20 / 159
7.聞き飽きただろう言葉
1
しおりを挟む
朝食を摂る理央の横顔にみとれながら紅茶を淹れた。
「…俺が飯食ってんの見て楽しいのか、お前」
視線に気付いた主人に咎められ、目を伏せる。
「申し訳ありません。…理央は綺麗ですから、つい目で追ってしまいます。失礼致しました」
「綺麗なわけねーだろ。男だ、俺は」
「綺麗です。俺にとっては」
眉を寄せた理央に、俺は打たれることを覚悟したが、理央は手をあげなかった。
食事を終えた理央に抑制剤を差し出す。
ため息を吐きながら受け取り、水のグラスに口をつける理央を、俺は目を伏せながら盗み見た。
怠そうにグラスを置いた理央から昨夜よりも濃い甘い匂いが漂う。
「理央、」
「ん」
「失礼します」
前髪を払い、額と首の付け根に手のひらをあて、体温を確かめる。
「…少し熱がありますね。それに抑制剤の効果が少し弱いですか。合っていないのかもしれません。神木の医師を呼びましょう。今日は学校は休んで下さい」
「道理で怠い…」
椅子の背に体重を預け、天井を仰ぐ理央の首のチョーカーが目についた。
自分が付けた噛み痕がいくつか残っている。
大丈夫だ。
抑制剤を飲んでいれば番うことはない。
「理央、寝室へ」
「あぁ、」
立ち上がろうとしてもたつき、倒れそうになる理央を抱き寄せて抱えた。
「…済まない」
「ヒートはあなたが考えるよりはるかに体力を消耗します。番がいなければ尚更。もう少し注意してください」
「…」
声を発することも億劫そうに頷く理央を寝室のベッドにおろし、服を脱がせてシーツをかける。
苦し気に吐息する理央の髪に指を通し、眉をひそめた。
ヒートでの消耗がこれほどまで激しいとは、俺も考えていなかった。
自分の配慮の甘さに舌打ちを耐える。
もっと気を付けなければならない。
「…剱」
「はい」
差し出された白い手を取り、甲に唇を落とした。
手を引かれてベッドに乗り上げれば、理央は俺の腿に頭をのせる。
俺の膝枕では硬いだろうに。
そう思いながら理央の髪を撫でた。
「どこか、…触っててくれ」
「…理央、」
「落ち着く、…から、」
そのまま目を閉じ、眠ってしまった理央の肩を撫でながら携帯を取り出し、学校へ連絡をいれ、それから神木家の理央の主治医に連絡をとる。
『頭痛や嘔吐の症状は』
「特にみられません。酷く怠そうにしてはいらっしゃいますが』
『そうか。では体温は?』
理央の首筋に手のひらを押し当てた。
ぼんやりと目を開け、俺を見上げる理央の前髪を払い、手のひらで両目を覆う。
『わかった。緊急性はないようだからひとまず睡眠を。ヒート中のオメガは一人寝が苦手なのでね。昼食を済ませた頃に伺おう』
「了解しました」
通話を切り、理央の目を覆っていた手を離すと、逆に手を掴まれて面喰らう。
「理央、」
「…さむい」
俺の手を胸に抱き込み、呟いた理央をシーツにくるんで抱き上げ、自分の膝にのせた。
室温は最適化されているはずだが、熱のせいでそう感じるのだろう。
それにしても理央は軽かった。
これではヒートの度に消耗してしまうのも仕方がない。
「理央、念のために訊きますが頭痛や吐き気は?」
「…ない、」
シーツの端から伸びる細い脚が酷く目につく。
「…俺が飯食ってんの見て楽しいのか、お前」
視線に気付いた主人に咎められ、目を伏せる。
「申し訳ありません。…理央は綺麗ですから、つい目で追ってしまいます。失礼致しました」
「綺麗なわけねーだろ。男だ、俺は」
「綺麗です。俺にとっては」
眉を寄せた理央に、俺は打たれることを覚悟したが、理央は手をあげなかった。
食事を終えた理央に抑制剤を差し出す。
ため息を吐きながら受け取り、水のグラスに口をつける理央を、俺は目を伏せながら盗み見た。
怠そうにグラスを置いた理央から昨夜よりも濃い甘い匂いが漂う。
「理央、」
「ん」
「失礼します」
前髪を払い、額と首の付け根に手のひらをあて、体温を確かめる。
「…少し熱がありますね。それに抑制剤の効果が少し弱いですか。合っていないのかもしれません。神木の医師を呼びましょう。今日は学校は休んで下さい」
「道理で怠い…」
椅子の背に体重を預け、天井を仰ぐ理央の首のチョーカーが目についた。
自分が付けた噛み痕がいくつか残っている。
大丈夫だ。
抑制剤を飲んでいれば番うことはない。
「理央、寝室へ」
「あぁ、」
立ち上がろうとしてもたつき、倒れそうになる理央を抱き寄せて抱えた。
「…済まない」
「ヒートはあなたが考えるよりはるかに体力を消耗します。番がいなければ尚更。もう少し注意してください」
「…」
声を発することも億劫そうに頷く理央を寝室のベッドにおろし、服を脱がせてシーツをかける。
苦し気に吐息する理央の髪に指を通し、眉をひそめた。
ヒートでの消耗がこれほどまで激しいとは、俺も考えていなかった。
自分の配慮の甘さに舌打ちを耐える。
もっと気を付けなければならない。
「…剱」
「はい」
差し出された白い手を取り、甲に唇を落とした。
手を引かれてベッドに乗り上げれば、理央は俺の腿に頭をのせる。
俺の膝枕では硬いだろうに。
そう思いながら理央の髪を撫でた。
「どこか、…触っててくれ」
「…理央、」
「落ち着く、…から、」
そのまま目を閉じ、眠ってしまった理央の肩を撫でながら携帯を取り出し、学校へ連絡をいれ、それから神木家の理央の主治医に連絡をとる。
『頭痛や嘔吐の症状は』
「特にみられません。酷く怠そうにしてはいらっしゃいますが』
『そうか。では体温は?』
理央の首筋に手のひらを押し当てた。
ぼんやりと目を開け、俺を見上げる理央の前髪を払い、手のひらで両目を覆う。
『わかった。緊急性はないようだからひとまず睡眠を。ヒート中のオメガは一人寝が苦手なのでね。昼食を済ませた頃に伺おう』
「了解しました」
通話を切り、理央の目を覆っていた手を離すと、逆に手を掴まれて面喰らう。
「理央、」
「…さむい」
俺の手を胸に抱き込み、呟いた理央をシーツにくるんで抱き上げ、自分の膝にのせた。
室温は最適化されているはずだが、熱のせいでそう感じるのだろう。
それにしても理央は軽かった。
これではヒートの度に消耗してしまうのも仕方がない。
「理央、念のために訊きますが頭痛や吐き気は?」
「…ない、」
シーツの端から伸びる細い脚が酷く目につく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる