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しおりを挟むトドメとばかりにもう一度手榴弾を投げ込んでから、ティナは堂々と扉を開け放った。
うわぁ、凄惨。もはや戦争映画みたいな光景だ。
おっと、あまりにも堂々とティナが扉を開けたから失念していたけど、一応マップで敵が生き残っているか確かめないと。まぁたぶん全滅だろうけどね。
……おや?
「ティナ。生存者が一人いる」
赤い点のある場所に視線を向けると、そこには教会によくある司会台というか説教台が。よく牧師さんが聖書を置いて説教しているようなヤツ。
たぶん建物と同じ大理石製なので、咄嗟に身を隠して無事だったのだと思う。
『不手際がありましたか』
不満げに呟いたティナが銃弾を説教台に撃ち込む。さっさと出てこいとばかりに。なんかもう、悪役。悪役メイドであった。魔王のメイドさんなのだから丁度いいのかな?
「――くそ!」
もはやこれまでと諦めたのか、説教台から男が姿を現した。
一見すると何の変哲もない中年神父。ただ、首から提げられているのは十字架じゃなくて、ポーションが入っているようなガラス瓶だったけど。
『殺りますか?』
うちのメイドさんが物騒過ぎる件。
「い、いや、一人くらいは生け捕りにしたいかな。何の目的があって神殿に篭もっていたのか気になるし。それに反撃されても自動防御結界があるもの」
私とティナが小声でそんなやり取りをしていると、神父は首から提げられたガラス瓶を握りしめた。
「もう少し検証をしたかったが、もはやこれまで! ――偉大なる魔王よ! 今ここに顕現したまえ!」
……え? 魔王?
思わずティナと顔を見合わせる私。
「私、召喚されるの?」
『みたいですね。なるほどいかにも怪しげだったのは魔王信奉者だからですか……。まさか魔王本人に邪魔されるとは……。可哀想ですから「どうも、魔王です」って名乗ってあげたらどうですか?』
「やだよ恥ずかしい」
まさか本当に魔王が出てくることはないだろうと高をくくっている私たち。そんな態度に抗議するように神父を中心として膨大な魔力が渦巻いた。
「あれ? ほんとに魔王が出てくる系?」
『まさか。エリカ様こそが正真正銘、腹黒で残酷で金に目がない魔王ですよ』
こんな時にも罵倒を忘れないティナだった。
膨大に膨れあがった魔力はどんどんと縮小していき、神父の頭の上に収束していく。
そして――
≪――ガァアアアァアアアァアアッ!≫
神殿を揺らすかのような咆吼。ブラッディベアとは比べものにならないほどの大声量だ。
空間を渦のように歪めながら。神父の後ろに出現したのは――巨大なるトカゲであった。
前世で言えばイグアナ……いや、コモドオオトカゲが一番似ているかな? 四足歩行の大型トカゲ。ただし大きさは比べものにならなくて、地面から頭の天辺までは人間の身長の三倍とか四倍はありそうだ。あまりにデカすぎて見上げる首が痛くなりそう。
「あれが魔王?」
『魔王ではなく、ドラゴンですね』
「……ドラゴン?」
『えぇ、ドラゴンです』
「トカゲじゃん? いや大きさだけならドラゴンっぽいけど……首は短いし、羽根も生えてないし」
『ドラゴンの中でも下級の、アース・ドラゴンですね。空も飛べない、ドラゴン・ブレスも吐けない雑魚です』
あまりにも容赦のない物言いだった。アース・ドラゴンの代わりに泣いた方がいいだろうか?
しかし、そんな雑魚ドラゴンでも普通の人間から見れば頼りになる存在だったようであり。
「は、ははっ! 魔王ではないが、ドラゴンか! ならば良し! さぁドラゴンよ! あの女共を食い殺して――」
まるで毛虫のように。
ドラゴンの召喚者であるはずの神父が、ドラゴンに踏みつぶされた。前足と石畳の間から鮮血が流れ出す。
「あれ? 召喚獣って召喚者に危害を加えられないんじゃないっけ?」
原作ゲームだとたとえ引っ掻かれたり噛まれたりしてもノーダメージだったけど。
『落ち着いて聞いて欲しいのですが……現実とゲームの区別は付けましょう』
「言い方よ」
まぁティナの言い方はいつものこととして。
ドラゴン。
ドラゴンなら、ブラッディベアとは比べものにならないほどお高く売れるのでは?
『そういうところです』
こういうところらしい。
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