46 / 76
アルフと
しおりを挟む
成仏しかけたおかげか、あるいはお父様と契約した影響か。お母様はずいぶんまともになったようだった。お父様によると、出会ったばかりの頃の、私を産む前のお母様に戻ったらしい。
あー、つまり、やっぱり、想像通り。私を産んだからお母様はおかしくなったんですねー。
と、少々悲しくなってしまった私だけど、喜びを隠しきれていないお父様を前にしてそんなことを口にするほどK.Y(空気読めない)ではない。前世とはいえ私は璃々愛とは違うのだ。
お母様は私に呪いをかけていたことを覚えていたらしい。ぷるぷると震えながら何度も謝ってくるお母様に対してどんな対応を取ればいいのか分からなかった私は……逃げた。とりあえずお父様に丸投げして、後日またお母様と話し合うということにした。
いや9歳児に臨機応変な対応を迫られても無理だからね?
前世の記憶? シリアス・デストロイヤーの経験なんか当てになるものか。
私の混乱を察してくださったお父様は、お母様を連れて、とりあえず(領地で仕事をしている)リースおばあ様のところに向かった。
部屋に残されたのは私と、ナユハ。そしてアルフだ。
今日のメインはアルフのはずだったのにね。すっかり影が薄くなってしまった。すまん弟よ。今度璃々愛に出会ったらぶん殴っていいから。女だからと容赦するな。私が許す。
しかし真面目な話をする空気ではないね、まったく。こうして対面するのは数年ぶりなのにさ。
さて、どうしたものかと私がナユハに視線を向けると、彼女は自信満々に頷いてみせた。おぉ、あの短い時間にアルフの説得を成功させたらしい。さすがは私のナユハたんだ。
ナユハがアルフを支えながら立ち上がらせてくれた。
身長は、私より少し高いくらい。
引きこもってあまり食事を取っていないはずなのだけど、それでも三歳年上の私より大きくなっちゃったか。
嬉しい反面、ちょっと寂しいかも。まだお姉ちゃんらしいこと何もできていないのにね。
私がしみじみしているとアルフが独白を始めた。
そう、独白だ。
誰も頼んでいないのに、アルフは早口で私を称える言葉を羅列し始めた。
「お姉様は凄いです。お姉様は天才です。お姉様の弟であることがボクの人生における至上の喜びです」
……はい?
アルフさん、キミはそんなキャラだったっけ? ちょっとお姉ちゃんっ子だった記憶はあるけど、常識の範囲内だったはず。決して、『お姉様は神様です』とか口にしちゃう子じゃなかったよね!?
私が混乱しつつもナユハに目を向けると、彼女は誇らしげに『むふー!』と鼻から息を吐いた。
嫌な予感。
「な、ナユハさん。一体何をしたのかな?」
「うん、リリアから頼まれたから。リリアの素晴らしさを語り尽くしてあげたよ。いや語り尽くすなんて不正確だったね。リリアの素晴らしさはたとえ一日かけても語り尽くせないのだから」
ナユハさーん!?
私が頼んだのは同じ『自分の出産の時に母親が亡くなった』という経験からの助言なのですけど!? どうして私の素晴らしさ(?)を語っちゃったのかな!?
いいや、正確にお願いしなかった私も悪い――にしても! もうちょっとこうさぁ! あるんじゃないのかなぁうまいやり方が!?
どうしてこうなった!?
◇
とりあえず。ストックしておいたポーションを飲ませたらアルフは落ち着きを取り戻した。状態異常だったみたい。あの短時間で洗脳に近いことをやっちゃうとか凄いなナユハ。
さっきまでの色々をなかったことにして向かい合う私とアルフ。
まだお母様の死に関して負い目があるのかな、と不安になったけれど。その辺はナユハが(あれでも)ちゃんと説得してくれていたおかげでだいぶ改善したらしい。
あと、短時間ながらラブラブな雰囲気をダダ漏れさせていたお父様とお母様を見て色々と諦めたんじゃないかな?
両親がバカップルって、子供としてはいたたまれなくなるよね。小難しいことを考えるのがアホらしくなるほど。
……お父様、今は姉御とシャーリーさんをはべらせて(?)いるんだけど、その辺はどうするんだろうね?
娘としてとても面白――じゃなくて、楽しみ――でもなくて、愉悦――でもなくて、責任。そう、きちんと責任感を持って対応をしてもらいたいと思うのですよ。うん、まったく関係のない話だがこの国は重婚O.K.だ。産めよ増えよ地に満ちよ。
……だいぶ脱線したけれど、私は当初の予定通りアルフに後継者問題が起こりかけていることを話した。
いきなり本題に入ってしまったのは、久しぶりに顔を合わせた弟と小粋な会話ができる自信がなかったせいだ。あと空気。空気を変えたかった。
「それは、仕方ないと思います。ボクなんかじゃレナード家の当主なんて……」
少し悲しそうに眉尻を下げるアルフ。
う~ん、お母様の件は解決したのに、なんでこんなに自信がないのかな? 『ボクなんかじゃ』って、地頭の良さなら私を遙かに超えると思うんだけど?
