虚口の犬。alternative

HACCA

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18.下等

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「念のため多めに渡しておきます。が、足りそうにない場合は吉良の長男に連絡を。事情は後で俺の方から伝えておきます」

「有り難う御座います」

司が遮断剤を噛み、嚥下するのを見届けてから理央の寝室のドアをノックしようとして、手を止めた。



(戻らない可能性は高い。だが戻って来れたのなら――)



「…大和様?」

「…貴方がお仕えする間、理央様が親しく…いえ、信頼と好意を寄せているような人物がいなかったか、注意して見ておいてください」

「それはどういう…」

「深い意味はありません」

「…かしこまりました」

これ以上は理央を侮辱することになりそうで何も言えなかった。

「…入れ」

「失礼します」

キーを通して寝室のドアを開けたら、理央は既に身支度を整えていた。

司を部屋に入れ、ドアを閉める。

制服の上着を羽織りながら、「お早う」と呟くように言った理央の横顔に、司が唾液を飲み下す音が俺にも聞こえた。

シャツの釦を適当に掛けてはだけている襟もとから、細い首に太い黒のチョーカーがやたらと艶かしく目に映る。

惚けている司の背を軽く叩き、理央の横に立って釦を掛けた。

「釦は全て掛けてください。刺激が強すぎます」

「俺みてーなオメガはそんな対象にはなんねーだろ」

「…理央、」

「あー、わかったよ。…で、名前は?」

理央は司の方を見ずにそう言ったが、司の返答は無かった。

しばらくして、自分への質問だと理解した司が慌てて頭を下げる。

「っ、申し訳ございません、剱司と申します」

「そうか。司、俺のことは理央でいい」

「しかし理央様、」

「理央、だ」

「…っはい、」

こんなときなのに、理央がその名を敬称無しで呼ぶことを司に許したことに、俺は焦燥を覚えていた。

「…アルファか」

「はい、」

「番は?」

「おりません」

「こんな見た目だが俺はオメガだ。まぁ、普通のアルファならあてられることはねーと思うが一応気を付けてくれ」

「かしこまりました」

「大和の代理ってことはそれなりに血は濃いだろう。決して俺の目を見ないように。主人と認識する場合がある」

「はい」

「基本的に外出時の付人兼ガードを任せる。それ以外の時間は好きにしてくれてかまわない。部屋は適当に空き部屋を使ってくれ」

「かしこまりました」

「…では登校用の車を手配しておいてくれ。支度が終わったら出る」

「はい、直ぐに」

頭を下げて寝室を出る司の背を見送ってから、預かっているカードキーを全て理央に差し出す。

「…何だ」







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