虚口の犬。alternative

HACCA

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15.あいしているとは、告げられなかった

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「落ち着きたまえ。それは理央様が回復されてからだ」

「自分は何も出来ませんでした。何の役にも立てなかった…」

「…君は理央様の剱だ。側に居るだけでいい」

「遮断剤がなければ側にいることすら出来ない。一歩間違えれば理央様を傷付けるのは自分です」

「…間違えないために、君は遮断剤を使っているんだろう」

「自分のような…出来損ないの剱では、…」

理央を癒すことも、満足に出来ない。

今日会ったアルファよりも、俺の言葉は理央に信用されていない。

紫香楽がため息を吐いてから立ち上がる。

「君も自室で休みたまえ」

「…はい」

「理央様が目覚めたらわかるかね?」

「この部屋のドアと窓際のセンサーは自分のほうでも全て確認出来ます」

「…そうか。では理央様が目覚めたら私の方へ連絡を。この件が片付くまで、客室を借りるよ」

「かしこまりました」

部屋を出る紫香楽の背を横目にため息を吐いた。

手を組んで額を押し付ける。役に立たない剱だ、自分は。

何のためにここにいるのか。

理央を護る為に、理央に安寧を提供するためにいる――はずだった。一つ深呼吸してから立ち上がり、寝室のロックを解除する。

眠っている理央の白い頬を、人差し指の背で撫でた。

今ならば、触れても気付かれない。

だが理央は薄く目を開け、俺を見た。

「…っ、申し訳ございません、」

「…つるぎ、」

手を差し出され、その甲に唇を落とす。

そのまま手を引かれ、抱き寄せられて息を飲んだ。

「理央、」

「…一緒に、寝…」

俺を抱く理央の腕は震えていた。

そのまま意識を失った理央の頬に口付け、制服の上着を脱ぐ。

遮断剤を噛んで、理央の細い身体を抱き締めた。

「…好きです、理央」

人差し指の銀の鍵指輪にキスする。あなたは誰に、これを渡したいのだろう。

吉良では無いというのなら、俺は一体誰の代わりになればいい。

そんなことを考えながら眠ったからだろう、酷い夢をみた。

「…ッ、は、」

自分の身体と衣服を確認し、息を吐く。

理央のチョーカーを確認し、人差し指の鍵指輪も確認して、指先に口付けた。

腕時計で時刻を確認し、ベッドをおりる。

そのまま自室に戻って頭から水を浴びた。

「…ッ理央、」

主の甘い匂いを落とさなければ。

このまま理央の寝室に戻って犯してしまいそうだった。

「っ、は、…ッッ、」

自己処理には慣れた。

だが最近は、いつも理央のことを考えている。

吐き出した欲が指を伝い落ちてゆく慣れた感触に、酷く不快感を覚えた。







翌朝になっても、理央は目を覚まさなかった。

紫香楽の要望で理央の寝室のロックを解除し、俺はリビングで待つ。

戻って来た紫香楽の様子から、特に問題は無いと判断し、一つ息を吐いた。

「理央様の様子は」

「よく眠ってる。理央様にとっては良い休養になるだろう」

「…良かった」

「私は一度自宅に戻る。妻から連絡がきてしまったのでね」

「はい」

「…理央様が目を覚まされたら個人端末の方に連絡してくれ。昼食後に戻る予定ではあるが」

「かしこまりました」

車を手配し、紫香楽を送り出す。

車に乗り込む瞬間、紫香楽が俺を見た。
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