「アルフレッド様はなぜそこまで自信がないのですか?」
わーナユハがド直球で聞いちゃった。
アルフが恐る恐るといった様子で私を見る。
あれ? もしやまた私が原因?
「だって、ボクは姉さまみたいに銀髪じゃないし。姉さまみたいに特別な瞳ももっていないし。姉さまより魔法は苦手、運動もダメ。人と話すのも苦手で女の子からモテないし……」
私が原因かー。
そしてアルフよ、私より勉強はできるという自覚はあるんだね。その強かさ、間違いなくお父様の血だと思うよ?
というか、私って女の子からモテモテっていう認識なの? そこのところを詳しく聞きたいのだけど……。あの、ナユハさん? 『その通りです』と深く何度も頷くのは止めてもらえません?
私は女たらしじゃない!
『強く否定している時点でねー』
『自覚あるんじゃないのかねー』
『よっ、前世も今世も男にまったく縁のない人生ー』
うるさいわ!
妖精さんが見えないアルフの手前、内心で突っ込みつつ無詠唱雷魔法を撃ち込む私である。
急な雷鳴に驚き、辺りを見渡すアルフ。あれー、雷かなー、空は晴れているのに不思議だねー。
妖精さんはどうせダメージ無しだからいったん置いておいて。アルフの自信のなさは、天才と称される私が姉であるせいらしい。
どうしたものかね。
こればかりは『天才』側にいる私が何を言っても無駄だろう。
でも、弟だもの。
アルフのために何かしてあげたい。
…………。
……よし。
こういうときは運動だ。
身体を動かせば万事解決する。
「脳筋ですね」
ちょっとナユハの言葉のナイフが胸にぐっさり刺さったけど、私は負けない。
そう、こんなじめじめした暗い部屋に篭もっているから思考もマイナス方面に行ってしまうのだ。昔みたいに外に出て、元気に遊んで。お腹をすかせてご飯をお腹いっぱい食べれば悩みなんて吹き飛ぶに違いない。
「ガルド様の弟子ですものね」
ナユハの毒舌にくじけそうだけど、負けるものか。
よし、さっそくアルフと昔みたいに野原を駆け回って――
無理か。
ずっと引きこもっていたアルフの手足は痩せ細っていて。いきなり外に出て走らせたら転んでケガをしてしまうかもしれない。治癒魔法で治せるけど、だからといってケガをさせていい理由にはならないのだ。
「……よし、じゃあ、今日のところはリハビリもかねて絶景を見に行こうか」
まずは外に出る楽しさを思い出してもらおう。
「りはびり……。絶景、ですか?」
首をかしげるアルフの手を取り、私は窓辺まで移動して貪り喰らうものを起動させた。
光り輝く神話の帯が窓から空に向かって伸びていく。
私は軽い足取りで光の帯に乗っかる。感触は、意外としっかりしている。地面よりはコンクリートに近い感じ。
ドラゴンの背骨でも楽々折れる貪り喰らうものなので、私程度が乗ったところでびくともしない。
神話に登場した伝説上の存在に土足で乗っていいのかな、と思わなくもないけれど。前世の前世が『今はリリアの持ち物なんだし、いいんじゃないか?』と言っているのでたぶん大丈夫。
アルフは戸惑っていたけれど、そこはろくな運動もしていない引きこもり君である。日々鍛練を重ねている私のパワーに抵抗することはできず光の帯に足を乗せた。
ナユハが続いたのを確認し、ゆっくりと歩き出す。突風でバランスを崩さないように結界で周りを囲いつつ、貪り喰らうものを伸ばしてちょっとした空中散歩を楽しむ。
レナード領の主要産業は鉱山であり、他はさほど開発が進んでいるわけではない。レナード商会の本拠地も王都だし。
比較的王都から近いせいか、若い人間は王都に行ってしまうので人口も少なめ。自然が多く、のんびりとした雰囲気が漂う。それが私の生まれたレナード領だ。
私はレナード領が好きだ。
アルフも、きっと好きだろう。
……もしかしたら。
自分が守るべき『領地』を目にしたら考えが変わるかもしれない。次期領主としての責任感が芽生えるかもしれない。そんな淡い期待も抱いていたりする。
私はふと目に付いた養鶏場を指差した。
「鶏屋のゼベッタおじいさん、覚えている? 昔、アルフが鶏に追われて大変だったよね。まだ幼かったから覚えてないかな?」
当時3歳だからちょっと不安だったけど、アルフはちゃんと覚えていた。やっぱり頭がいいね私の弟は。
「……姉さまが追い払おうとして、危うく丸焼きにするところでしたよね」
「そんなことは忘れるがいいさ。……ゼベッタおじいさんね。3年前にお父さんからお金を借りて養鶏場を拡大したんだ。今ではゼベッタ印のタマゴは大人気。予定より早くゼベッタおじいさんは借金を完済してくれたよ」
貴族が領民に投資するのは珍しいけど、そこはレナード商会。利益が見込まれるならどんどんお金を貸しちゃうのだ。もちろん安心安全低金利で。
「…………」
「あそこにあるでっかいお店は、昔アルフがよく遊んでもらっていたデキチ兄さんが始めたお店。最初は屋台だったとはいえ、まさか14歳でお店を開くとは思わなかったし、成功させちゃうんだから運がいいよねぇ相変わらず」
「……ボクは、今まで何をしていたんでしょうか? みんな、ボクが引きこもっている間にもそれぞれ自分のやるべきことをやっていたというのに」
ありゃ、そうくるか。私だったら『負けてられないね!』ってなるんだけど。
ほんと、自分に自信がないんだね。何か一つでも誇れることがあればまた違うのだろうけど。
勉強は凄いはずなのに。彼にとって勉強とは『努力しなくてもできること』だから誇りにしにくいのだと思う。
「――リリア」
ナユハが少し緊迫感の込められた声を上げた。彼女は睨み付けるように空の一点を見つめていて……。私が視線をそちらに向けると、羽ばたく『何か』を視認することができた。
ワイバーン、かな?
