虚口の犬。alternative

HACCA

文字の大きさ
96 / 159
19.それがアルファで、そうさせるのがオメガ

1

しおりを挟む


深夜に届いた主人からの一通のメッセージに救われた気がした。



『最短で戻れ』



まだ側に置いていただけるのだと。

俺がどれ程安堵したか、主人には解らないだろう。

自室のベッドで休息を取りながら、理央の馨りを思い出した。

今日は自分の代わりに司が理央を抱いて眠っているのだろうか。

そう考えれば眠気など訪れるはずも無かった。

それでも身体だけは休めようと目を閉じて深く呼吸する。

「…理央様」

シーツの隣を手のひらで撫でたが、しなやかな身体も膚に吸い付くように馴染む体温も今は無い。

「番を…探さなければ…」

番が居れば、今感じている醜い劣情を理央に向けずに済む。

理聖様にも、父にもそう勧められている。

「…番を…」

そこで一つ、疑問が降ってわいた。

仮に二条のような形だけの番ではなく正式な番を持ったとして、この理央に対する狂おしい程の激情は消え去るのだろうか。

(とても消え去るとは思えないが、もし消え去るのであれば、この感情は一体何だというのだろう。俺は本当に理央をあいしているわけではないのだろうか)

だが、ただアルファとしてオメガに惹かれているだけの、つまり本能だと結論付けられるほど単純なものでは無い。

身体を起こしてマシンを起動し、オメガデータベースに接続した。

(黒髪に、黒い瞳がいい。深い夜の闇のような。猫のようにしなやかな身体の…)

理央に近い体躯の者は、やはり居ない。

皆一様に幼い顔付きに小柄だった。

(せめて目の色と髪の色が同じならば――)

そこまで考えて、それでは意味が無いのだと気付いた。

それは結局今と同じ、主人への冒涜に他ならない。

おそらく、今現在一切魅力など感じなくとも、ヒート中のフェロモンにあてられれば強制的に――二条の時のように――興奮させられるのだろう。

(それがアルファで、そうさせるのがオメガで、それが両者の本能だ)

それだけで全て解決出来る。

一度だけだ。

一度だけ、番の契約を済ませてそれで終わりで済む相手が居るのならそれでいい。

(…それを、理央は許しては下さらないだろう。…それでもこのままでは限界がくる)

誰でもいい。

条件に合う者の中から最速で契約を終えられるものを選ぶ。

(それで理央の身の安全は保証される。俺に汚されずに済む)

無意識のうちに、膝の上で拳を握っていた。

白くなった指を開き、自分の手のひらを眺める。

理央の膚の感触を思い出し、唾液を飲み込んだ。

(理央は吉良のものになるオメガだ。俺のような低俗なアルファが触れていいオメガではない。…なかった)

このままでは箍が外れるという漠然とした予感。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...