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15.あいしているとは、告げられなかった
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「…どうされました」
「…遮断剤の効果はどうだね」
「問題なく」
「そうか」
紫香楽はそれ以上なにも言わず、眼鏡の奥の切れ上がった目を伏せてシートに背を預けた。
一礼して車のドアを閉める。
一度自室に戻り、軽い朝食を摂った。
それから理央の部屋に足を向ける。
形だけノックして、寝室のロックを自分のキーで解除した。
体を横にして丸くなり、胎内にいるような穏やかな理央の寝顔を眺め、白い頬を指の背で撫でる。
眼帯を外してサイドチェストに置き、ベッドに腰をおろした。
首に掛けていたネックレスを外してトップの鍵指輪で理央のチョーカーに触れる。
細い首から黒のレザーが滑り落ち、微かな音をたててシーツに落ちるのをぼんやりと眺め、それから蒼白い項に口付けて舌を這わせた。
甘い香りが鼻腔を擽る。
「…あいしています、理央、…」
聞くものはいない。
もはや、『俺が好きか』とすら、質しては下さらなくなってしまった。
出来損ないの剱である俺には、こうして主に知られぬよう、想いを告げるほかない。
「どうか、棄てないでください。…何でもします、…何にでも、なりますから…」
「…ん」
身動いだ理央に、息を詰めた。
目を覚ます気配は無く、安堵と同時に失望する。
そんな自分が酷く滑稽で、理央の細い肢体を抱き締めた。
※
「かしこまりました」と礼をして、理央の部屋を出る紫香楽とすれ違いに部屋に入り、ドアを閉めた。
「体調は如何ですか」
酷く気怠い様子の理央が脚を投げ出すようにして横になっているソファの傍らに片膝をつく。
「問題ねぇ。少し、怠いだけだ」
疲れたようにそう呟く理央に頭を下げた。
「…申し訳ありません」
「何を謝罪する必要がある」
「…俺では何の役にも立てませんでした」
「お前に非はねーよ」
「ですが、――」
理央の白い手が眼帯を取って、俺の左の瞼に口付ける。
理央の吐息は甘い匂いがした。
「…お前は剱だ。側にいてくれるだけでいい」
そう囁いて、理央は俺の髪を撫でる。
俺を怖れるように、震える手で、そっと。
「…理央」
俺はあなたの剱であるはずなのに。
「迷惑をかけた。すまない」
「迷惑など、…俺に出来ることなら何でもお申し付けください」
祈る気持ちでそう告げた。
細い腕を持ち上げ、理央が俺の頬を手のひらで挟む。
目を閉じ、その手に擦り寄った。
瞬間、口付けられた。
甘い唾液に理性がとびそうになる。
柔い下唇を食んで目を開けた。
「…寝よう」
「理央、…」
「…それだけでいい」
ソファから立ち上がり、俺の手を引いて立ち上がらせ、理央は寝室に向かった。
「…」
なにも言えず、されるがまま理央の背を追う。
「大和」
ベッドに横になり、俺を呼ぶ理央の手首に口付けた。
俺の胸に額を押し付け、甘えて見せる理央を感情のまま、思い切り抱き締める。
小さく息を吐き、人に馴れた動物のように身を寄せてくる理央は、愛しい以外の何ものでもなかった。
理央の真っ直ぐで艶やかな黒髪に指を通し、額に口付ける。
理央の華奢な肩を手のひらで撫でた。
その俺の手を取って、理央が指先にキスする。
「理央、」
「…遮断剤の効果はどうだね」
「問題なく」
「そうか」
紫香楽はそれ以上なにも言わず、眼鏡の奥の切れ上がった目を伏せてシートに背を預けた。
一礼して車のドアを閉める。
一度自室に戻り、軽い朝食を摂った。
それから理央の部屋に足を向ける。
形だけノックして、寝室のロックを自分のキーで解除した。
体を横にして丸くなり、胎内にいるような穏やかな理央の寝顔を眺め、白い頬を指の背で撫でる。
眼帯を外してサイドチェストに置き、ベッドに腰をおろした。
首に掛けていたネックレスを外してトップの鍵指輪で理央のチョーカーに触れる。
細い首から黒のレザーが滑り落ち、微かな音をたててシーツに落ちるのをぼんやりと眺め、それから蒼白い項に口付けて舌を這わせた。
甘い香りが鼻腔を擽る。
「…あいしています、理央、…」
聞くものはいない。
もはや、『俺が好きか』とすら、質しては下さらなくなってしまった。
出来損ないの剱である俺には、こうして主に知られぬよう、想いを告げるほかない。
「どうか、棄てないでください。…何でもします、…何にでも、なりますから…」
「…ん」
身動いだ理央に、息を詰めた。
目を覚ます気配は無く、安堵と同時に失望する。
そんな自分が酷く滑稽で、理央の細い肢体を抱き締めた。
※
「かしこまりました」と礼をして、理央の部屋を出る紫香楽とすれ違いに部屋に入り、ドアを閉めた。
「体調は如何ですか」
酷く気怠い様子の理央が脚を投げ出すようにして横になっているソファの傍らに片膝をつく。
「問題ねぇ。少し、怠いだけだ」
疲れたようにそう呟く理央に頭を下げた。
「…申し訳ありません」
「何を謝罪する必要がある」
「…俺では何の役にも立てませんでした」
「お前に非はねーよ」
「ですが、――」
理央の白い手が眼帯を取って、俺の左の瞼に口付ける。
理央の吐息は甘い匂いがした。
「…お前は剱だ。側にいてくれるだけでいい」
そう囁いて、理央は俺の髪を撫でる。
俺を怖れるように、震える手で、そっと。
「…理央」
俺はあなたの剱であるはずなのに。
「迷惑をかけた。すまない」
「迷惑など、…俺に出来ることなら何でもお申し付けください」
祈る気持ちでそう告げた。
細い腕を持ち上げ、理央が俺の頬を手のひらで挟む。
目を閉じ、その手に擦り寄った。
瞬間、口付けられた。
甘い唾液に理性がとびそうになる。
柔い下唇を食んで目を開けた。
「…寝よう」
「理央、…」
「…それだけでいい」
ソファから立ち上がり、俺の手を引いて立ち上がらせ、理央は寝室に向かった。
「…」
なにも言えず、されるがまま理央の背を追う。
「大和」
ベッドに横になり、俺を呼ぶ理央の手首に口付けた。
俺の胸に額を押し付け、甘えて見せる理央を感情のまま、思い切り抱き締める。
小さく息を吐き、人に馴れた動物のように身を寄せてくる理央は、愛しい以外の何ものでもなかった。
理央の真っ直ぐで艶やかな黒髪に指を通し、額に口付ける。
理央の華奢な肩を手のひらで撫でた。
その俺の手を取って、理央が指先にキスする。
「理央、」
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