殺気がないから気づかなかったよ。ナユハは目がいいね。
この辺にワイバーンが出るのは珍しい。近くに巣もないはずだし、“はぐれ”のワイバーンかな?
私がそれとなくアルフを背中に隠すと、――殺気を感じた。どうやらワイバーンもこちらに気づいたらしい。
体色は赤いからレッドワイバーンかな? ドラゴンに似ているけれど、後ろ足が細くて、前足があるはずの部分に羽が生えているのが特徴。
この世界のワイバーンはドラゴンの幼体であり、あれも成長すればレッドドラゴンになるだろう。
つまり、後々ワイバーンから前足が生えてくるわけで。
「オタマジャクシみたいなものだね!」
「ワイバーンをオタマジャクシ扱いはひどいと思うよ」
ナユハたんの冷静な突っ込みだった。
ちなみに、この世界にはオタマジャクシもカエルもいる。基本的な生物は地球と共通で、その他に“魔物”がまったく別の系統の生物として存在している形。魔物の方が強いので、絶滅してしまっているものも多い。
普通の動物と魔物の違いは、一般的には体内に魔石を持っていること。上位個体になると魔石にため込んだ魔力を使って魔法を行使できたりする。
で、ワイバーンも例に漏れず魔法が使える。あれはレッドワイバーンなので口から火球を吐いて攻撃してくるだろう。
予想通り。ワイバーンは火球を吐いて攻撃してきた。たしかレッドワイバーンは獲物を丸焼きにして食べるのが好きだと教えられた記憶が。
「ひ!?」
アルフが慌てていたけれど、結界を張っているので慌てる必要はない。……ナユハはもうちょっと慌ててもいいと思うけど。
「リリアのことを信じているから」
何それ照れる。
「あと、これくらいで慌てていたらリリアの友達はやっていられない」
マジすみませんでした。
私が心からの謝罪をしていると結界に火球が衝突。もちろんこちらにはノーダメージだ。
火球が効果無しと察したワイバーンは足の爪と牙による攻撃を選択したらしい。速度を上げてこちらへと接近してくる。
攻撃手段の変更の速さは褒められるけど、相手の力量を見極められない時点で失格だね。
弱肉強食。
自分が勝てない相手に挑む。そんな愚か者に訪れる結末は一つしかない。
「――貪り喰らうもの」
今乗っているものとはまた別に。
空中から光り輝く帯が現れてワイバーンを拘束した。
そのまま、容赦なく首を後ろ方向へと曲げていき――。ボキリ、と。嫌な音と共にワイバーンの脊髄は折れた。まるで小枝を折るように簡単に。
どういう理屈かは知らないけど、貪り喰らうものの力はドラゴンの背骨すら折れるほどに強い。
妖精さんが即座に飛びついてワイバーンをむしゃむしゃしているけれど、私の分の素材を残しておいて……あ、もう食べ終わりましたか。今度からはせめて私に確認を取って貰えると幸いです。
と、ここで私は『きゅぴーん!』ときた。
「うわー、ワイバーンと戦ったせいで魔力が尽きそうだー」
我ながら棒読み。ナユハの『また何かやらかすの?』っていう視線が超冷たい。
しかしアルフは慌ててくれたので、私は足下に展開させていた貪り喰らうものを消した。
必然的に、重力に従って私たちは落ちていく。
「ひ!? ひぃいいいいぃいぃいいいっ!?」
「はぁ……」
絶叫するアルフと、呆れたようにため息をつくナユハたん。冷静にメイド服のスカートを押さえているところが慣れているね。
ちなみに今は絶賛落下中だけど、風魔法の応用で落下速度は少し抑え気味だ。
まぁ空から落ちるのが初めてのアルフは落下速度が遅いことになんか気づいていないみたいだけど。
のんびりとした落下だから、のんびり会話する余裕もある。
「アルフ。助けて欲しいな」
「え?」
「私はもう魔力がないからさ。アルフの魔法で、何とかして欲しいんだ」
はい、嘘です。そもそも貪り喰らうものは魔法じゃないから魔力は使わないし。
ほんと。私ってヒロインのくせに平然と嘘をつくよねー。
アルフは戸惑いをその表情に浮かべていた。
「でも、才能がないボクなんかじゃ……」
自らの茶色い髪をいじっているのはおそらく無意識だろう。
銀髪持ちは偉大なる魔法使いになれる。それは事実だ。
では、茶髪は? 金髪は? 黒髪は?
