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17.何も感じなかった
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しおりを挟む「冗談じゃねーんだよ…!」
吉良の馬鹿にしているともとれる態度に矢田が声を荒げる。
その矢田の胸ぐらを掴み、吉良が怒りを隠さずに矢田を見下ろした。
「…冗談じゃねーのはこっちだ。誰に手ェ出したかわかってんのか、お前。あれはお前みてーな下等なアルファが触れていいもんじゃねーんだよ。…俺の気が変わらねーうちにとっとと帰れ」
「…ッ」
吉良が手を離した瞬間、矢田が腰を抜かしたように床に尻をつく。
それから思い出したようにヒビが入った腕を抱えて慌てて立ち上がると、バタバタと生徒会室を出て行った。
その背を眺めながら、吉良がひとつため息を吐く。
「…あれでアルファか」
「バース性が全てではありませんよ。下手なアルファよりも優秀なベータもオメガも数多くいます」
「真理だ。お前もさっさと帰れ。謹慎処分なんだろう」
「理央様をこれ程の危険に曝すなどあってはならないことでした。申し訳ありません」
「…剱本家に戻る前に一度理央に顔を見せてやれ。心配してんだろ」
「…本来であれば、合わせる顔がありません、…こんな失態を…」
「俺の言う通りにしておけ、大和」
「…かしこまりました」
疲れたとでもいうように前髪をかきあげ、俺を追い出すようにヒラヒラと手を振る吉良に頭を下げ、生徒会室を後にする。
既に昼休みになっていた。
理央のクラスに寄って理央の鞄を、自分のクラスで自分の鞄を回収してエレベーターに乗る。
校門前には、既に神木が乗った車が停車していた。
苦笑しつつ、後部ドアを開けて乗り込む。
「お疲れ様。大体の情報は入ってる」
バックミラー越しの神木の視線が痛い。
「…そうですか」
「災難だったね」
「災難だったのは理央様です。…御様子は?」
「傷は大したことは無かったよ。見た目通り、口を切っただけだ。腫れも引いてる」
「…そうですか、…よかった」
「…君のほうが重症に見えるがね」
「自分は硝子を割ったときに手を切ったくらいですので、何の問題も――」
「二条と番ったと聞いたが」
低い声に顔をあげ、バックミラーを見た。
「…そうしなければ理央様の居場所を言わないと言うので仕方なく。父に解除を依頼しております。それを条件に二条弟は条世から出ていっていただきますので。理央様の頭痛の種も減るかと。…それにひとつ、二条の弱味を握れました。当分、…いえ、次の代までは暁を煩わせることは無いでしょう」
神木が眼鏡の奥のキツい目を狐のように細める。
「…それは誠に重畳」
「明日の朝、自分の代理の剱が邸に到着する予定です。入れ替わりに自分は生家のほうへ。…理央様をお願い致します」
「言われなくとも。一族にとって暁は全てに等しい」
神木の言葉に違和感を覚えた。
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