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8.神木隼斗
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理央のヒートが去った翌日、俺は朝一で暁本家に参じた。
理央の父である理聖様の私室を訪えば、彼は物憂げな雰囲気を纏ってデスクにつき、書類に目を通しながら「よく来たな、大和」と俺に労いの言葉をかける。
理央と同じ、美しい夜色の髪が耳にかかる横顔に返した。
「お早う御座います、理聖様」
「学校は」
「お休みをいただきました」
理聖様が顔をあげ、一つ息を吐く。
「…答えは出たか」
一瞬何の話をされているのか思い当たらなかった自分の愚鈍さにうんざりしながら床を眺めた。
「…自分は、何を捨てても理央様にお仕えしたく」
「バース性を捨てても、ということか」
「はい」
デスクに頬杖をつき、理聖様が書類を置く。
「…理央の様子は」
「抑制剤とあまり相性がよろしくない様子でした。倦怠感が酷いようで」
「…そうか」
思案するように口元を手のひらで覆い、デスクの木目を眺めている彼の頬に落ちる睫毛の影を見つめていた。
目を伏せ、切り出す。
「…ですが、理央様にとってアルファ性の剱である自分はあまり好ましくないようです。神木の医師の話では抑制剤が効き難い体質である可能性も高いとのこと。経過を見て、…場合によっては自分は理央様の剱から外れます」
俺の口端の傷に目をやり、ため息を吐いて、理聖様は「どうしても理央の剱でいたいのなら番を持て」と言った。
「…は、」
「番がいるアルファに、オメガは興味を持たない。理央がお前に手をあげることもなくなる。お前のIDにオメガデータベースへのアクセス権限を付加しておこう」
「…そんなことが、」
「上層のアルファに優秀なオメガを紹介して欲しいと頼まれることも多い。運命であればアルファ性の誕生確率も上がる」
「…はい」
「まぁ、アルファは番を持つ必要は特に無い。お前は優秀だ、大和。剱から外れるのもいいだろう。後はお前の判断に任せる」
「…有り難うございます」
疲弊した様子で椅子の背に凭れかかり、天井を仰ぐ姿が、理央と酷似していた。
そのまま暁本家の旧自室のマシンから個人端末IDでオメガデータベースに接続し、羅列された写真と文字を頭にいれる。
一通り眺め、席を立つ頃には陽が沈みかけていた。
理聖様の言うように、番を持つべきなのだろう。
しかし、理央にフリーのアルファとして意識してもらえなくなっては、今のように理央に触れさせてもらえることもなくなるのだろうと思うと、躊躇う。
そんな自分が笑えた。
おそらくは。
理央が俺の運命だ。
ヒートが去っても甘い薫りがする。
ともすれば理央に触れようと手がのびる。
理央の父である理聖様の私室を訪えば、彼は物憂げな雰囲気を纏ってデスクにつき、書類に目を通しながら「よく来たな、大和」と俺に労いの言葉をかける。
理央と同じ、美しい夜色の髪が耳にかかる横顔に返した。
「お早う御座います、理聖様」
「学校は」
「お休みをいただきました」
理聖様が顔をあげ、一つ息を吐く。
「…答えは出たか」
一瞬何の話をされているのか思い当たらなかった自分の愚鈍さにうんざりしながら床を眺めた。
「…自分は、何を捨てても理央様にお仕えしたく」
「バース性を捨てても、ということか」
「はい」
デスクに頬杖をつき、理聖様が書類を置く。
「…理央の様子は」
「抑制剤とあまり相性がよろしくない様子でした。倦怠感が酷いようで」
「…そうか」
思案するように口元を手のひらで覆い、デスクの木目を眺めている彼の頬に落ちる睫毛の影を見つめていた。
目を伏せ、切り出す。
「…ですが、理央様にとってアルファ性の剱である自分はあまり好ましくないようです。神木の医師の話では抑制剤が効き難い体質である可能性も高いとのこと。経過を見て、…場合によっては自分は理央様の剱から外れます」
俺の口端の傷に目をやり、ため息を吐いて、理聖様は「どうしても理央の剱でいたいのなら番を持て」と言った。
「…は、」
「番がいるアルファに、オメガは興味を持たない。理央がお前に手をあげることもなくなる。お前のIDにオメガデータベースへのアクセス権限を付加しておこう」
「…そんなことが、」
「上層のアルファに優秀なオメガを紹介して欲しいと頼まれることも多い。運命であればアルファ性の誕生確率も上がる」
「…はい」
「まぁ、アルファは番を持つ必要は特に無い。お前は優秀だ、大和。剱から外れるのもいいだろう。後はお前の判断に任せる」
「…有り難うございます」
疲弊した様子で椅子の背に凭れかかり、天井を仰ぐ姿が、理央と酷似していた。
そのまま暁本家の旧自室のマシンから個人端末IDでオメガデータベースに接続し、羅列された写真と文字を頭にいれる。
一通り眺め、席を立つ頃には陽が沈みかけていた。
理聖様の言うように、番を持つべきなのだろう。
しかし、理央にフリーのアルファとして意識してもらえなくなっては、今のように理央に触れさせてもらえることもなくなるのだろうと思うと、躊躇う。
そんな自分が笑えた。
おそらくは。
理央が俺の運命だ。
ヒートが去っても甘い薫りがする。
ともすれば理央に触れようと手がのびる。
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