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儲け話
子猫は上機嫌な様子でどこかへと行ってしまった。そんなに気に入ったのかしらね? あの魔導具、すごく簡単に作っちゃったのだけど。
「ずいぶんと気前がいいじゃないか」
と、私の背中をバンバンと叩いてくる瑾曦様。気安い様子だけど、馬鹿力なので背骨がズレそう……。
「商人の娘として、情報には金を支払いませんと」
「可愛げがないねぇ。もうちょっと『梓宸と結婚するために情報を集めないと!』くらい言えないのかい?」
「……なんか、瑾曦様の中の私って人格違いすぎません?」
「きゃら?」
そもそもなぜこんなにも私と梓宸をくっつけようとしているのか……。やはり自分が梓宸の相手をしたくないから? さすがに同情してしまう私であった。
「しかし、情報屋から噂話を、ですかぁ。やはり妃って暇なんですね?」
「そりゃそうさ。妃ともなると後宮から一歩も出られないし、どこで『敵』に会うか分からないからね。皆、部屋に篭もりがちになるのさ。必然的にできる娯楽も少なくなる」
敵というのは皇帝からの寵愛を奪い合うという意味か……。あとは敵対派閥の妃とかも? 後宮こわい。
「散歩すら難しいのですか。妃ってどんなことをして過ごしているのですか?」
私だったら退屈で死にそうである。いや縮地で逃げ出すか。
「そうだねぇ。まずは仕事として機織りがあるが……これも生糸の数に限りがあるから、一日数時間ってところだ」
「へー」
生糸(原材料)が足りないなら、妃たちに蚕の飼育からさせてしまえばいいのでは? ……高貴な生まれの妃に蚕(芋虫)の世話をさせるのは無理かしらね? 一匹ならまだマシだけど、いっぱいウネウネしているからなぁ。
「その後は自由時間だから暇つぶしをしなきゃいけないが……やはり気心の知れた妃とのお茶会かな? 後宮に敵が多いとはいえ、同じ派閥の妃はいるし、無理やり後宮に入れられただけで皇帝を狙っていない妃もいるからね」
まぁ、相手が梓宸だものね。しょうがないか。
「……あと、こういう言い方はアレだが、下級妃はどれだけ頑張っても皇帝と会うことすらできないからね。下の方は結構気楽に交流しているらしい」
「へー」
「実家が貧しい妃は贅沢もできないからね。中級妃や上級妃を楽しませていろいろ恵んでもらおうって人は多い。さっきの子猫みたいにね」
「侍女だけじゃなく下級妃もそんな感じなんですね」
「どんな状況でも人間は強かに生きているのさ。下級とはいえ妃だから教養のある子もいてね。外にいるときに覚えた物語を語ったり、中には複数集まって演劇風にしている子たちもいるよ」
「ははぁ、なるほどつまり『ごっこ遊び』も兼ねている感じですか」
「ごっこ遊びって。もう少し言い方はないのかい?」
「いやぁ、本職と付き合いがあるので……。本職向けの小道具を売ることも可能ですよ?」
「そこまでの金はないんじゃないかねぇ」
「それもそうですか。もらえるお茶やお菓子以上の出費では本末転倒ですし」
と、そこまで喋って思いついた私である。
「物語や演劇が受け入れられるなら、小説も需要がありますかね?」
近年は欧羅との交易で新たな製紙技術が入ってきて、紙の本が安くなったのだ。もちろん『以前と比べれば』という但し書きは付くけれど。
実を言うと実家も出版部門を設立して小説を出版したり欧羅の本を翻訳したりしている。
なので、町中では普通に本が買えるし、ちょっとお高めとはいえ中級妃や上級妃なら問題ない程度の値段なのだけど……。
私の提案に瑾曦様は難しそうな顔をする。
「小説ねぇ? そういうのがあるのは知っているが、検閲が厳しい後宮には中々入ってこないからね」
「検閲ですか……。国が『低俗な』小説を妃に買い与えることはないでしょうけど……侍女に買いに行かせるとか無理なんですか?」
「そもそも侍女だって中々後宮から出られないからね。ほら、さっき子猫もそう言っていたじゃないか」
「あー、そんなこと言っていたような? やはり『種』対策で?」
「あとは妃が侍女に化けて逃亡するのを防ぐためかな。難しいとは思うが、可能性はあるからね。女の出入りは一律で禁じた方が手間が掛からないのさ」
「なるほど」
後宮に小説は中々入ってこないと。
――これは、(梓宸を脅して)小説の販売を独占してしまえば大もうけできるのでは?
