64 / 74
いつか殴る
しおりを挟む国王陛下が、直接謝罪したいと申し入れてきた。
そこまではまぁいいとしても、なぜかアイルセル公爵家で。
なんでやねん。
思わずコテコテのツッコミをしてしまう私だった。
でも、なんでやねん。
なんで国王が直接動く話になっているのか。なんでアイルセル公爵家なのか。どうしてこうなった?
もう四年も前のことを蒸し返されたくはないし、今さら謝られても遅すぎる。……でもなぁ、直接謝罪されたら許すしかなくなるよなぁ。そして断れるだけの言い訳もなし。体調不良と偽ってもお見舞いに来そうな勢いだし。
というか謁見場所がアイルセル公爵家って。いくら公爵家でもホイホイ国王陛下をお招きできるわけじゃない。
何ヶ月も前から屋敷を改装したり庭を整えたり。
最高級の食材を使ったメニューを考案したり。
使用人一同の再教育をしたり。
使用人の中に怪しい人物がいないか再調査したり。
屋敷の警備態勢を見直したり、近衛騎士団と協議したり……。
そんな下準備を重ねてやっと国王陛下をお招きすることができるのだ。いきなり「ちょっと謝罪に行くわ」と言われて受け入れられるはずがない。
なによりも最悪なのが、ここは実家のリインレイト公爵家ではなく、今回の件では無関係であるアイルセル公爵家であるということ。
リインレイト公爵家に場所を変えてもらう?
でもいまさらレオに迷惑を掛けるわけにもいかないし、すでに国王陛下は「アイルセル公爵家で」と場所を指定されている。これをひっくり返すためには……。
(……私が王城に行くしかないじゃん!)
陛下にご足労いただくわけにはいかないので、自分でやって来ました。なんという忠臣の鏡! という展開。
事態を丸く収めるため、もはやその選択肢しか残されていない私だった。
い
つ
か
殴
る
。
◇
まぁ、王城にはいつか行かなきゃならなかったしね。騎士団員のケガを治療するってミッツ様とお約束をしたし。……と、自分を慰める私だった。健気。
≪そんなに嫌なら王城を吹き飛ばしてしまったらどうですか?≫
≪今のマスターなら十分可能だと思いますが≫
ちょっと、魅力的な提案をするの止めてもらえません? というか無理無理。王城を吹き飛ばしたら無関係の人間を巻き込んじゃうじゃない。王城には騎士団の他にもたくさんの人が働いているのだから……。
≪では、王のプライベートな空間だけを吹き飛ばしては?≫
≪王妃候補であったなら場所くらい知っているでしょう?≫
…………。
おっといけない。かなり本気で検討してしまったわ。
それはともかく王城へ。
と、簡単に行けるものでもない。
四年の間に礼儀作法も細かく変わっているかもしれないし、相手方との予定の調整もある。なによりドレス、ドレスがない。
四年前に追放されたときは着の身着のままでギュラフ公爵領に移送されたし、その後は王城に行くこともないだろうと礼服の準備もしていなかったのだ。いや同格の貴族邸に招待されたときのものや、夜会に出られるレベルのものなら作ってあるけど、さすがに王城で陛下に謁見できるレベルのドレスと比べると『格』が足りないのだ。
つまり今から作らなくてはならない。陛下に謁見できるレベルのドレスを。採寸やら生地選びやらをして、最新の流行を取り入れつつも下品にならないドレスを。
まだ喪に服す期間なのだから喪服でも――いや無理だわ。陛下と謁見するのに喪服はないわ。どうにかしてドレスを準備しなくては……。
(……めんどくせー)
やはり、いつか殴ろう。固く決意する私であった。
43
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる