虚口の犬。alternative

HACCA

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17.何も感じなかった

2

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メールは理央のクラスメイトの綾瀬からのものだった。

席を立つ。

「っ、…どうした、剱」

唐突に起立した生徒に、ボードに二次曲線を描いていた数学教諭が目を丸くする。

「私用で席を外します」

一方的に告げて教室を出た。

先ず吉良にメールする。

『現在理央といらっしゃいますか』

直ぐに返ってきた『ノー』の返信にアプリケーションを起動し、理央の携帯端末の位置を確かめた。

思わず舌打ちする。

今朝、理央はベッドヘッドのバッテリースタンドに携帯端末を置いたまま忘れていて、俺は一先ず理央の鞄に入れて出た。

その鞄自体、現在理央の教室に置かれている。

(携帯されていない携帯端末など、何の意味もない)

理央に直接渡すべきだったと思ってももう遅い。

もうひとつ、手段はあるが、それを使えば暁本家――理聖様――に連絡が行く。

自分の失態で理聖様の手を煩わせるわけにはいかない。

苛立ちに拍車がかかる。

不意に気になって、もう一度吉良にメールした。

『二条副会長はいらっしゃいますか』

念のため特別教室ばかりで人気のない特別棟に向かう。

吉良からの『イエス』の回答にもう一度質問した。

『本日、弟は出席しているか、副会長に確認していただけますか』

訊いて、回答を待ちきれずに二条に発信する。

相手は直ぐに出た。

『剱、?』

「お早う、今日はお休み?」

『え、…っと、学校には居るよ』

「…何処に居るか訊いてもいいかな」

『ヒミツ』

「二条、」

『剱がぼくの番になってくれるなら教えてあげる』

その声音に確信を得る。

「…目的は知らないけど、理央もそこに居るね?」

『それはどうかなぁ、暁はほら、モテるでしょ。バース性の発表後は特に』

楽しんでいるかのような口調に、目眩がするほどの怒りを自覚した。

「…もし、…理央に何かあったら、…それに二条が少しでも関係していたら。…敵と認識する。俺は絶対にお前を許さないし、関係者全て引きずり出してどんな手を使っても消してあげるよ」

『待…っ、剱、ぼくは…っ』

通話を切り、特別棟を走る。

理央の匂いならヒート中でなくとも覚えている自信はあった。

ヒートが近いせいでここ数日は甘い馨りが強い。

(あれは俺のオメガだ。――吉良と番うまでは、俺のものだ)

正式に吉良と番ったなら、諦める。

それでも理央は俺の主人だ。

だがそれまでは俺のものだと思ってもいいだろう。



…あいしているのだ。



鼻をつく甘い匂いに足が止まる。

だが、この甘い匂いは理央のものではない。

旧第二音楽準備室。

現在は使われていない、完全な空き教室だった。

「失礼します。確認したいことがありますのでドアを開けて下さい」

ノックして声をかけたが返答はなかった。

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