虚口の犬。alternative

HACCA

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3.番えないアルファ

3

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「剱、お前は、誰のものだっけ」

「理央のものです」

「……だよな」

そう呟いて、理央が二条に目をやる。

「……帰れ。車出してやるから。押し掛けたら断れねーと思ったんだろう?お前みたいな汚ねー奴が剱に触るんじゃねーよ。汚れる」

「な、……っ、」

理央に掴みかかろうとした二条の手を掴んで止めた。

「教科書ありがとう、二条。車を出させるから、ちょっと待ってて」

それから理央の手首に口付け、「直ぐに戻ります」と告げて一階の使用人室に向かう。

車を一台手配し、案内役のメイドを一人連れて二階に戻った。

口元を手で押さえ、下を向いている理央に気付いて抱き寄せる。

「……理央、」

「……気持ち悪ぃ、」

理央の耳を塞いで自分の胸に押し付け、まだ何ごとかを喚いている二条を部屋から追い出す。

「ごめん、二条。俺はここで。メイドが車まで案内するから」

「……っ剱、」

答えはきかずにドアを締め、カードロックまで掛けた。



理央を抱えて寝室に向かい、ベッドに下ろした。

先ほどかけたシャツの釦を外し、抱き締める。

「っは、アイツ、嘘ばっか吐きやがって、」

「……理央、……」

夜色の理央の髪に指を通し、口付けた。

「吐きそう、」

「……吐きますか?」

「……いい、」

眼帯を外されて理央の首筋を吸った。

「血が濃いというのもいいことばかりではありませんね」

「……他人の虚言に拒否反応が出んのなんて俺くらいだ」

「……それが『暁』の『血』でしょう」

「血が濃過ぎるんだと。父さんは顔にも出ねー」

「俺は絶対に嘘を言いません、理央」

そう告げたら理央が苦笑する。

「それが『剱』の『血』だろうが」

「……好きです、理央」

ゆっくりと息を吐いた理央の手首にもう一度口付けた。

「……知ってる」

「落ち着きましたか」

「……あぁ、」

優しく抱き寄せられて、耐えきれずに理央のしなやかな身体を抱き締めた。

甘い、匂いがする。

「理央、」

「ん」

理央の舌を追いながら、俺は冷えてしまっただろう紅茶のことを考えていた。





「理央、抑制剤は絶対に忘れないで下さい」

「……あぁ、」

「此方は頓服薬です。異常を感じたら直ぐに噛んで下さい」

「わかってる」

鬱陶しそうに眉を寄せる理央の制服の釦を掛ける。

カラーにかかる襟足を外に出した瞬間、昨夜の甘い香りが鼻腔を掠め、首筋に口付けた。

平常時でも僅かに纏っているというオメガのフェロモン。

理央は嫌がりもせず、俺の好きにさせてくれた。

俺のものには絶対にならない、アルファのようなオメガ。

理央の指先が俺の頬を撫でる。

膝を折れば俺の左の瞼に柔い唇の感触。

俺の制服のポケットから眼帯を取り出し、理央は俺の左耳に帯をかけた。

片目で主人を見上げれば、理央はその白い指先で俺の前髪を払い、口付ける。

俺はただ夢中で理央の舌を吸った。



「……剱」

「おはよう、二条。教科書、悪かったね」

理央を教室まで送り、自分のクラスのドアを開ければ、二条が俺の横に並んだ。

「ううん。ねぇ剱、うちにおいでよ。暁じゃなくたって剱の主人にはなれるでしょ」

「なれないよ。俺は理央のものだしね」

あの日、大広間で理央の手を取り、夜色の双眸に映る自分を見た時から。

俺は、理央のものだ。
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