魔法使いとして大成できないのかと問われれば。私は首を横に振るしかない。
「才能がない? 違うよ。キミの才能を育てられる人間がいなかっただけ。キミの才能を理解できる人間がいなかっただけ」
おばあ様ですら、アルフの才能には気がつかなかった。
ある意味当然。
アルフは“銀髪”じゃないから。おばあ様も本気で魔法使いとしては育成しようとしなかったのだ。姉に“銀髪”である私がいるから尚更に。才能の乏しい魔法よりも、レナード商会の後継者として育てるのを優先したと。
でも、おばあ様は勘違いしている。
銀髪が優れているのはあくまで魔力の総量。
持っているだけで宮廷魔術師になれるとされる稟質魔法の有無はまた別の話だ。
そして私は、左目の力でアルフの稟質魔法を理解していた。
説得力を増すために眼帯を外し、両の瞳でアルフを見据える。
「昔の私は自分の修行で手一杯だったからね。アルフへの教育は他の人に任せていたんだけど……。今は少し余裕があるからね。ちょっとだけ助言してあげようかな」
自信がないのなら、自信を与えればいい。
アルフには、誰も並び立てないほど素晴らしい稟質魔法があるのだから。
「――妄想を現実に。空想を実現し、夢想で世界を塗り替える。それがアルフの稟質魔法だよ。名前を付けるなら、そうだね、“夢想の語り手”かな?」
腕を広げながらそんなことを伝えた私。
アルフの瞳が揺れていた。
その感情が戸惑いなのか、動揺なのか。猜疑なのか高揚なのかは分からない。
でもアルフは口を動かした。
自分自身の力で。
私たちを助けるために。
「――我、夢想を語らん」
ぼふん、と。
衝撃と言うには柔らかすぎる感触が全身を包んでいた。手をついて立ち上がろうとするけれど、ついた手がどんどんめり込んでいってうまく立てない。
私は『それ』から何とか立ち上がり、周囲を確認する。
雲。
そうとしか表現できなかった。
自然現象のそれではなく、絵本に出てくるような白くてふわふわした雲。そんな雲が私たちのクッションとなり落下の衝撃を和らげてくれたようだ。
アルフの稟質魔法によってこの雲は生み出されたのだろう。
自分の想像したものを、強引に現実世界へと顕現させるのがアルフの稟質魔法だから。
何ともメルヘンな救助方法だけど、弟の心が汚れていないようで姉として一安心だね。
アルフは自分がやったことをまだ信じられないのか呆然としている。そんな彼の肩を私は何度も叩いた。
「やったねアルフ! こんなこと私でもできないよ!」
「……ね、姉さまでも?」
「うん。誰にも真似できない、アルフだけの才能だ。自信を持っていいよ。というか持ってくれないと私の立つ瀬がないよねぇ」
たぶん、今の私はだらしなく頬を緩めていると思う。弟がとうとう才能を開花させたのだ! 喜ばない姉がどこにいる!?
……巻き込まれた形になったナユハが『ブラコン……』と小さくつぶやいていた。あ、あれー? ナユハさん、そんな俗な言葉を誰から教えてもらったのかなー?
ま、まぁいいや。これでアルフも自信を持っただろうし、私に対して過度の苦手意識を持つこともないだろう。
いや~今回は久しぶりにうまくいったね! 大団円!
……と、私が大満足していると。
「やっぱり姉さまは凄い! 天才だ!」
うん?
「ボク自身ですら分かっていなかった稟質魔法に気づいていたなんて! さすがです姉さま! 天才であるだけではなく、こんなボクのことまでも気にかけてくれていたなんて!」
あれ? なにやら弟の目がおかしいぞ?
そう、あの目はナユハも浮かべていた……崇拝? っぽい?
「やはりレナード家は姉さまのような天才かつお優しい人間に任せるべきですね! ボクなんかが出る幕はありません!」
たぶん、アルフは純粋な善意でそんなことを口走っているわけであり……。
ど、どうしてこうなった?
