虚口の犬。alternative

HACCA

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7.聞き飽きただろう言葉

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朝食を摂る理央の横顔にみとれながら紅茶を淹れた。

「…俺が飯食ってんの見て楽しいのか、お前」

視線に気付いた主人に咎められ、目を伏せる。

「申し訳ありません。…理央は綺麗ですから、つい目で追ってしまいます。失礼致しました」

「綺麗なわけねーだろ。男だ、俺は」

「綺麗です。俺にとっては」

眉を寄せた理央に、俺は打たれることを覚悟したが、理央は手をあげなかった。

食事を終えた理央に抑制剤を差し出す。

ため息を吐きながら受け取り、水のグラスに口をつける理央を、俺は目を伏せながら盗み見た。

怠そうにグラスを置いた理央から昨夜よりも濃い甘い匂いが漂う。

「理央、」

「ん」

「失礼します」

前髪を払い、額と首の付け根に手のひらをあて、体温を確かめる。

「…少し熱がありますね。それに抑制剤の効果が少し弱いですか。合っていないのかもしれません。神木の医師を呼びましょう。今日は学校は休んで下さい」

「道理で怠い…」

椅子の背に体重を預け、天井を仰ぐ理央の首のチョーカーが目についた。

自分が付けた噛み痕がいくつか残っている。



大丈夫だ。

抑制剤を飲んでいれば番うことはない。



「理央、寝室へ」

「あぁ、」

立ち上がろうとしてもたつき、倒れそうになる理央を抱き寄せて抱えた。

「…済まない」

「ヒートはあなたが考えるよりはるかに体力を消耗します。番がいなければ尚更。もう少し注意してください」

「…」

声を発することも億劫そうに頷く理央を寝室のベッドにおろし、服を脱がせてシーツをかける。

苦し気に吐息する理央の髪に指を通し、眉をひそめた。

ヒートでの消耗がこれほどまで激しいとは、俺も考えていなかった。

自分の配慮の甘さに舌打ちを耐える。

もっと気を付けなければならない。

「…剱」

「はい」

差し出された白い手を取り、甲に唇を落とした。

手を引かれてベッドに乗り上げれば、理央は俺の腿に頭をのせる。

俺の膝枕では硬いだろうに。

そう思いながら理央の髪を撫でた。

「どこか、…触っててくれ」

「…理央、」

「落ち着く、…から、」

そのまま目を閉じ、眠ってしまった理央の肩を撫でながら携帯を取り出し、学校へ連絡をいれ、それから神木家の理央の主治医に連絡をとる。

『頭痛や嘔吐の症状は』

「特にみられません。酷く怠そうにしてはいらっしゃいますが』

『そうか。では体温は?』

理央の首筋に手のひらを押し当てた。

ぼんやりと目を開け、俺を見上げる理央の前髪を払い、手のひらで両目を覆う。

『わかった。緊急性はないようだからひとまず睡眠を。ヒート中のオメガは一人寝が苦手なのでね。昼食を済ませた頃に伺おう』

「了解しました」

通話を切り、理央の目を覆っていた手を離すと、逆に手を掴まれて面喰らう。

「理央、」

「…さむい」

俺の手を胸に抱き込み、呟いた理央をシーツにくるんで抱き上げ、自分の膝にのせた。

室温は最適化されているはずだが、熱のせいでそう感じるのだろう。

それにしても理央は軽かった。

これではヒートの度に消耗してしまうのも仕方がない。

「理央、念のために訊きますが頭痛や吐き気は?」

「…ない、」

シーツの端から伸びる細い脚が酷く目につく。
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