっと、はじめまして。リリーナ・リインレイトです」

 私がそう挨拶をすると、

「……リリーナ。素晴らしい名前だ。美しさの中にも勇猛さが隠れ潜んでいる」

「あ、はぁ?」

 リリーナという名前のどこに勇猛さが? いや獣人族とは文化が違うし、そんなものなのかしら……なぁんて考えていると、

「リリーナ! お前の強さは素晴らしい!」

 急に立ち上がったガースさんが、熱の篭もった声で語り始めた。

「獣人族の分厚い皮膚を貫く魔法!」

 雷魔法なのだから皮膚の厚さは関係ないのでは?

「詠唱無しの魔力行使!」

 いやしていましたよ? 短縮詠唱だけど『雷よ、我が敵を討てトニトルス』って。遠くにいたから聞こえなかったのかしら?

「さらには、味方への被害すらもかまわず敵を排除する覚悟!」

 事故です。

 いくら私でもそこまで鬼畜じゃないわ。

「俺はお前ほど素晴らしく、美しい女性に会ったことはない!」

 獣人の女性すべてを敵に回しかねない発言ね?

「あ、はぁ、ありがとうございます?」

 ちょっとドン引きしながらも一応感謝の言葉を述べる私。ガースさんはそんな私の手を掴み――


「――気に入った! リリーナ! 俺の嫁になれ!」


 …………。

 ………………。

 ……………………。

 おぉん?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...