あー、つまり、やっぱり、想像通り。私を産んだからお母様はおかしくなったんですねー。
と、少々悲しくなってしまった私だけど、喜びを隠しきれていないお父様を前にしてそんなことを口にするほどK.Y(空気読めない)ではない。前世とはいえ私は璃々愛とは違うのだ。
お母様は私に呪いをかけていたことを覚えていたらしい。ぷるぷると震えながら何度も謝ってくるお母様に対してどんな対応を取ればいいのか分からなかった私は……逃げた。とりあえずお父様に丸投げして、後日またお母様と話し合うということにした。
いや9歳児に臨機応変な対応を迫られても無理だからね?
前世の記憶? シリアス・デストロイヤーの経験なんか当てになるものか。
私の混乱を察してくださったお父様は、お母様を連れて、とりあえず(領地で仕事をしている)リースおばあ様のところに向かった。
部屋に残されたのは私と、ナユハ。そしてアルフだ。
今日のメインはアルフのはずだったのにね。すっかり影が薄くなってしまった。すまん弟よ。今度璃々愛に出会ったらぶん殴っていいから。女だからと容赦するな。私が許す。
しかし真面目な話をする空気ではないね、まったく。こうして対面するのは数年ぶりなのにさ。
さて、どうしたものかと私がナユハに視線を向けると、彼女は自信満々に頷いてみせた。おぉ、あの短い時間にアルフの説得を成功させたらしい。さすがは私のナユハたんだ。
ナユハがアルフを支えながら立ち上がらせてくれた。
身長は、私より少し高いくらい。
引きこもってあまり食事を取っていないはずなのだけど、それでも三歳年上の私より大きくなっちゃったか。
嬉しい反面、ちょっと寂しいかも。まだお姉ちゃんらしいこと何もできていないのにね。
私がしみじみしているとアルフが独白を始めた。
そう、独白だ。
誰も頼んでいないのに、アルフは早口で私を称える言葉を羅列し始めた。
「お姉様は凄いです。お姉様は天才です。お姉様の弟であることがボクの人生における至上の喜びです」
……はい?
アルフさん、キミはそんなキャラだったっけ? ちょっとお姉ちゃんっ子だった記憶はあるけど、常識の範囲内だったはず。決して、『お姉様は神様です』とか口にしちゃう子じゃなかったよね!?
私が混乱しつつもナユハに目を向けると、彼女は誇らしげに『むふー!』と鼻から息を吐いた。
嫌な予感。
「な、ナユハさん。一体何をしたのかな?」
「うん、リリアから頼まれたから。リリアの素晴らしさを語り尽くしてあげたよ。いや語り尽くすなんて不正確だったね。リリアの素晴らしさはたとえ一日かけても語り尽くせないのだから」
ナユハさーん!?
私が頼んだのは同じ『自分の出産の時に母親が亡くなった』という経験からの助言なのですけど!? どうして私の素晴らしさ(?)を語っちゃったのかな!?
いいや、正確にお願いしなかった私も悪い――にしても! もうちょっとこうさぁ! あるんじゃないのかなぁうまいやり方が!?
どうしてこうなった!?
◇
とりあえず。ストックしておいたポーションを飲ませたらアルフは落ち着きを取り戻した。状態異常だったみたい。あの短時間で洗脳に近いことをやっちゃうとか凄いなナユハ。
さっきまでの色々をなかったことにして向かい合う私とアルフ。
まだお母様の死に関して負い目があるのかな、と不安になったけれど。その辺はナユハが(あれでも)ちゃんと説得してくれていたおかげでだいぶ改善したらしい。
あと、短時間ながらラブラブな雰囲気をダダ漏れさせていたお父様とお母様を見て色々と諦めたんじゃないかな?
両親がバカップルって、子供としてはいたたまれなくなるよね。小難しいことを考えるのがアホらしくなるほど。
……お父様、今は姉御とシャーリーさんをはべらせて(?)いるんだけど、その辺はどうするんだろうね?
娘としてとても面白――じゃなくて、楽しみ――でもなくて、愉悦――でもなくて、責任。そう、きちんと責任感を持って対応をしてもらいたいと思うのですよ。うん、まったく関係のない話だがこの国は重婚O.K.だ。産めよ増えよ地に満ちよ。
……だいぶ脱線したけれど、私は当初の予定通りアルフに後継者問題が起こりかけていることを話した。
いきなり本題に入ってしまったのは、久しぶりに顔を合わせた弟と小粋な会話ができる自信がなかったせいだ。あと空気。空気を変えたかった。
「それは、仕方ないと思います。ボクなんかじゃレナード家の当主なんて……」
少し悲しそうに眉尻を下げるアルフ。
う~ん、お母様の件は解決したのに、なんでこんなに自信がないのかな? 『ボクなんかじゃ』って、地頭の良さなら私を遙かに超えると思うんだけど?
