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13.知ってしまえば
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しおりを挟む「まだ知らないか。俺もさっき親父からの連絡で知ったからな」
「…理聖様は外部のアルファと番わせる気はなかったのでは、…?」
俺の言葉に、吉良が口端を持ち上げて笑う。
「見合いじゃない。顔合わせだ。だがまぁ、理聖さんのことだ。何かあるんだろう」
「あなたは理央様が外部のアルファと番うのはかまわないのですか?」
「は?やるわけないだろう」
顔は笑っていたが、威嚇するように低い声で唸った吉良の目は激情を孕んでいた。
「…しかし相手がアルファでは不安です」
アルファにあてられて一時的ヒートがくる可能性も無くはない。
「理央は断るさ。断ることをわかってて会うわけだ。何かあるに決まってる」
暢気な吉良の態度に思わず眉を寄せた。
「…余計に心配です」
「心配ではあるが、理央だって最大限警戒してあたるだろう」
「…そのかたが理央様の本命である可能性は?」
「ゼロだな」
吉良の回答と同時に四限の終鈴が鳴る。
ひとつ、ため息を吐いてソファから立ち上がった。
「…昼食の準備を」
「大和」
「はい」
「理央が好きか」
「剱として、…愛しております」
アルファとしてではないことを明確に告げる。
「…そうか」
いや、剱としてもアルファとしても、俺自身という人間としてあいしているが。
許されるのは剱としてだけだ。
ゆえに敢えてそう告げた。
※
下校後、理央の部屋に紅茶を届け、神木の部屋を訪った。
俺を見て「僕の言うことをきかなかったのか」とため息を吐いた神木の視線は、俺の首もとにあった。
「…言われた通りにしてしまえば、『剱』でいられる自信がありませんでした」
「どのみち、君が剱でいられる保証などどこにも無い。わかっているだろう」
奥のデスクからソファへと移動する神木を目で追いながら答える。
「…はい」
「で、僕に何の用かな」
座りながら目線で神木の正面のソファを勧められ、素直に腰をおろした。
「『気掛かりなこと』というのは理央様と外部のアルファの顔合わせの件ですか」
「…ああ」
「理聖様は外部のアルファと番わせる気はないと聞いておりましたが、実際のところはどうなのですか」
自分の膝に肘をついて手を組み、神木がひとつ息を吐く。
「先方の父親の強い要望で、『せめて会うだけでも』とのことだ。暁理聖はあまり気乗りしないようだったが、まぁ付き合いの長い家だしむげにもできなかったんだろう」
「…相手がアルファでは不安です」
「まぁ、乗り気なのは父親だけで当の本人はオスのオメガにはあまり興がのらないようだ。君がそこまで警戒するほどのことではないと思うが」
知らず眉を寄せている自分に気付き、下を向いた。
「それは…理央様にお会いしたことが無いゆえのことかと」
「どういう意味だ」
「…アルファであれば…理央様にお会いすればわかります」
「…それは君が『剱である』ゆえの理央の評価だろう。吉良も一族のアルファだ。外部のアルファまでそうとは限らんだろう」
呆れたように肩を竦めて見せる神木に微かに苛立つ。
「優れたオメガを求めるのはアルファの本能です。それがアルファと見紛うオメガならば、アルファなら誰しも番にと求める。オメガの都合など考えず」
神木が眼鏡の奥でそのキツい目を細めた。
「そして君はその本能を遮断剤で抑えているというわけか」
「理央様はヒート中ではなくとも、常に甘い馨りを纏っておられますので。…間違いがあってはいけません。俺のような出来損ないの剱と間違いがあっては理央様に傷が付きます」
「…理央がいいというならいいんだ、大和。理央が君に許すと言ったのなら、むしろそうしてやるべきだ」
「番うことが許されるのなら、俺もそうするでしょう。しかし、それでは俺は理央様にお仕え出来ない。あのオメガを――」
夜色の髪と夜空の双眸。
儚さと意思の強さを感じさせる薄い唇。
頼りない四肢と細い首の感触を唐突に思い出し、言葉に詰まる。
予感があった。
「…理央様を知ってしまえば、自分はもう、剱には戻れないでしょう。殺されようとも自分の番にします」
「大和、…」
瞠目し、一瞬の後、眉を寄せた神木にアルファとして告げる。
「それほどのオメガです、あれは」
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