雪花の出産と体調回復が終わったら後宮から出て行くけど……一度販路を確保してしまえば事業を継続できるしね。ふふふ、お金持ち(妃たち)が一カ所(後宮)に集まっているのって最高の販売先よねぇ……。輸送費も人件費も一カ所分で済むし……。
「なーんか、金の亡者みたいな顔をしているじゃないか」
「こんな美少女を捕まえて、失礼な」
「ずいぶんと気前がいいじゃないか」
と、私の背中をバンバンと叩いてくる瑾曦様。気安い様子だけど、馬鹿力なので背骨がズレそう……。
「商人の娘として、情報には金を支払いませんと」
「可愛げがないねぇ。もうちょっと『梓宸と結婚するために情報を集めないと!』くらい言えないのかい?」
「……なんか、瑾曦様の中の私って人格違いすぎません?」
「きゃら?」
そもそもなぜこんなにも私と梓宸をくっつけようとしているのか……。やはり自分が梓宸の相手をしたくないから? さすがに同情してしまう私であった。
「しかし、情報屋から噂話を、ですかぁ。やはり妃って暇なんですね?」
「そりゃそうさ。妃ともなると後宮から一歩も出られないし、どこで『敵』に会うか分からないからね。皆、部屋に篭もりがちになるのさ。必然的にできる娯楽も少なくなる」
敵というのは皇帝からの寵愛を奪い合うという意味か……。あとは敵対派閥の妃とかも? 後宮こわい。
「散歩すら難しいのですか。妃ってどんなことをして過ごしているのですか?」
私だったら退屈で死にそうである。いや縮地で逃げ出すか。
「そうだねぇ。まずは仕事として機織りがあるが……これも生糸の数に限りがあるから、一日数時間ってところだ」
「へー」
生糸(原材料)が足りないなら、妃たちに蚕の飼育からさせてしまえばいいのでは? ……高貴な生まれの妃に蚕(芋虫)の世話をさせるのは無理かしらね? 一匹ならまだマシだけど、いっぱいウネウネしているからなぁ。
「その後は自由時間だから暇つぶしをしなきゃいけないが……やはり気心の知れた妃とのお茶会かな? 後宮に敵が多いとはいえ、同じ派閥の妃はいるし、無理やり後宮に入れられただけで皇帝を狙っていない妃もいるからね」
まぁ、相手が梓宸だものね。しょうがないか。
「……あと、こういう言い方はアレだが、下級妃はどれだけ頑張っても皇帝と会うことすらできないからね。下の方は結構気楽に交流しているらしい」
「へー」
「実家が貧しい妃は贅沢もできないからね。中級妃や上級妃を楽しませていろいろ恵んでもらおうって人は多い。さっきの子猫みたいにね」
「侍女だけじゃなく下級妃もそんな感じなんですね」
「どんな状況でも人間は強かに生きているのさ。下級とはいえ妃だから教養のある子もいてね。外にいるときに覚えた物語を語ったり、中には複数集まって演劇風にしている子たちもいるよ」
「ははぁ、なるほどつまり『ごっこ遊び』も兼ねている感じですか」
「ごっこ遊びって。もう少し言い方はないのかい?」
「いやぁ、本職と付き合いがあるので……。本職向けの小道具を売ることも可能ですよ?」
「そこまでの金はないんじゃないかねぇ」
「それもそうですか。もらえるお茶やお菓子以上の出費では本末転倒ですし」
と、そこまで喋って思いついた私である。
「物語や演劇が受け入れられるなら、小説も需要がありますかね?」
近年は欧羅との交易で新たな製紙技術が入ってきて、紙の本が安くなったのだ。もちろん『以前と比べれば』という但し書きは付くけれど。
実を言うと実家も出版部門を設立して小説を出版したり欧羅の本を翻訳したりしている。
なので、町中では普通に本が買えるし、ちょっとお高めとはいえ中級妃や上級妃なら問題ない程度の値段なのだけど……。
私の提案に瑾曦様は難しそうな顔をする。
「小説ねぇ? そういうのがあるのは知っているが、検閲が厳しい後宮には中々入ってこないからね」
「検閲ですか……。国が『低俗な』小説を妃に買い与えることはないでしょうけど……侍女に買いに行かせるとか無理なんですか?」
「そもそも侍女だって中々後宮から出られないからね。ほら、さっき子猫もそう言っていたじゃないか」
「あー、そんなこと言っていたような? やはり『種』対策で?」
「あとは妃が侍女に化けて逃亡するのを防ぐためかな。難しいとは思うが、可能性はあるからね。女の出入りは一律で禁じた方が手間が掛からないのさ」
「なるほど」
後宮に小説は中々入ってこないと。
――これは、(梓宸を脅して)小説の販売を独占してしまえば大もうけできるのでは?
雪花の出産と体調回復が終わったら後宮から出て行くけど……一度販路を確保してしまえば事業を継続できるしね。ふふふ、お金持ち(妃たち)が一カ所(後宮)に集まっているのって最高の販売先よねぇ……。輸送費も人件費も一カ所分で済むし……。
「なーんか、金の亡者みたいな顔をしているじゃないか」
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