88 / 159
18.下等
3
しおりを挟む「念のため多めに渡しておきます。が、足りそうにない場合は吉良の長男に連絡を。事情は後で俺の方から伝えておきます」
「有り難う御座います」
司が遮断剤を噛み、嚥下するのを見届けてから理央の寝室のドアをノックしようとして、手を止めた。
(戻らない可能性は高い。だが戻って来れたのなら――)
「…大和様?」
「…貴方がお仕えする間、理央様が親しく…いえ、信頼と好意を寄せているような人物がいなかったか、注意して見ておいてください」
「それはどういう…」
「深い意味はありません」
「…かしこまりました」
これ以上は理央を侮辱することになりそうで何も言えなかった。
「…入れ」
「失礼します」
キーを通して寝室のドアを開けたら、理央は既に身支度を整えていた。
司を部屋に入れ、ドアを閉める。
制服の上着を羽織りながら、「お早う」と呟くように言った理央の横顔に、司が唾液を飲み下す音が俺にも聞こえた。
シャツの釦を適当に掛けてはだけている襟もとから、細い首に太い黒のチョーカーがやたらと艶かしく目に映る。
惚けている司の背を軽く叩き、理央の横に立って釦を掛けた。
「釦は全て掛けてください。刺激が強すぎます」
「俺みてーなオメガはそんな対象にはなんねーだろ」
「…理央、」
「あー、わかったよ。…で、名前は?」
理央は司の方を見ずにそう言ったが、司の返答は無かった。
しばらくして、自分への質問だと理解した司が慌てて頭を下げる。
「っ、申し訳ございません、剱司と申します」
「そうか。司、俺のことは理央でいい」
「しかし理央様、」
「理央、だ」
「…っはい、」
こんなときなのに、理央がその名を敬称無しで呼ぶことを司に許したことに、俺は焦燥を覚えていた。
「…アルファか」
「はい、」
「番は?」
「おりません」
「こんな見た目だが俺はオメガだ。まぁ、普通のアルファならあてられることはねーと思うが一応気を付けてくれ」
「かしこまりました」
「大和の代理ってことはそれなりに血は濃いだろう。決して俺の目を見ないように。主人と認識する場合がある」
「はい」
「基本的に外出時の付人兼ガードを任せる。それ以外の時間は好きにしてくれてかまわない。部屋は適当に空き部屋を使ってくれ」
「かしこまりました」
「…では登校用の車を手配しておいてくれ。支度が終わったら出る」
「はい、直ぐに」
頭を下げて寝室を出る司の背を見送ってから、預かっているカードキーを全て理央に差し出す。
「…何だ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる