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17.何も感じなかった
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しおりを挟む「もしかして今頃気付いたのか…?」と、吉良は笑った。
「…は、所詮情報屋だろ、暁なんて」
矢田が震える声でそう言うのをぼんやりと聞いていた。
二条と同じことを言っている。
恐らくは二条の口車にのせられたのだろう。
対して南は沈黙を守っていた。
(…そうだ。沈黙こそが宝だ。己れの無能さも有能さも、表に出してはならない。この現代ではどちらもハンデにしかならないからだ)
「この情報化社会で本当にそう思ってんならお前は終わりだよ」
パタン、と微かに寂しげな音と共に本を閉じ、吉良が笑う。
瞬間、青ざめた矢田の顔色に、ようやく自らの愚かさに気付いたのだと俺にもわかった。
本を置き、「こっちはダメだな」と呟くと、吉良は南に目をやった。
「そっちはどうだ」
「…計画したのは二条だ。二条はそこの剱を、矢田は暁を番にする予定だった。が、暁はヒートでもねーのにチョーカーしてっしオメガのくせにやたらつえーしで手間取ってる間にそこの剱が来た」
「お前は?何のメリットもねーのに二人に付き合ったのか?」
「…暁に興味があっただけだ。二条はともかく、暁みてーなオメガなんて見たことねーし、…オメガっつーより、アルファに見えるだろ、暁は。…でもオメガの匂いがした」
「へぇ」と吉良が口端を持ち上げる。
「…つーか。そのアンプル、俺が持ってた方は解毒剤だ。剱を番に、ってのはともかく、暁に仕掛けるなんて本気なら自殺行為だし冗談にしては誘発剤使うとか悪質だろ。矢田がマジで使うようなら俺も使うつもりだった」
「はぁ」とため息を吐いた南がどうにでもしろというように脚を投げ出して天井を仰いだ。
「テメェ、マジかよ、」
裏切り者とでも言いたげに南を睨む矢田を、南が鼻で笑う。
「暁はオメガだろ?そのオメガに殴り負けるアルファがマジで暁と番えると思ったのかよ。恥を知れよ、お前」
二人の会話を聞いていた吉良がクク、と喉で笑い、やがて声をあげて笑った。
「っはは、いいね、南。成分調べて本当だったら放免にしてやる。そこの下等なアルファは退学で処理しておいてくれ、剱。今回はガキの暴走だし家ごとどうこうってのは無しだ。暁に報告する必要は無い」
「父に通しておきます」
デスクの引き出しから鋏を借り、二人の親指を拘束している結束コードを切る。
「よし、二人とも帰っていい」
吉良が急かすように手を叩いた。
「…ッ待て、退学は困る、条世を出るのが家の伝統だ。俺はどうでもいいが、父が気にする」
吉良に抗議する矢田を横目に、南はさっさと生徒会室を出て行く。
吉良は「そうか、それは残念だったな」と矢田の肩を子供をあやすようにポンポンと手のひらで叩いた。
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