勇者学校の指南役~私、魔王だけどいいのかしら?

九條葉月

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 ティナとの設定すり合わせが終了してしばらくして。マップ上に青い点が複数出現し、こちらに近づいて来た。青い点を拡大してみると、それぞれ『騎士』と表示されている。

「シンシアちゃん、騎士団が来たみたいよ」

 お昼寝継続中のシンシアちゃんをゆさゆさと揺さぶると、

「――ふぁい!? 寝てない! 寝てないですよ!?」

 なんか授業中に居眠りしていた生徒みたいな反応をされてしまった。

 シンシアちゃんがキョロキョロと辺りを見渡し、今の状況を再認識したっぽい。

「…………、……ごほん。そうですか。では、私が騎士たちに詳しい事情を説明しますので」

 わざとらしい咳払いをしてからキリッとするシンシアちゃんだった。かわいい。


                  ◇


 騎士団はまず山賊の少女の身柄を確保し、私たちから事情を聞いてから死体の検分をしていた。

 私って身分証明書も持ってないし、かなり怪しい存在だと思うのだけど、騎士からの取り調べはごくごく簡単なものだった。ハイエルフ効果か、あるいはシンシアちゃん効果か……。

 死体の検分が終了したあと、念のためにということで騎士の護衛を受けながら商都に向かうことになった。領主の娘シンシアちゃんを乗せるために馬車まで連れてくるという準備の良さだ。

「おー」

 馬車はずいぶんと豪華な装飾が施されていた。前世でロイヤルファミリーが使っているみたいな感じ? 馬は二頭立てだけど、普段使い用で数が少ない方らしい。公爵令嬢ってすげぇ……。

「ではエリカさん。まいりましょう」

 私の手を取り、馬車に乗り込もうとするシンシアちゃん。

「え? 私が乗っていいの? 私って別に貴族じゃないけど」

「当然です! 私の客人で、命の恩人なのですから!」

 ぷくーっと頬を膨らませるシンシアちゃんだった。かわいい。

「そもそもハイエルフを歩かせるなど恐れ多いです! 騎士たちの胃が死にますよ!?」

 この世界でもストレスで死ぬのは胃袋らしい。

 シンシアちゃんに手を引かれるまま馬車に乗り込む。おぉー、椅子がふっかふか。まるでバランスボールに載っているかのよう。……いやこれは例えが悪いな。前世の庶民が顔を出してしまった。まるでー羽毛の上に乗っているかのようだー。

 私の正面にシンシアちゃん、隣にティナが座ってから馬車が走り出した。そういえば前世も含めて初めての馬車だったのだけど――

「――おうおうおうおうおうおうおうおう」

 揺れていた。
 メッチャ揺れていた。ガタガタと。

 そうかこの世界ってまだサスペンションがないのかーっと思いつつ、舌を噛まないよう固く口を閉じる私だった。


                  ◇


「おー」

 商都の城壁はものすっごく高かった。前世の雑居ビルくらいはあるのでは? それがぐるっと都市を取り囲んでいるのだから建築にどれほどの手間と費用が掛かったのか……。

 ちなみに壁の表面はコンクリートっぽかった。まぁ中世ヨーロッパ風の世界にコンクリートは不自然なので魔法世界の不思議素材かもしれないけど。あるいはローマ時代にあったというローマンコンクリートとか?

 騎士団&シンシアちゃん効果か、城門を通るときも待ち時間ゼロ&取り調べもなしだった。ほかの城門では人々が列を成しているので、たぶん貴族専用の城門だ。

「おー」

 城門から商都の中に入ると、いかにも中世ヨーロッパ風の世界が広がっていた。

 馬車が余裕ですれ違えるほどに広い大通り。その両脇にはレンガ造りの建物が並んでいる。

 建物は店舗兼住宅であるらしく、一階部分は商店、二階部分が自宅になっているみたいだった。

 広いはずの大通りには人があふれかえっていて、騎士が先導してやっと馬車が通れるほどだった。

「へー、さすが商都。栄えているのねぇ」

「それはもう! 我が王国における流通の要ですから! 商都で手に入らぬものはないと謳われるほどでして!」

 自慢げに胸を張るシンシアちゃんだった。自分の実家が治める都市だから誇りを持っているのでしょうね。

 と、テンションが高すぎると自覚したのか小さく咳払いをするシンシアちゃん。

「エリカさん。これから私の実家にご案内しようと思うのですが」

「お父様が私の身分証明書を作ってくれるのだっけ?」

「はい。とはいえ父は執務中ですので少しお待たせしてしまうかもしれませんが」

 シンシアちゃんが申し訳なさそうな顔をしたところで、ティナがズイッと身を乗り出した。

『ほう? ハイエルフであるエリカ様を待たせるとは――』

「はいはい。大丈夫よー、いくらでも待つから」

 シンシアちゃんに凄もうとするティナを停止しつつ、手をひらひらとさせる私だった。

「あ、ありがとうございます……。そして、時間も遅くなるでしょうし、もしよろしければ晩ご飯を準備させますし、宿泊用のお部屋も準備できますが……」

「え? いいの?」

「もちろんです! エリカさんは私の命の恩人なのですから! むしろずっと、永遠にうちにいてくれてもいいんですよ!?」

「いやいや永遠にって」

 それ、ハイエルフ相手だと冗談にならないのでは? 原作ゲームにも寿命設定はないのだし。

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