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17.何も感じなかった
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しおりを挟む「かしこまりました」
通話を切り、綾瀬に感謝の旨のメールを送る。
一つ息を吸い、空を見上げた。
曇天に息を吐く。
それから、携帯端末のディスプレイを眺め、父のIDに発信した。
※
「優貴と番っただと」
二条の兄の怒りの表情に吉良が目を細めるのが視界の端に映る。
二条兄はソファに座っていて、吉良と俺は立っていた。
「…そうしなければ理央の居場所を言わないと言うので。ただ、性交をともなってはおりませんので二条にその気がなければ番としては成立しません。そこで一つ確認しますが――」
吉良に直接目をやったが、彼は特に何も言わなかった。
「――貴方と弟は血縁ではありませんね」
「それがどうしたというんだ」
「これは俺の想像ですが。…弟は貴方の番になる予定のオメガだったのでは?」
ごくりと、二条兄が喉を鳴らす。
じっと、眼鏡の奥の切れ上がった目を見つめた。
やがて諦めたように目を閉じると、彼は苦虫を噛む表情で「…そうだ」と吐き出す。
「…本当か、二条。お前婚約者は別に居ただろう」
眉をひそめた吉良に、二条兄がため息を吐いた。
「…ここだけの話でなら話す」
「俺はかまいません」
「…いいだろう」
俺を見てから視線を回らせ、吉良が頷くのを確認し、二条兄もゆっくりと頷く。
「…ベータの、ビジネス的な婚約者だ。それとは別にオメガの養子をとるのが二条の慣習だ…」
「成程。弟はお前にあてがわれた家公認の愛人というわけだ。タイミングを調整すればすり替えも可能だ」
「俺は、そうするつもりはなかった。だから普通の兄弟として接してきたのに、…」
吉良が本棚を眺めながらゆっくりと歩いて、一冊を手にとってパラパラと頁を捲り、興味を失ったように閉じた。
「剱から一方的に番の解除は可能だが、それだと弟はオメガとしても人としても使い物にならんだろう」
「だが、…君は本当に優貴と番うつもりはないんだろう」
組んだ手を額にあて、床を見ながらそう呟いた二条兄は途方にくれているように見える。
それが僅かながら、俺の怒りを和らげた。
「番うつもりはありません…が、解除は可能です。剱の本家は解除屋でもありますから。勿論元に戻すという意味で、です」
「…っそんな話は聞いたことがない、」
「俺は剱の人間ですよ。二条には情報遮断しております。…それと、貴方の弟とは性交してませんので。解除後にオメガとしてアルファと番うことも可能でしょう」
俺の言葉に二条兄が顔を上げる。
「…っ、本当か、」
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