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18.下等
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しおりを挟む翌朝、甘い馨りに昂りを感じて目が覚めた。
遮断剤を噛みながら理央の首筋に手をあて、体温を確認する。
サイドチェストに常備されている抑制剤を口に含み、まだ眠っている主人に口付けた。
「…、大和、…?」
「まだ眠っていて大丈夫です」
理央が微睡んでいる間に自室に戻り、頭からシャワーを浴びる。
二条と番っても、俺は理央の馨りに欲情するらしい。
その事実に、酷く安堵した。
形式的にオメガと番ってアルファとして惹かれなくなるのはいい。
だが理央に一切惹かれなくなるのが、俺は怖かった。
(俺の主人は理央だけだ。俺が仕えるのも、俺があいしているのも、理央だけだ)
昂ぶる自身を自らの手で慰めながら、理央の狭い粘膜の感触と生々しい色を思い出して声を殺す。
「…ッ、」
廃棄されるだけの欲を垂れ流しながら、いずれ他人のものになる主人の名前を呼んだ。
「………理央、…」
滑稽だと思ったが俺は事実、その程度の人間だった。剱としてもアルファとしても、吉良に劣る。主人を癒せず、護れず。
アルファとしてももう、触れることを厭われるようになってしまった。
今俺が理央の側に居られるのは理央の慈悲だ。
理央が誰を想っているのかすら、俺には見当もつかない。
神木や吉良に解ることが、俺には解らないのだ。
(それさえわかれば、たとえ俺のような剱でも理央を満たして差し上げられるかもしれないのに)
そんな下らない思考を繰り返しながら浴室を出てクローゼットからシャツと制服を取り出して投げたとき、携帯端末のライトに気付いて履歴を確認し、折り返し発信した。
「…大和です」
『お早う御座います、大和様』
※
身支度を整え、理央の部屋を訪った。
ノックに返事はなく、まだ寝ているのだろうとお預かりしているカードキーでロックを解除する。
「失礼します」
寝室のドアを開け、眼帯を取った。
「…理央、」
そっと、指先で白い頬を撫でる。
「…ん」
身動いで吐息した理央の髪に指を通した。
美しい黒髪は柔らかい。
「…理央、もうすぐ代理の剱が来ます」
ベッドに腰掛け、理央の白い肩に口付けた。
ヒートを迎えた理央を置いて、俺は生家に帰らねばならない。
「…大和」
焦燥に喉が焼けそうだった。
「…はい、ここに」
怠そうに差し出された理央の手の甲に唇を落とす。
「…どうした、」
「そろそろ代理の剱が到着いたします。ご紹介させていただいたら、俺は剱の本家に向かいますので。…それからヒートを迎えておられます。抑制剤の服用を忘れないで下さい。…それと、…」
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