「アルフレッド様はなぜそこまで自信がないのですか?」
わーナユハがド直球で聞いちゃった。
アルフが恐る恐るといった様子で私を見る。
あれ? もしやまた私が原因?
「だって、ボクは姉さまみたいに銀髪じゃないし。姉さまみたいに特別な瞳ももっていないし。姉さまより魔法は苦手、運動もダメ。人と話すのも苦手で女の子からモテないし……」
私が原因かー。
そしてアルフよ、私より勉強はできるという自覚はあるんだね。その強かさ、間違いなくお父様の血だと思うよ?
というか、私って女の子からモテモテっていう認識なの? そこのところを詳しく聞きたいのだけど……。あの、ナユハさん? 『その通りです』と深く何度も頷くのは止めてもらえません?
私は女たらしじゃない!
『強く否定している時点でねー』
『自覚あるんじゃないのかねー』
『よっ、前世も今世も男にまったく縁のない人生ー』
うるさいわ!
妖精さんが見えないアルフの手前、内心で突っ込みつつ無詠唱雷魔法を撃ち込む私である。
急な雷鳴に驚き、辺りを見渡すアルフ。あれー、雷かなー、空は晴れているのに不思議だねー。
妖精さんはどうせダメージ無しだからいったん置いておいて。アルフの自信のなさは、天才と称される私が姉であるせいらしい。
どうしたものかね。
こればかりは『天才』側にいる私が何を言っても無駄だろう。
でも、弟だもの。
アルフのために何かしてあげたい。
…………。
……よし。
こういうときは運動だ。
身体を動かせば万事解決する。
「脳筋ですね」
ちょっとナユハの言葉のナイフが胸にぐっさり刺さったけど、私は負けない。
そう、こんなじめじめした暗い部屋に篭もっているから思考もマイナス方面に行ってしまうのだ。昔みたいに外に出て、元気に遊んで。お腹をすかせてご飯をお腹いっぱい食べれば悩みなんて吹き飛ぶに違いない。
「ガルド様の弟子ですものね」
ナユハの毒舌にくじけそうだけど、負けるものか。
よし、さっそくアルフと昔みたいに野原を駆け回って――
無理か。
ずっと引きこもっていたアルフの手足は痩せ細っていて。いきなり外に出て走らせたら転んでケガをしてしまうかもしれない。治癒魔法で治せるけど、だからといってケガをさせていい理由にはならないのだ。
「……よし、じゃあ、今日のところはリハビリもかねて絶景を見に行こうか」
まずは外に出る楽しさを思い出してもらおう。
「りはびり……。絶景、ですか?」
首をかしげるアルフの手を取り、私は窓辺まで移動して貪り喰らうものを起動させた。
光り輝く神話の帯が窓から空に向かって伸びていく。
私は軽い足取りで光の帯に乗っかる。感触は、意外としっかりしている。地面よりはコンクリートに近い感じ。
ドラゴンの背骨でも楽々折れる貪り喰らうものなので、私程度が乗ったところでびくともしない。
神話に登場した伝説上の存在に土足で乗っていいのかな、と思わなくもないけれど。前世の前世が『今はリリアの持ち物なんだし、いいんじゃないか?』と言っているのでたぶん大丈夫。
アルフは戸惑っていたけれど、そこはろくな運動もしていない引きこもり君である。日々鍛練を重ねている私のパワーに抵抗することはできず光の帯に足を乗せた。
ナユハが続いたのを確認し、ゆっくりと歩き出す。突風でバランスを崩さないように結界で周りを囲いつつ、貪り喰らうものを伸ばしてちょっとした空中散歩を楽しむ。
レナード領の主要産業は鉱山であり、他はさほど開発が進んでいるわけではない。レナード商会の本拠地も王都だし。
比較的王都から近いせいか、若い人間は王都に行ってしまうので人口も少なめ。自然が多く、のんびりとした雰囲気が漂う。それが私の生まれたレナード領だ。
私はレナード領が好きだ。
アルフも、きっと好きだろう。
……もしかしたら。
自分が守るべき『領地』を目にしたら考えが変わるかもしれない。次期領主としての責任感が芽生えるかもしれない。そんな淡い期待も抱いていたりする。
私はふと目に付いた養鶏場を指差した。
「鶏屋のゼベッタおじいさん、覚えている? 昔、アルフが鶏に追われて大変だったよね。まだ幼かったから覚えてないかな?」
当時3歳だからちょっと不安だったけど、アルフはちゃんと覚えていた。やっぱり頭がいいね私の弟は。
「……姉さまが追い払おうとして、危うく丸焼きにするところでしたよね」
「そんなことは忘れるがいいさ。……ゼベッタおじいさんね。3年前にお父さんからお金を借りて養鶏場を拡大したんだ。今ではゼベッタ印のタマゴは大人気。予定より早くゼベッタおじいさんは借金を完済してくれたよ」
貴族が領民に投資するのは珍しいけど、そこはレナード商会。利益が見込まれるならどんどんお金を貸しちゃうのだ。もちろん安心安全低金利で。
「…………」
「あそこにあるでっかいお店は、昔アルフがよく遊んでもらっていたデキチ兄さんが始めたお店。最初は屋台だったとはいえ、まさか14歳でお店を開くとは思わなかったし、成功させちゃうんだから運がいいよねぇ相変わらず」
「……ボクは、今まで何をしていたんでしょうか? みんな、ボクが引きこもっている間にもそれぞれ自分のやるべきことをやっていたというのに」
ありゃ、そうくるか。私だったら『負けてられないね!』ってなるんだけど。
ほんと、自分に自信がないんだね。何か一つでも誇れることがあればまた違うのだろうけど。
勉強は凄いはずなのに。彼にとって勉強とは『努力しなくてもできること』だから誇りにしにくいのだと思う。
「――リリア」
ナユハが少し緊迫感の込められた声を上げた。彼女は睨み付けるように空の一点を見つめていて……。私が視線をそちらに向けると、羽ばたく『何か』を視認することができた。
ワイバーン、かな?
