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19.それがアルファで、そうさせるのがオメガ
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しおりを挟む深夜に届いた主人からの一通のメッセージに救われた気がした。
『最短で戻れ』
まだ側に置いていただけるのだと。
俺がどれ程安堵したか、主人には解らないだろう。
自室のベッドで休息を取りながら、理央の馨りを思い出した。
今日は自分の代わりに司が理央を抱いて眠っているのだろうか。
そう考えれば眠気など訪れるはずも無かった。
それでも身体だけは休めようと目を閉じて深く呼吸する。
「…理央様」
シーツの隣を手のひらで撫でたが、しなやかな身体も膚に吸い付くように馴染む体温も今は無い。
「番を…探さなければ…」
番が居れば、今感じている醜い劣情を理央に向けずに済む。
理聖様にも、父にもそう勧められている。
「…番を…」
そこで一つ、疑問が降ってわいた。
仮に二条のような形だけの番ではなく正式な番を持ったとして、この理央に対する狂おしい程の激情は消え去るのだろうか。
(とても消え去るとは思えないが、もし消え去るのであれば、この感情は一体何だというのだろう。俺は本当に理央をあいしているわけではないのだろうか)
だが、ただアルファとしてオメガに惹かれているだけの、つまり本能だと結論付けられるほど単純なものでは無い。
身体を起こしてマシンを起動し、オメガデータベースに接続した。
(黒髪に、黒い瞳がいい。深い夜の闇のような。猫のようにしなやかな身体の…)
理央に近い体躯の者は、やはり居ない。
皆一様に幼い顔付きに小柄だった。
(せめて目の色と髪の色が同じならば――)
そこまで考えて、それでは意味が無いのだと気付いた。
それは結局今と同じ、主人への冒涜に他ならない。
おそらく、今現在一切魅力など感じなくとも、ヒート中のフェロモンにあてられれば強制的に――二条の時のように――興奮させられるのだろう。
(それがアルファで、そうさせるのがオメガで、それが両者の本能だ)
それだけで全て解決出来る。
一度だけだ。
一度だけ、番の契約を済ませてそれで終わりで済む相手が居るのならそれでいい。
(…それを、理央は許しては下さらないだろう。…それでもこのままでは限界がくる)
誰でもいい。
条件に合う者の中から最速で契約を終えられるものを選ぶ。
(それで理央の身の安全は保証される。俺に汚されずに済む)
無意識のうちに、膝の上で拳を握っていた。
白くなった指を開き、自分の手のひらを眺める。
理央の膚の感触を思い出し、唾液を飲み込んだ。
(理央は吉良のものになるオメガだ。俺のような低俗なアルファが触れていいオメガではない。…なかった)
このままでは箍が外れるという漠然とした予感。
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