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10.愛してやまない
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放課後、廊下の窓から理央が車に乗るのを見届け、校舎を出る。
校門前で目の前に滑り込んだ車の運転席には、神木が座っていた。
「…どうしたんだ」
「自分の配慮が足りませんでした」
「よくわからんが。…まぁ、理央の為なんだろう」
「はい」
肩を竦め、車を発進させる神木から目を逸らし、冬の澄んだ空を見上げる。
「…番は見つかりそうか?」
「番の契約だけを望むオメガは多いときいていましたが詳細条件まで確認すると随分と少ないですね。自分は結婚するつもりはありませんので出来れば契約時以外、会う必要のないオメガを番にと考えておりますがそうそうおりません」
「オメガ側はどうせ番になるならばアルファを産みたいだろうからね。アルファを産んだオメガは色々と優遇される」
「優秀な種が欲しければ精子バンクがあるでしょう」
「そこまで割り切れるオメガは稀だよ。彼らは基本的に庇護を求めるものだからね」
「…貴方は俺の番が見つかって欲しいわけではないんですか」
「いや、失礼」
大して悪いとは思っていない様子の神木にため息を吐いた。
邸に到着し、メイドに理央の帰宅を確認して自室に向かう。
脱いだ制服をクリーニング用のシューターに投げ入れ、シャワーを浴びた。
頭から湯をかぶり、二条の匂いを落とす。
指輪が消えた薬指をぼんやりと眺めた。
「…俺は相応しくない」
自分に言い聞かせる。
「これ以上嫌われたくもない…」
これ以上嫌われてしまっては、剱ですらいられなくなる。
「…吉良の、番になるオメガだ」
俺の運命だと、思った。
だが俺の勘違いだったのだろう。
理央は吉良にヒートを誘発された。
初回性交時、オメガのヒートを誘発するのは運命の番だけだ。
理央の運命は、吉良だった。
「…滑稽だな…」
自分の愚鈍さが酷く可笑しかった。
浴室を出てタオルで髪を拭きながらマシンを起動し、オメガデータベースに接続する。
正直なところ、理央でなければ誰でも良かった。
だが自分の目が止まるのは、黒髪黒目のオメガばかりで、やはりこちらが望むような都合のいいオメガはいない。
半ば諦めつつ眺めていたら内線が鳴った。
『部屋に来い』
「…はい、直ぐに」
※
部屋を訪えば、理央はいつものように自分のデスクでタブレットを眺めていた。
「…ご用件は、…」
「…」
「…」
無言で手を差し出され、無言で膝を折ってその甲に口付ける。
「どうした。今日は様子がおかしい、お前」
「…あなたに嫌われたくないだけです」
すらりと長い脚を組み直してタブレットを置くと、理央は俺の髪に指を通した。
「大和」
「…はい、」
覚えていて下さったのだとその手に擦り寄る。
細い指が眼帯を絡めとり、俺の瞼を撫でた。
「…頼みたいことがある」
理央が、俺などに。
「何なりと」
俺の眼帯をデスクに置き、理央が立ち上がる。
寝室に向かうその背を追った。
俺をベッドに座らせて明かりを落とし、理央も俺の隣に座る。
「…そんなに警戒するな。お前が嫌がることはしない、」
理央は俺の右手を取り、当然のようにチョーカーのキーである鍵指輪を俺の薬指に通した。
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