殺気がないから気づかなかったよ。ナユハは目がいいね。
この辺にワイバーンが出るのは珍しい。近くに巣もないはずだし、“はぐれ”のワイバーンかな?
私がそれとなくアルフを背中に隠すと、――殺気を感じた。どうやらワイバーンもこちらに気づいたらしい。
体色は赤いからレッドワイバーンかな? ドラゴンに似ているけれど、後ろ足が細くて、前足があるはずの部分に羽が生えているのが特徴。
この世界のワイバーンはドラゴンの幼体であり、あれも成長すればレッドドラゴンになるだろう。
つまり、後々ワイバーンから前足が生えてくるわけで。
「オタマジャクシみたいなものだね!」
「ワイバーンをオタマジャクシ扱いはひどいと思うよ」
ナユハたんの冷静な突っ込みだった。
ちなみに、この世界にはオタマジャクシもカエルもいる。基本的な生物は地球と共通で、その他に“魔物”がまったく別の系統の生物として存在している形。魔物の方が強いので、絶滅してしまっているものも多い。
普通の動物と魔物の違いは、一般的には体内に魔石を持っていること。上位個体になると魔石にため込んだ魔力を使って魔法を行使できたりする。
で、ワイバーンも例に漏れず魔法が使える。あれはレッドワイバーンなので口から火球を吐いて攻撃してくるだろう。
予想通り。ワイバーンは火球を吐いて攻撃してきた。たしかレッドワイバーンは獲物を丸焼きにして食べるのが好きだと教えられた記憶が。
「ひ!?」
アルフが慌てていたけれど、結界を張っているので慌てる必要はない。……ナユハはもうちょっと慌ててもいいと思うけど。
「リリアのことを信じているから」
何それ照れる。
「あと、これくらいで慌てていたらリリアの友達はやっていられない」
マジすみませんでした。
私が心からの謝罪をしていると結界に火球が衝突。もちろんこちらにはノーダメージだ。
火球が効果無しと察したワイバーンは足の爪と牙による攻撃を選択したらしい。速度を上げてこちらへと接近してくる。
攻撃手段の変更の速さは褒められるけど、相手の力量を見極められない時点で失格だね。
弱肉強食。
自分が勝てない相手に挑む。そんな愚か者に訪れる結末は一つしかない。
「――貪り喰らうもの」
今乗っているものとはまた別に。
空中から光り輝く帯が現れてワイバーンを拘束した。
そのまま、容赦なく首を後ろ方向へと曲げていき――。ボキリ、と。嫌な音と共にワイバーンの脊髄は折れた。まるで小枝を折るように簡単に。
どういう理屈かは知らないけど、貪り喰らうものの力はドラゴンの背骨すら折れるほどに強い。
妖精さんが即座に飛びついてワイバーンをむしゃむしゃしているけれど、私の分の素材を残しておいて……あ、もう食べ終わりましたか。今度からはせめて私に確認を取って貰えると幸いです。
と、ここで私は『きゅぴーん!』ときた。
「うわー、ワイバーンと戦ったせいで魔力が尽きそうだー」
我ながら棒読み。ナユハの『また何かやらかすの?』っていう視線が超冷たい。
しかしアルフは慌ててくれたので、私は足下に展開させていた貪り喰らうものを消した。
必然的に、重力に従って私たちは落ちていく。
「ひ!? ひぃいいいいぃいぃいいいっ!?」
「はぁ……」
絶叫するアルフと、呆れたようにため息をつくナユハたん。冷静にメイド服のスカートを押さえているところが慣れているね。
ちなみに今は絶賛落下中だけど、風魔法の応用で落下速度は少し抑え気味だ。
まぁ空から落ちるのが初めてのアルフは落下速度が遅いことになんか気づいていないみたいだけど。
のんびりとした落下だから、のんびり会話する余裕もある。
「アルフ。助けて欲しいな」
「え?」
「私はもう魔力がないからさ。アルフの魔法で、何とかして欲しいんだ」
はい、嘘です。そもそも貪り喰らうものは魔法じゃないから魔力は使わないし。
ほんと。私ってヒロインのくせに平然と嘘をつくよねー。
アルフは戸惑いをその表情に浮かべていた。
「でも、才能がないボクなんかじゃ……」
自らの茶色い髪をいじっているのはおそらく無意識だろう。
銀髪持ちは偉大なる魔法使いになれる。それは事実だ。
では、茶髪は? 金髪は? 黒髪は?
