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9.あれは、俺のオメガだ
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しおりを挟む「繰り返すが試験は終了してるが外部には出ない。前回渡したものより効果も高いがヒート中の理央相手だと理性が保てる程度だ」
「…有り難うございます」
「理央を…、番にしたいと思わないのか、お前は」
なぜ、皆同じことを訊く。
俺には選択肢などないと、皆知っているはずだろうに。
「…思って、叶うのですか」
「大和、」
「何度言わせる気ですか。俺は貴方とは立場も血筋も違います。思ったところで叶う可能性は無いのですよ」
「それは答えになってない」
吉良の挑発するような低い声に苛立つ。
「叶うのなら疾うに番にしていますよ。…貴方が触れる前に」
眉をひそめた吉良の表情に、感情的になっている自分に気付いて息を吐いた。
「…申し訳ありません。…ただの嫉妬です。自分は貴方のように理央様に愛されてはおりません。側に置いていただくには、剱としてお仕えするほかないのです」
その役目すら、吉良に奪われようとしている。
「…理央はお前を好きだと思うが」
「そう、であればよかったのですが。番がいない間は自分でもフリーのアルファとして役に立つかと思ったのですが…もう、フリーのアルファとしても必要無いようです。他のメスを相手にしてもいいと、言われました」
以前はあれほど、他のメスの匂いを嫌がったのに。
治りかけた口端を、親指の腹で撫でた。
「…それは、お前が理央に触れてやらないからだろう」
「俺は剱です。本来、主人の手以外に触れることは許されておりません。まして主人が必要としないのに主人に触れることなど」
同じアルファでも、吉良と俺では全てが違う。
「…そうか」
「理央様のお加減はどうですか」
「軽い食事は摂らせた。よく寝てる」
「…そうですか。明日は、…」
「様子を見て無理そうなら休ませよう。そのときは連絡する。迎えに来てやれ」
「…よろしくお願い致します」
剱として側に置いていただけたら。
もうそれ以上は望まない。
吉良と番になっても、理央は俺の主だ。
頭では冷静にそう思っている。
なのにアルファの本能はそれを拒否する。
理央を番にして俺だけの美しく、高潔な主人を手に入れたい。
あの、アルファのようなオメガが欲しい。
吉良のものになったオメガなど、もはや価値はない。
「大和?」
吉良の声にハッとする。
「…はい、」
「大丈夫か」
「…ええ、」
「…顔、見ていくか」
「…いえ、…理央様をよろしくお願い致します」
今の理央には、吉良が必要だろう。
俺は邪魔にしかならない。
右手の薬指のリングを外し、吉良に差し出す。
「?、何だ」
「理央様のチョーカーのキーです。ガーゼを替えて差し上げてください。それと、入浴の際にも必要でしょう」
「…どうしてお前が持ってる」
「…サイズが合わないようで、…俺がお預かりしていただけです」
吉良に頭を下げ、踵を返す。
エントランスの端で後部座席のドアを開けて待つ神木のもとへ向かった。
「理央はどうした?」
「御休みだそうです」
「そうか」
車に乗り込み、窓の外を眺める。
車を発進させ、神木が呆れたようにため息を吐いた。
「…理央が心配か」
「当然です」
「理央は子供ではないだろう」
「アルファであって下さればよかった。そうすれば誰にも手折られることはなかった」
「アルファのようなオメガだ。誰もがアルファだと想定していた。もともと、オメガの番が用意されていたのだからね。身体的にもアルファにしかみえない。そしてあのカリスマ。オメガとしての発達が遅かったせいもある。通常であれば発情期を迎えるのは遅くとも中学時代だ」
「…理央様がオメガだと知ってから、主人をアルファとして見ている瞬間があることに気付きました。自分は剱であり、理央様に仕える立場であるはずなのに、気付けば主人に触れようとしている。…俺は自分が恐ろしい。それでも理央様のお側でお仕えしたいと望む自分は、おそらく理央様の剱にも番にもなれないものなのでしょう」
「番を持てばいい」
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