虚口の犬。alternative

HACCA

文字の大きさ
86 / 159
18.下等

1

しおりを挟む

翌朝、甘い馨りに昂りを感じて目が覚めた。

遮断剤を噛みながら理央の首筋に手をあて、体温を確認する。

サイドチェストに常備されている抑制剤を口に含み、まだ眠っている主人に口付けた。

「…、大和、…?」

「まだ眠っていて大丈夫です」

理央が微睡んでいる間に自室に戻り、頭からシャワーを浴びる。

二条と番っても、俺は理央の馨りに欲情するらしい。

その事実に、酷く安堵した。

形式的にオメガと番ってアルファとして惹かれなくなるのはいい。

だが理央に一切惹かれなくなるのが、俺は怖かった。

(俺の主人は理央だけだ。俺が仕えるのも、俺があいしているのも、理央だけだ)

昂ぶる自身を自らの手で慰めながら、理央の狭い粘膜の感触と生々しい色を思い出して声を殺す。

「…ッ、」

廃棄されるだけの欲を垂れ流しながら、いずれ他人のものになる主人の名前を呼んだ。

「………理央、…」

滑稽だと思ったが俺は事実、その程度の人間だった。剱としてもアルファとしても、吉良に劣る。主人を癒せず、護れず。

アルファとしてももう、触れることを厭われるようになってしまった。

今俺が理央の側に居られるのは理央の慈悲だ。

理央が誰を想っているのかすら、俺には見当もつかない。

神木や吉良に解ることが、俺には解らないのだ。

(それさえわかれば、たとえ俺のような剱でも理央を満たして差し上げられるかもしれないのに)

そんな下らない思考を繰り返しながら浴室を出てクローゼットからシャツと制服を取り出して投げたとき、携帯端末のライトに気付いて履歴を確認し、折り返し発信した。

「…大和です」

『お早う御座います、大和様』







身支度を整え、理央の部屋を訪った。

ノックに返事はなく、まだ寝ているのだろうとお預かりしているカードキーでロックを解除する。

「失礼します」

寝室のドアを開け、眼帯を取った。

「…理央、」

そっと、指先で白い頬を撫でる。

「…ん」

身動いで吐息した理央の髪に指を通した。

美しい黒髪は柔らかい。

「…理央、もうすぐ代理の剱が来ます」

ベッドに腰掛け、理央の白い肩に口付けた。

ヒートを迎えた理央を置いて、俺は生家に帰らねばならない。

「…大和」

焦燥に喉が焼けそうだった。

「…はい、ここに」

怠そうに差し出された理央の手の甲に唇を落とす。

「…どうした、」

「そろそろ代理の剱が到着いたします。ご紹介させていただいたら、俺は剱の本家に向かいますので。…それからヒートを迎えておられます。抑制剤の服用を忘れないで下さい。…それと、…」



しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...