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17.何も感じなかった
3
しおりを挟むドアは施錠されていて開かない。
だが人の気配はある。
教師への報告や、キーを取りにいくべきかと思考を巡らせたが、今は時間が惜しかった。
遮断剤を噛み、力任せにドアを蹴る。
数度かけてドアを蹴破ったがそこには二条しか居なかった。
「いらっしゃい、剱、…待ってたんだ」
「…理央は、」
「教えないよ、番になってくれないと」
「…誘発剤を使ったね」
フェロモンとは別の甘い匂い。
安物の誘発剤を使ってまで、こんなことを。
「ふふ、ね、剱。番になろう?」
「……ここにおいていったら、お前はどうなるんだろう、二条」
「そんなことしないよ、剱は。優しいもん」
ヒートに潤んだ瞳でそう言う二条に、初めて殺意を覚えた。
「…そう。じゃあ置いていくよりももっと、酷いことをしよう」
二条の肩を掴んで抱き寄せ、詰襟を無理矢理開く。
二条はチョーカーをしていなかった。
「乱暴、」
かすれた声でそう呟いた二条の項に歯をたてた。
「…理央は何処に?二条」
「…最上階の、天文部部室、」
恍惚の表情でそうこぼした二条の血の味を制服の袖口で拭った。
エレベーターを待てずに階段をかけ上がる。
最上階は多目的フロアだが、一部の文科系の部室も兼ねたプライベートルームが並んでいた。
天文部は現在部員不足で活動休止中のはず。
考えているうちに足は天文部室前に着いていた。
設置されているガラス枠から内部を確認する。
理央と、――俺の位置からは顔を確認できなかったが――もう二人居た。
ドアは当然のように施錠されていて、苛立ちに舌打ちする。
先程は木製だったが、此方のドアは金属製で蹴破るには時間がかかる。
瞬時に判断してドアのガラス部分を拳で叩き割り、手をいれて内側から解錠した。
「理央…!」
理央が抵抗したのか、振り返った二人の顔も腫れていたが、理央も口の端が切れて血液が滲んでいる。
怒りに首の裏に鳥肌がたつ。
(理央に、傷を…)
「…どうした、剱」
「…ッ、」
理央は冷静にそう言ったが、俺は怒りと自分の失態に何も答えられなかった。
「っはえーよ、時間稼ぎはどうしたんだアイツ」
「…」
二人の顔を冷静に頭の中のデータベースで検索しながら、まず右の男の鳩尾を蹴る。
「ッカハ、」
前にのめった男の髪を掴み、左の男の拳をかわして手首を力任せに、折るつもりで掴んで返した。
「っ離せ、いって、折れる、折れるって、」
左の男をそのまま床に転がして腕を踏みつけた瞬間、男が上着の内ポケットから何かを取り出したのが視界に映って理央に手を伸ばす。
男の手から零れた液体の正体を考える前に制服の上着を脱いで理央に被せた。
「…っおい、剱、」
そのまま理央を抱え、部屋から出る。
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