虚口の犬。alternative

HACCA

文字の大きさ
77 / 159
17.何も感じなかった

3

しおりを挟む


ドアは施錠されていて開かない。

だが人の気配はある。

教師への報告や、キーを取りにいくべきかと思考を巡らせたが、今は時間が惜しかった。

遮断剤を噛み、力任せにドアを蹴る。

数度かけてドアを蹴破ったがそこには二条しか居なかった。

「いらっしゃい、剱、…待ってたんだ」

「…理央は、」

「教えないよ、番になってくれないと」

「…誘発剤を使ったね」

フェロモンとは別の甘い匂い。

安物の誘発剤を使ってまで、こんなことを。

「ふふ、ね、剱。番になろう?」

「……ここにおいていったら、お前はどうなるんだろう、二条」

「そんなことしないよ、剱は。優しいもん」

ヒートに潤んだ瞳でそう言う二条に、初めて殺意を覚えた。

「…そう。じゃあ置いていくよりももっと、酷いことをしよう」

二条の肩を掴んで抱き寄せ、詰襟を無理矢理開く。

二条はチョーカーをしていなかった。

「乱暴、」

かすれた声でそう呟いた二条の項に歯をたてた。

「…理央は何処に?二条」

「…最上階の、天文部部室、」

恍惚の表情でそうこぼした二条の血の味を制服の袖口で拭った。

エレベーターを待てずに階段をかけ上がる。

最上階は多目的フロアだが、一部の文科系の部室も兼ねたプライベートルームが並んでいた。

天文部は現在部員不足で活動休止中のはず。

考えているうちに足は天文部室前に着いていた。

設置されているガラス枠から内部を確認する。

理央と、――俺の位置からは顔を確認できなかったが――もう二人居た。

ドアは当然のように施錠されていて、苛立ちに舌打ちする。

先程は木製だったが、此方のドアは金属製で蹴破るには時間がかかる。

瞬時に判断してドアのガラス部分を拳で叩き割り、手をいれて内側から解錠した。

「理央…!」

理央が抵抗したのか、振り返った二人の顔も腫れていたが、理央も口の端が切れて血液が滲んでいる。



怒りに首の裏に鳥肌がたつ。



(理央に、傷を…)

「…どうした、剱」

「…ッ、」

理央は冷静にそう言ったが、俺は怒りと自分の失態に何も答えられなかった。

「っはえーよ、時間稼ぎはどうしたんだアイツ」

「…」

二人の顔を冷静に頭の中のデータベースで検索しながら、まず右の男の鳩尾を蹴る。

「ッカハ、」

前にのめった男の髪を掴み、左の男の拳をかわして手首を力任せに、折るつもりで掴んで返した。

「っ離せ、いって、折れる、折れるって、」

左の男をそのまま床に転がして腕を踏みつけた瞬間、男が上着の内ポケットから何かを取り出したのが視界に映って理央に手を伸ばす。

男の手から零れた液体の正体を考える前に制服の上着を脱いで理央に被せた。

「…っおい、剱、」

そのまま理央を抱え、部屋から出る。



しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...