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17.何も感じなかった
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しおりを挟む「お早うございます、理央」
「…」
無言のままベッドに潜り込んでしまった理央を引きずり出し、ぼんやりしている頬に口付けた。
「起きてください」
「…ねみぃ、」
「今日は朝食を摂っていただきます」
「要らね、…」
「…理央」
「…」
しぶしぶ身体を起こしてベッドからおり、バスルームに向かう理央の華奢な背を見送り、シーツを替える。
制服を用意して給仕はメイドに任せ、一度神木の部屋に足を運んだ。
「…何だね」
眼鏡の奥の不機嫌を映した瞳が俺を睨む。
「理央様の想い人は雅也でも利也でもないのですか?」
「…ない」
「…吉良でも、ないのですか」
「君は、…それを知ってどうする」
「出来ることならば代わりになれればと。…どのみち、吉良と番うことになるでしょうから、…」
神木は俺の言葉に心底呆れたという表情で、怒りすら滲ませたため息を吐いた。
「理央の代わりに言うが。『余計なお世話だ』。君は剱としての役割に徹っしていればいい」
「…、」
出来損ないの自分には、それすら難しいのだと告げることは躊躇われた。
もはや理央は俺の言葉など信じていない。
俺は、理央の剱であるはずなのに。
剱は特性としてコピーが得意だ。
人の仕草、口調、表情、性格。
せめて理央が求めているものに似せることが出来れば、もっと喜んでいただけるのではないかと、役にたてるのではないかと、思った。
『俺』として理央を喜ばせることはできなくとも、『理央が愛する人間のレプリカ』としてなら喜んでいただけるかもしれない。
沈黙した俺を、神木が鼻で笑った。
「全く君は……愚かにも程がある」
※
理央を教室に送り、自クラスの席に着く。
数日ぶりに高校に顔を出したが、いつもなら教室のドアを開けた瞬間から張り付いてくる二条は居なかった。
授業を聞きながら、理央のことを考える。
ヒートが近いせいか、甘い匂いがいつもよりも強かった。
俺のようなアルファにすら『ああ』なってしまうのがオメガだというのならば、他の上等なアルファに触れられたら、理央はどうなってしまうのだろう。
酷く心配だった。
(誰にも触れさせたくない)
我が儘だと分かってはいる。
(あの膚の滑らかさも、濡れた舌の味も、柔く狭い肉の感触も、全部)
いずれ理央は吉良の番になるオメガだ。
(――俺のものだ)
美しく高潔な俺の主。
それだけで十分なはずだ。
瞬間、携帯端末のバイブレーションに気付く。
思考にのめり込んでいた自分に辟易しながらメールを確認した。
『暁が自席に居ないが、心当たりはあるか』
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