乙女ゲームのヒロイン(幼女)ですが、百合ハーレムができました。……どうしてこうなった?

九條葉月

文字の大きさ
38 / 48

38

しおりを挟む

 ナユハを暴漢から救い出してから三日。愛理と一緒に『第二回・美少女ナユハを救おう会』を開催した私は、大体の方針を決めると共に、どうしても大人の協力が必要だと痛感した。

 いくら魔法の才能があるとはいえ、私はまだ9歳の子供。大人じゃないとできないこともたくさんある。

 と、いうわけで。私と愛理はお爺さまの元へと突撃した。発掘した金貨についても話を聞かなきゃいけないしね。

「……リリアか。丁度いいところに来たね」

 出迎えてくれたのは30代前半くらいに見えるお爺さま。実年齢からしてみれば若作りだけど、銀髪持ちで老化の遅いリースおばあ様や、エルフであるアーテルおばあ様に比べると十分“人間らしい”若々しさだと思う。

 愛理が隣にいたせいか予想した『リリアちゃ~ん!』抱きつきはなかった。一安心。

 口ぶりからお爺さまも私に用事があったみたいなので、まずはお爺さまの話を聞くことにする。

 お爺さまの用件とは鉱山で私たちが見つけた金貨の山についてだった。すでにお爺さまとの話し合いで、金貨の取り扱いについては鉱山権利所有者であるレナード家に一任してある。

 金貨は今発掘作業の最中で、とりあえず鑑定のためにおばあ様が革袋一つ分を(用事を終えて王都に帰ってくるついでに)持ってきたらしい。

 そんな説明をしながらお爺さまが机の上に広げた金貨はおよそ100枚。現行のものに比べると少々作りが雑だ。

 それもそのはず。この金貨は前王朝で使われていたものだから約1,000年前のもの。金貨よりは歴史的遺物としての価値が高い、らしい。

 お爺さまとお父様たちが話し合った結果、発見した金貨の九割は王国に寄付して、残りの一割を土地所有者のレナード家が受け取って鉱山の労働環境改善に使うことになったそうだ。

 そして、レナード家が手にした一割の金貨のうち、発見者である私の取り分は金貨三枚。前世の基準で考えれば発見者は五割もらえたはずなので、それを考えれば少なすぎる割合となる。

 けれど、最近魔物の出没が急増して国家財政が危機的状況であると言われれば九割寄付にも納得するしかない。あの鉱山はかつて王領地だったらしいし、発掘した金貨も元々は国家の資産であったと考えれば順当とすら言えるんじゃないかな?

 それと鉱山の労働環境改善も、ナユハという鉱山労働者の友達ができた私としては大賛成。私がナユハを救い出しても、鉱山労働者がいなくなるわけではない。落盤事故などの危険を減らせるならどんどん使って欲しいくらいだ。

 ……とは、言うものの。
 正直、ナユハを救うために今私がやろうとしていることには『資金』が必要となる。ワガママを言って金貨をもっと分けてもらいたいのが本音だ。

 でも、それをしたら魔物被害に苦しむ人々や鉱山労働者の労働環境改善に回るお金が減ることになる。そんなことは絶対に許されないし、何より私がナユハに合わせる顔がなくなってしまう。

(急いては事をし損じる)

 前世のことわざを思い出しつつ、私は何度か深呼吸をした。こちらの取り分である金貨3枚を受け取って、今度は私の用件をお爺さまに説明する。

「……お爺さま。デーリン伯爵家の誘拐被害者名簿のようなものはありますでしょうか? あるようでしたら是非とも私に貸し出していただきたいのですけれど」

「誘拐被害者名簿?」

「えぇ、そうです。お爺さまなら手に入れられると思いまして」

「……国王陛下(リージェンス)に頼めば、担当部署に残された資料を探し出してくれるだろうが……。なんでまたそんなものを欲しがるんだい?」

「ナユハを救うためですわ」

「……いいだろう。リージェンスに頼んでおこう」

「よろしいのですか? まだ詳細の説明をしていませんが」

「成功すればそれでよし。失敗しても、それはリリアの人生にとって糧になるだろう。――それに、俺はナユハを救おうとして何度も失敗したからな。リリアの作戦を偉そうに批判できる立場にはない」

 口調が冒険者時代に戻っているのは、それだけ心に余裕がないからか。
 お爺さまは私に近づいてきて、私の両肩を強い力で掴んできた。

 槍を振るい続けてきた武人の手。
 金貨の山を動かす商人の腕。

 私では想像すらできないほど波瀾万丈の人生を歩んできた一人の男が、深く、深く頭を下げた。

「アインリヒ――、ナユハの父親は、俺が教師役をやっていた。学生の頃はよく一緒にバカなことをやってな……。最後はああなってしまったが、俺は今でもあいつのことを嫌いにはなりきれん。だから、頼んだ。あいつの娘を、罪のないナユハを救ってやってくれ」

「当然ですわ。お爺さまの事情は正直どうでもいいですが、ナユハは私の友達ですもの」

「……リリアらしいな」

 力なく微笑んだお爺さまはこのときだけ年相応の老け方をしているように見えた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

乙女ゲームの敵役の妹兼悪役令嬢に転生したので、今日もお兄様に媚を売ります。

下菊みこと
恋愛
自分だけ生き残ろうとしてた割にフラグクラッシャーになる子のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

悪役王女に転生したのでお兄様達に媚を売る…のはちょっと無理そうなので聖女候補になれるよう頑張ります!

下菊みこと
恋愛
悪役王女が頑張ってみるお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

処理中です...