魔法使いとして大成できないのかと問われれば。私は首を横に振るしかない。
「才能がない? 違うよ。キミの才能を育てられる人間がいなかっただけ。キミの才能を理解できる人間がいなかっただけ」
おばあ様ですら、アルフの才能には気がつかなかった。
ある意味当然。
アルフは“銀髪”じゃないから。おばあ様も本気で魔法使いとしては育成しようとしなかったのだ。姉に“銀髪”である私がいるから尚更に。才能の乏しい魔法よりも、レナード商会の後継者として育てるのを優先したと。
でも、おばあ様は勘違いしている。
銀髪が優れているのはあくまで魔力の総量。
持っているだけで宮廷魔術師になれるとされる稟質魔法の有無はまた別の話だ。
そして私は、左目の力でアルフの稟質魔法を理解していた。
説得力を増すために眼帯を外し、両の瞳でアルフを見据える。
「昔の私は自分の修行で手一杯だったからね。アルフへの教育は他の人に任せていたんだけど……。今は少し余裕があるからね。ちょっとだけ助言してあげようかな」
自信がないのなら、自信を与えればいい。
アルフには、誰も並び立てないほど素晴らしい稟質魔法があるのだから。
「――妄想を現実に。空想を実現し、夢想で世界を塗り替える。それがアルフの稟質魔法だよ。名前を付けるなら、そうだね、“夢想の語り手”かな?」
腕を広げながらそんなことを伝えた私。
アルフの瞳が揺れていた。
その感情が戸惑いなのか、動揺なのか。猜疑なのか高揚なのかは分からない。
でもアルフは口を動かした。
自分自身の力で。
私たちを助けるために。
「――我、夢想を語らん」
ぼふん、と。
衝撃と言うには柔らかすぎる感触が全身を包んでいた。手をついて立ち上がろうとするけれど、ついた手がどんどんめり込んでいってうまく立てない。
私は『それ』から何とか立ち上がり、周囲を確認する。
雲。
そうとしか表現できなかった。
自然現象のそれではなく、絵本に出てくるような白くてふわふわした雲。そんな雲が私たちのクッションとなり落下の衝撃を和らげてくれたようだ。
アルフの稟質魔法によってこの雲は生み出されたのだろう。
自分の想像したものを、強引に現実世界へと顕現させるのがアルフの稟質魔法だから。
何ともメルヘンな救助方法だけど、弟の心が汚れていないようで姉として一安心だね。
アルフは自分がやったことをまだ信じられないのか呆然としている。そんな彼の肩を私は何度も叩いた。
「やったねアルフ! こんなこと私でもできないよ!」
「……ね、姉さまでも?」
「うん。誰にも真似できない、アルフだけの才能だ。自信を持っていいよ。というか持ってくれないと私の立つ瀬がないよねぇ」
たぶん、今の私はだらしなく頬を緩めていると思う。弟がとうとう才能を開花させたのだ! 喜ばない姉がどこにいる!?
……巻き込まれた形になったナユハが『ブラコン……』と小さくつぶやいていた。あ、あれー? ナユハさん、そんな俗な言葉を誰から教えてもらったのかなー?
ま、まぁいいや。これでアルフも自信を持っただろうし、私に対して過度の苦手意識を持つこともないだろう。
いや~今回は久しぶりにうまくいったね! 大団円!
……と、私が大満足していると。
「やっぱり姉さまは凄い! 天才だ!」
うん?
「ボク自身ですら分かっていなかった稟質魔法に気づいていたなんて! さすがです姉さま! 天才であるだけではなく、こんなボクのことまでも気にかけてくれていたなんて!」
あれ? なにやら弟の目がおかしいぞ?
そう、あの目はナユハも浮かべていた……崇拝? っぽい?
「やはりレナード家は姉さまのような天才かつお優しい人間に任せるべきですね! ボクなんかが出る幕はありません!」
たぶん、アルフは純粋な善意でそんなことを口走っているわけであり……。
ど、どうしてこうなった?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
42
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる